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枠にとらわれない映画の楽しみ方を提案する「キノ・イグルー」

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枠にとらわれない映画の楽しみ方を提案する「キノ・イグルー」
博物館、酒蔵、無人島…全国のさまざまな場所で映画を上映する移動映画館ユニット「Kino Iglu(キノ・イグルー)」。今日はキノ・イグルーによる、ことりっぷweb編集メンバーのための上映会にお邪魔してメンバーの一人である有坂塁(ありさか るい)さんにお話を伺いました。

映像作品のキュレーションで「場所づくり」をお手伝い

映像作品のキュレーションで「場所づくり」をお手伝い とてもおだやかでやさしい空気をもつ有坂さん。お酒が入ったせいか少し頬が赤くなりながらも、ひとつひとつの質問にていねいこたえてくれました
有坂さん:「その場所でしか生まれない空気を、映画で作るのがお仕事です」

キノ・イグルーは、さまざまな場所での映画上映をはじめ、イベントのディレクション、DVDのセレクションなど、既存の枠にとらわれない自由な発想で映画の楽しさを伝える活動を展開しています。その活動の原点は有坂さんいわく「90年代のカルチャー」にあるのだそう。
有坂さん:「渋谷系やクラブミュージックなど90年代の編集やサンプリングの感覚が根底にはあって、そのキュレーションの概念を映画に落とし込んだようなところがあります」

その言葉のとおり、企画のコンセプトやその場所の空気に応じて、まるでDJのように映像を絶妙にチョイスしていきます。

有坂さん:「長編作品を準備することもあれば、短編作品をいくつかその場で即興的に構成することもあります。選ぶ作品は直感なので、基準を言葉にしづらいんですよね」

全国を旅する映画館ができるまで

有坂さんがキノ・イグルーとしての活動を始めたのは20代後半。若いころはサッカーにのめりこみ、なんと19歳まで2本しか映画を観たことがなかったとか。転機はたまたま観た『クールランニング』。この作品との出会いをきっかけに、映画の世界へどっぷり浸っていきます。
有坂さん:「レンタルビデオ店でのアルバイトをしながら映画を観る毎日。そんなあるとき、友だちが閉館した映画館を引き取ったことから、その場所を借りて上映会を始めるようになりました」

次第にカフェやイベントから声がかかり、移動映画館スタイルでの上映がスタートします。これが、キノ・イグルーのはじまりです。
この日、上映された作品は短編アニメーション、CM、映画の予告編、ドキュメンタリーなど様々
有坂さん:「インターネットの登場で瞬間的に欲望を満たせるこの時代に、わざわざ映画のために2時間割くには”きっかけ"が必要だと思ってます。僕にできることは、人それぞれの映画を観たくなるスイッチを入れることです」
キノ・イグルーではイベントの大小にかかわらず、観る人の心のスイッチを入れることを強く意識して企画づくりをしています。

有坂さん:「たとえば、ふつうだったら時間を無駄にしたくない心理があるから暗い映画をすすんで観ようと思いませんよね。そういう自分ひとりでは決して触れる機会のない作品との出会いを作ることは、映画の可能性を広げる助けになるはず。

そんな想いから、映画上映だけでなく、ひとりずつ個人面談のように話を聞くなかでおすすめの映画を選んでもらえるイベントも不定期で開催しています」

人それぞれの映画の楽しみ方を大切にする空気を作りたい

人それぞれの映画の楽しみ方を大切にする空気を作りたい 「あなたのために映画えらびます。」は、有坂さんが参加者の方にお話を聞きながら、その人のためだけに5本の映画を選ぶイベント
有坂さん:「なんとなく自分の好きな映画について語ることに抵抗がありませんか。有名な作品タイトルを言えば、えっあの映画が好きなの?と言われるような気がして、恐れてしまうというか。

最近、世間のみかたは"アート作品としての評価”に偏りがちなのですが、人それぞれが持つ"体験に基づく感想”を、もっと大切にできるような場所をつくりたくて、だからこういうことをしてるんです」

有坂さんのもうひとつのライフワーク

有坂さんのもうひとつのライフワーク ノートの中には、出会った人たちに書いてもらった「好きな映画作品リスト」がずらり
有坂さんは、キノ・イグルーとしての活動のほかに初めて会った人にノートを渡して、作品タイトルを書いてもらうのをライフワークにしています。今までに集めた数はなんと2,000タイトル以上!

有坂さん:「これもその一環です。映画の楽しみ方や知識をひけらかして一方的に押し付けるのではなく、人それぞれの映画の楽しみ方を聞いて引き出して、その人からこぼれる体験話もふくめてその場所でみんなで楽しむ。こういう空間づくりが、大好きなんです」
テレビは目線と同じ高さ、スマホは目線より低い高さ。映画を観るとき、人はおのずとスクリーンを見上げます。その空間にいる人々が同じ体験に集中する時間。映画を観るという体験は、どこか教会のような尊くて神聖な空気を漂わせるからこそ、価値が再評価されているのかもしれません。

そんなキノ・イグルーの有坂さんとことりっぷweb編集部で、これから「映画と場所にまつわるおもしろいこと」を一緒に企画していく予定です。今後の活動を、どうぞおたのしみに。
【お話を伺った人】
有坂 塁さん
移動映画館「キノ・イグルー」代表。フィンランド映画界の鬼才アキ・カウリスマキから直々に名付けられた「キノ・イグルー(kino iglu)」、日本語訳で「かまくら映画館」の意。2003年に中学校の同級生である渡辺順也とともに設立。映画館やカフェ、本屋、雑貨屋、学校など様々な空間で、世界各国の映画を上映。映画のイメージにあわせた、コース料理やデザート、ライブ、写真展、イラスト展なども開催し、作品から広がる世界を表現している。
●キノ・イグルー
http://kinoiglu.com/
●Instagram
https://www.instagram.com/kinoiglu/
ライター:白方はるか

ライター:白方はるか

1988年生まれ、清澄白河在住。ビールと日本酒が大好きな編集写者・ライター。ふだんはGMOペパボ株式会社のWebメディア『よむよむカラメル』(http://pickup.calamel.jp/ )をはじめEC事業部のPRディレクターとして活動中。ことりっぷwebでは、連載『街とお店のおいしいはなし。』などを中心に執筆中。

http://pickup.calamel.jp/

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