
新スイーツやレトロなピンク色の客室も誕生、生まれ変わった「富士屋ホテル」へ
2021.01.05

1878(明治11)年に日本初の本格的リゾートとして箱根・宮ノ下に誕生した富士屋ホテル。2020年7月に全館リニューアルオープンし、眺めのいいスパが登場するなど話題を集めました。新しくなった館内では、スイーツやランチ、淡いピンク色の壁を復刻させた客室などにも注目を。この冬は、より華やかに生まれ変わったクラシックホテルでぜいたくなひとときを過ごしてみませんか。
登録有形文化財の建物を、よりクラシカルにより美しく

今回の改修は「耐震補強」と「文化的価値の保存」を中心としたもの。とはいえ、7600坪以上の敷地に登録有形文化財の建物が連なるホテルだけに、2年以上も全館をクローズするという大掛かりなものに。例えばレストランの杉綾模様の床板は1枚ずつはがして磨き上げる、家具の大部分は北陸の工房へ送って修復するなど、伝統をたいせつに受け継ぐためのリニューアルがなされたそうです。

エントランスを入ると、重厚な雰囲気のメインロビーに迎えられます。こちらではフロントが1977(昭和52)年以前の位置に戻され、広々と明るい印象に。その先に広がる館内はどこも近代建築デザインのギャラリーのよう。階段の手すりや柱の彫刻、天井や照明器具など細部まで観察したくなる空間が続いています。

花御殿の地下1階には新たにホテル・ミュージアムが誕生。歴史的な写真や書籍などのほか、実際に使われていたレトロなバスタブなど備品類の展示もユニーク。改修工事で発見されたメインダイニング「ザ・フジヤ」の天井画の下絵なども見ごたえがありますよ。
正統派フレンチに伝統の洋食、新登場のアフタヌーンティーも

富士屋ホテルといえばメインダイニングの「ザ・フジヤ」を思い浮かべる人もいるかもしれません。折り上げ格天井の高さは6メートル。見上げると可憐な高山植物や野鳥、蝶が描かれていて、その種類は636種にもなるのだとか。現在はランチ、ティナーとも創業当時のレシピを受け継ぐフレンチ専門レストランになっています。

リニューアルでは新たにカスケード・ウイングという建物が加わり、こちらにはホテル伝統の洋食が味わえる「レストラン・カスケード」が。根強いファンの多いビーフカレー(3872円、ランチ)も健在です。
本館1階には、かつて相模湾が眺められたという「オーシャンビューパーラー」を40数年ぶりに復刻。リニューアル後に登場したアフタヌーンティーが好評です。スイーツ9種類、サンドウィッチとスコーン各3種類とボリュームもあるので、ここで遅めのランチにするのもよさそう。スタッフが選りすぐった8種類の紅茶、お代わり自由になる香り高いブレンドコーヒーなど、好みのドリンクを選んでゆったりと過ごしては。
本館1階には、かつて相模湾が眺められたという「オーシャンビューパーラー」を40数年ぶりに復刻。リニューアル後に登場したアフタヌーンティーが好評です。スイーツ9種類、サンドウィッチとスコーン各3種類とボリュームもあるので、ここで遅めのランチにするのもよさそう。スタッフが選りすぐった8種類の紅茶、お代わり自由になる香り高いブレンドコーヒーなど、好みのドリンクを選んでゆったりと過ごしては。
建物ごと、部屋ごとに雰囲気が異なるクラシカルな客室

リニューアルで注目したいのが、端正な明治建築である西洋館に4室あるヒストリックデラックスハリウッドツインの客室。改修工事の際にもともとの壁が淡いピンク色だったことが分かり、往時の色彩をよみがえらせたそう。クラシカルな洋館建築にレトロなピンク色の漆喰壁が映えて特別な趣が漂います。
富士屋ホテルでは120室すべての部屋の内湯に温泉が引かれているのですが、こちらの客室のバスルームにはネコ足のバスタブが設えられているのもポイント。かわいい湯船で温泉浴が楽しめますよ。
富士屋ホテルでは120室すべての部屋の内湯に温泉が引かれているのですが、こちらの客室のバスルームにはネコ足のバスタブが設えられているのもポイント。かわいい湯船で温泉浴が楽しめますよ。

建物ごとに歴史や雰囲気が異なるのが富士屋ホテルの特徴。客室選びでは建物に注目してみるのもよさそうです。
和洋折衷のテイストを求めるなら、1891(明治24)年建築の本館の客室はいかがでしょう。富士屋ホテルで使われている建物のうちもっとも古い本館は、どこか社寺建築を思わせる瓦葺屋根の建物。ヒストリックジュニアスイートを筆頭に、客室内にも丸窓や火灯窓などの美しい意匠が見られます。
和洋折衷のテイストを求めるなら、1891(明治24)年建築の本館の客室はいかがでしょう。富士屋ホテルで使われている建物のうちもっとも古い本館は、どこか社寺建築を思わせる瓦葺屋根の建物。ヒストリックジュニアスイートを筆頭に、客室内にも丸窓や火灯窓などの美しい意匠が見られます。

富士屋ホテルの建築の集大成ともいわれ、ホテルのシンボルのひとつとなっているのが1936(昭和11)年建築の花御殿です。こちらでは40室の部屋にそれぞれ花の名前がつけられていて、ルームキーからカーペットまで室名の花モチーフづくしが楽しめます。
眺めのいい最上階のスパで歴史ある宮ノ下の温泉を
最後にご紹介するのがフォレストウィングの6階1フロアを丸ごと使って誕生したスパエリア。大きな窓からは箱根外輪山が間近に眺められて開放感もひとしお。宮ノ下がけわしい山地に位置することも実感できるはず。
宮ノ下温泉は肌ざわりやわらかで刺激の少ないお湯。内湯と半露天風呂と交互に入って、思う存分長湯を楽しんでみましょう。フロアの一角には和漢植物の恵みを取り入れたトリートメントが受けられるスパ「禅」も登場していますよ。
宮ノ下温泉は肌ざわりやわらかで刺激の少ないお湯。内湯と半露天風呂と交互に入って、思う存分長湯を楽しんでみましょう。フロアの一角には和漢植物の恵みを取り入れたトリートメントが受けられるスパ「禅」も登場していますよ。

「ことりっぷマガジン冬号 Vol.27」のテーマは「あったかい宿と温泉へ」。この冬、注目したい日本各地の温泉と宿を取り上げています。箱根エリアについては「新しくて、どこかレトロな箱根へ」と題し、2020年にオープンした新しいホテルやカフェ、ショップを中心に最新の現地情報を紹介しています。ぜひご覧ください。
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
文:佐藤史子 写真:山下コウ太