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「NEXT STANDARD TEA」を目指す次世代のお茶葉屋。[幻幻庵/東京都渋谷区] by ONESTORY

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「NEXT STANDARD TEA」を目指す次世代のお茶葉屋。[幻幻庵/東京都渋谷区] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から東京都渋谷区の「幻幻庵」を紹介します。

渋谷・宇田川町から日本茶の新しいスタイルを発信

渋谷・宇田川町から日本茶の新しいスタイルを発信 ファッションやグルメなどショップがひしめく宇田川町の一角にオープン
日本人の暮らしに深く根付き、ペットボトル飲料でも日常的に飲まれている日本茶。近年、より身近になり、今やその存在が当たり前になった「日本茶」を、現代人のライフスタイルを考慮しながら再定義し、本来の素晴らしい味わいや新しい楽しみ方を共有したい──。そんな思いを込めて2017年4月、渋谷・宇田川町にオープンした『幻幻庵』。プロジェクトを率いるディレクターであり、『ONESTORY』と『Discover Japan』の共同プロジェクト「DESIGNING OUT」においても才能を発揮する「日本の伝統文化の再生屋」でもある、クリエイティヴ・プロデューサーの丸若裕俊氏に、立ち上げまでのストーリーと今後の展望についてうかがいました。

始まりは、海外へのおみやげから

始まりは、海外へのおみやげから 茶業家であり、(株)起立工商会社 茶葉スペシャリストとして活躍する松尾俊一氏
オープンのきっかけとなったのは、1年半前のこと。拠点を置くパリだけでなく、ここ数年、海外に加え地方に赴く機会が格段に増えたという丸若氏。グローバルとローカルを行き来する中で、『幻幻庵』につながるストーリーは始まりました。
「海外へのおみやげをあれこれ考えて試した結果、最終的に行き着いたのが日本茶でした。軽くて、コンパクトで、賞味期間も長く、かつ日本らしい。全ての条件を兼ね備えています。皆さんとても喜んではくれますが、そのうちに反応がいいものと、悪いものがあることがわかってきた。おみやげを渡すことが結果的にリサーチになっていたのです。僕自身、海外で受け入れられる日本茶と思い描いていたイメージとのギャップも感じていたし、色々と疑問が湧いてきた時期でもあった。そんな時に出会ったのが、茶師・松尾俊一氏です。それまで思っていたことを率直にぶつけたら、彼が応えてくれて、全てがクリアになった。そこから色々な可能性が見えてきたのです」と、丸若氏は語ります。

可能性を感じた、茶葉のスペシャリストとの出会い

可能性を感じた、茶葉のスペシャリストとの出会い オーダーごとに一杯ずつ丁寧にお茶を淹れる。スムーズなその所作を見るのも一興
フランス・パリ『ギメ東洋美術館』で有田焼の展示をディレクションした時のこと。ワークショップで日本酒、和菓子、日本茶を扱うことになり、日本茶に詳しい人材を探していた丸若氏。佐賀県・有田の人に「嬉野にすごい生産者がいる」と紹介されたのが松尾俊一氏だったと当時を振り返ります。

松尾俊一氏は5代続く茶農家でありながら、脳科学を学び、言語聴覚士を経て、2007年に就農。日本茶のルーツである佐賀県嬉野市嬉野町皿屋谷で土地の味を茶葉に移す「テロワール」を信条にしたお茶づくりを信条に、4年目にして国内最優秀賞である全国茶品評会農林水産大臣賞を受賞。以後、台湾、イギリスをはじめ世界的な賞を受賞している茶師であり、茶葉のスペシャリストです。
リーフはもちろん、高品質で味の良い茶葉をティーバッグでも販売し、間口を広げる
「『幻幻庵』のお茶は全て、松尾俊一が栽培・製造を手がけており、彼の技術によってディテールまで細かく調整し、繊細な味わいが生み出されています。うちのお茶は既製品ではなく、いわばオートクチュールですね。僕としても30代後半というタイミングで、次に何かやるならセレクトやリプロデュースではなく、経験にコミットできるものにしたかった。今回の場合も“畑”からやる。一次生産から携わることが絶対条件でした。綺麗ごとを言っている訳ではありません。自分が畑に行き、栽培に携わることで細かいところまで口を挟めるし、生産者の本音も聞ける。商売相手ではなく、あくまで仲間。人との巡り合わせ、場所との出合いも大きかったと思います」と、丸若氏。

20~30代からスタートする21世紀の茶の楽しみ方を追求

20~30代からスタートする21世紀の茶の楽しみ方を追求 ブレンドティーも魅力のひとつ。薬瓶を使うなど、真似たくなるプレゼンテーション
茶葉のエキスパートである松尾俊一氏との出会いから、日本茶への興味を更に深め、本格的なお茶づくりをスタート。当初は茶葉の生産体制を最優先し、店舗のオープンは想定していなかったという丸若氏。ストリートカルチャーの発信地である渋谷・宇田川町という場所を得て、同時進行に踏み切ったといいます。
「20~30代からスタートする21世紀のお茶の楽しみ方があると思い、体験できる場所があったらいいな、とは漠然と思っていました。とはいえ僕らがやりたかったのは、カフェではありません。まず何よりも茶畑を活性化させたかった。お店で提供できる量は限られているので、茶葉を売り、自宅で再現してもらうことを考えました。『幻幻庵』を“お茶葉屋”としたのも、そうした意図からです」丸若氏。

