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2016.08.25
日本最北端の百名山・利尻富士やここでしか見られない植物に出会えるー北海道の北に浮かぶ「利尻島」へ
旅行ライターの松岡絵里が、夏休みに行きたい国内のプチ秘境旅を提案するシリーズ。第3回は、北海道の北部に位置する離島「利尻島」です。ダイナミックな利尻富士の姿、ここでしか見られない固有の植物が咲き乱れるお花畑など、国内とは思えない絵葉書のような大自然の中で、心身ともに癒される旅へご案内します。
日本最北端の町・稚内から、さらにフェリーに乗って
フェリーで島を目指すと、三角形の山が徐々に近づいてきます。その姿はまるで、海の上のぽっかりと富士山が浮かんでいるよう。それもそのはず、利尻島の中央に佇む利尻山は、別名「利尻富士」。まるで山が島を覆うようなその佇まいに、「スゴイところにきたなあ……!」と到着早々テンションが上がるはずです。 利尻島があるのは、北海道の北部、日本海上。フェリーで行く場合、日本最北端の市である稚内から1時間40分かけてのアクセスになり、その行程だけで秘境感満載です。 ちなみに飛行機では、新千歳空港から北海道エアシステムで約50分。眼下に利尻富士を望みながらのドラマチックな旅路です。
「白い恋人」でおなじみのあの風景が目の前に
フェリーや飛行機で利尻富士を眺めながらアクセスした時に、なぜかどこかで見たことがあるような気がしたら……それはデジャブではありません。かつて見たことがあるのは、北海道一有名な銘菓、「白い恋人」のパッケージ上で。白い恋人のパッケージ中央には切り立った険しい山が描かれていますが、そのモデルとなったのがこの利尻富士なのです。私自身、このことは利尻島で案内してもらったガイドさんに聞いて、初めて知りました。
島一番の絶景・オタトマリ沼から見る「逆さ利尻富士」
利尻島で一番の景勝地といえば「オタトマリ沼」。運がよければ正面に利尻富士、そして沼にも利尻富士が写る様子、すなわち「逆さ利尻富士」が楽しめます。お土産物屋さんが並ぶ駐車場を拠点に周囲1.1キロに渡って遊歩道が整備されていて、利尻富士と水辺の美しいコントラストが楽しめます。この利尻山は日本百名山にも選ばれている秀峰なのです。スイスやフランスなど、ヨーロッパの絵葉書にでも出てきそうなその美観をしみじみと堪能しました。
オタトマリ沼と利尻富士の美しさを堪能したいなら「白い恋人の丘」へ
ちなみに「白い恋人」のパッケージに使われているのは、このオタトマリ沼から500メートルほど坂道を登ったところにある沼浦展望台からの眺め。小高い丘になっていて、「白い恋人の丘」の看板もあります。 利尻島まできたら、ぜひここで一枚写真を。しかもこの場所でプロポーズをしたカップルには、鴛泊フェリーターミナルの1階にある観光案内所で「プロポーズ証明書」がもらえます。絶景の「白い恋人の丘」でプロポーズ……最高にロマンチックな思い出になりそうです。
ここでしか出会えない、愛らしい植物たち
7月中旬から8月まで見られるボタンキンバイ
利尻島のお隣にある礼文島は、「花の浮島」というステキなキャッチフレーズが付いています。北海道から距離のある離島のため、固有種が育まれ、多様な花が見られるからです。利尻島も同様で、リシリヒナゲシ、リシリアザミ、ボタンキンバイなど、ここでしか見られない植物たちが旅人を迎えてくれます。リシリソウ、リシリオウギなど、「利尻」の名前を冠した植物が多いことからも、この島が豊かな植生を擁しているかわかるでしょう。緯度が高いため、本州では標高の高いところでしか見られない高山植物を低地で見ることができたりもします。
(c)Fotolia-carpe diem
エゾカンゾウの群生地・富士野園地。見ごろは6月中旬から7月中旬頃まで
花を見たければ、6月末〜8月末がおすすめ。冬場は日本海からの寒風が吹くため、観光的にもこのシーズンがベストです。エゾカンゾウの群生地である富士野園地では、6月の中旬から7月の中旬頃まで、海をバックにオレンジの花が咲き乱れ、「北の楽園」とでも言いたくなるような絶景が広がります。
利尻島でしか見られない花の中でも代表的なのは、7月中に見られるリシリヒナゲシ、7月中旬から8月まで見られるボタンキンバイなど。どちらも利尻山で見られます。ボタンキンバイは9合目上部のその名も「お花畑」と呼ばれるエリアに群生していて、開花時期には愛らしい黄色い花が登山者の目を楽しませます。 なお、利尻富士は標高1721メートル。山頂まで往復するには10時間以上かかり、ちょっとハードル高めです。登山をするなら、きちんと装備を整え、計画的に楽しみましょうね。
オタトマリ沼周辺でも見られるリシリアザミ
リシリアザミは島南東部の海岸沿いやオタトマリ沼付近でも見られます。「アザミ」の名を冠していることからもわかるように、紫の花です。この花が新種として認定されたのは、1996年と意外に最近のこと。手つかずの自然が残る利尻島だけに、ひょっとしてまだ知られていない新種が発見できるかも……?なんて夢を見ながら散策してみてはいかがでしょう。
ウニ、利尻ラーメン、そしてお土産には利尻昆布
(c)Fotolia-gohdafunk
大自然の絶景が続く利尻島。山や花が織りなす風景で心が満たされたら、次はお腹も満たしたいもの。周囲を日本海に囲まれた北国の離島・利尻島は、豊かな海の幸の宝庫でもあるのです。
中でも名物はウニ。利尻産のウニは水産関係者も絶賛し、「日本一」の呼び声も高いものです。道産子の中にはウニを食べるためだけに利尻島に来島する方もいるそう。フェリーターミナルや市街地にウニ丼を出す店があるほか、オタトマリ沼の売店ではウニの握りの販売も行われています。
(c)Fotolia-carpe diem
海の幸が詰まった「利尻ラーメン」もぜひトライしたい味。最高級品として知られる「利尻昆布」で出汁をとったスープが定番です。島にはコストパフォーマンスに優れたお店に与えられるミシュランの「ビブグルマン」の称号を得たラーメン屋さん「味楽」も。お店によっては、ホタテやエビなどの海の幸がトッピングされています。もちろん利尻昆布はお土産にしても喜ばれそうな逸品です。
珍しいもの好きの人なら、この島でしか飲めない幻のドリンク「ミルピス」にぜひ挑戦を。「ミルピス商店」なる店で、手作りで製造されている乳酸飲料です。 カルピスとミルクのいいとこ取りをしたドリンクで、酸味は強めで後味すっきり。店頭のほか、ホテルでも味わうことも可能です。
(c)Fotolia-cocoa
山あり花ありグルメありの北国の離島・利尻島。わざわざ行く価値のある秘境なのです。
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松岡絵里 構成:相馬由子
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