佐賀・嬉野の味を渋谷・宇田川町でいかに再現するか

佐賀・嬉野の味を渋谷・宇田川町でいかに再現するか 左から、レモングラス緑茶、紅ほうじ茶。どちらもアイス、カジュアルなカップで
『幻幻庵』が渋谷・宇田川町で目指すのは「NEXT STANDARD TEA」。ここで働くスタッフは20代という若さながら、佐賀の嬉野の畑にまで赴き、泊まり込みで収穫や製造にも携わったといいます。
冴え緑。旨味が強く濃い緑色が特徴。甘味や旨味を感じさせる。お茶菓子つき
「つくり手であり、茶師である松尾俊一の主語は常にお茶”です。でも『幻幻庵』のスタッフは、あくまで“飲み物”がゴール。例えば、新茶に混ぜる玄米の割合も、松尾俊一が35%と提案しても、彼らは37.5%とギリギリを攻めてくる。なぜなら、渋谷は音が大きくて情報量も多い。畑のある佐賀・嬉野とはスピード感が違います。嬉野で美味しいと感じるように、渋谷でその味わいを感じさせるよう微調整しなければ。栽培方法だけでなく、茶葉の性格を見極めながら、茶葉の量、湯の量と温度、抽出時間を1秒、1℃、何ccかをコンマ単位で探っていく。やっていることはかなりマニアックですが、どこまで単純で簡潔、カジュアルにできるかも追求しています」と、丸若氏は語ります。

お茶に親しみ、好みを見つけ、基準値をつくる

お茶に親しみ、好みを見つけ、基準値をつくる 自宅ではあまり飲むことがないアイスにも力を入れる。冷やしても香り高い味わいはそのままに
『幻幻庵』のお茶は嬉野茶を中心に、日本各地の選りすぐりの茶葉を使用。高級品種や香ばしいほうじ茶だけでなく、カモミールやレモングラスといったブレンドティーもあり。アイスにいたってはシェイカーのように抽出し、カジュアルなカップで提供するスタイルも新鮮です。
茶師たちが茶葉の選別に使用するという、台湾製テイスティングカップ。店内で購入可能
丸若氏は、「今の日本の美意識は昭和以降に確立されたもの。お茶も工芸もかつては汎用性が広く、より自由でクリエイティヴな世界でした。お茶にしても、江戸時代半ばから昭和に入るまでは、茶道よりも煎茶道の方が人数は多かったといいます。茶道は素晴らしい伝統文化ですし、パロディにはしたくない。日本酒でいえば、懐石料理もあれば、居酒屋から立ち飲みまで幅広い。お茶もそれくらい間口が広くなればいいし、『幻幻庵』を入口に茶道にも興味を持ってくれたら嬉しいですね。夜はバーとして営業もしており、お酒も出します。日本茶をマニアックに追求していますが、地方で頑張っているポップなお茶の生産者たちが集まってくるような店にしたい」と言います。

全国各地の優れた茶葉を、渋谷から世界へ

全国各地の優れた茶葉を、渋谷から世界へ 店の外には小さく「幻」の看板が。客層も幅広く、オープン早々ながらリピーターが多い。
『幻幻庵』の名は、江戸時代の僧であり、煎茶の中興の祖として喫茶の風習を庶民にまで広めた売茶翁(ばいさおう)が晩年に構えていた庵に由来するもの。お茶のルーツを改めて調べるうちに革新的な試みや志に共感し、「ing」と現在進行形にして意思を継ぐ丸若氏。利用者の年齢や性別、職種も様々。リピーターが多く、手応えも十分。今後の展望は世界へと広がります。
庶民に煎茶道を広めた売茶翁(ばいさおう)に由来する『幻幻庵』。ここから新しいお茶カルチャーが発信される
「地方の茶葉の産地は若手といっても40~50代。それがこの店では、20代が関わっている。それだけでも驚きです。地方で頑張っている生産者が試飲してほしいと、茶葉を送ってくる。この動きはもっと広げていかないと。松尾俊一はマスターブレンダーであり、すでにその領域に入って活躍している。今後、僕らがやろうとしているのは、小さい規模だけれど良質なコンテンツ。全国各地の優れた茶葉を見出して、渋谷から世界へと広めていきたい。
『幻幻庵』のディレクターであり、プロジェクトの代表である“日本の伝統文化の再生屋”丸若裕俊氏
僕がお茶の世界に入ったきっかけは、お茶=おみやげでありギフト。体を温めるだけでなく、心身のバランスを整え、気持ちを落ち着けてくれる。心や感性を研ぎ澄まし、クリエイティビティを覚醒させるエナジードリンク。健康的で相手を思いやる気持ちを届けるには最高のものですし、世界にも必ず受け入れられる。ロンドンやパリからのオファーもきているので、可能性は更に広がると思います」と、丸若氏は語ります。

幻幻庵(げんげんあん)

東京都 渋谷区宇田川町4-9 昭和ビル1F MAP

月~木曜は11:00~23:00、金~日曜は11:00~24:00

無休


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