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野村萬斎さん 特別インタビュー。時代を“映しとる”「狂言」の世界

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野村萬斎さん 特別インタビュー。時代を“映しとる”「狂言」の世界
室町時代に猿楽から発祥したとされ、能と並んで日本の古典芸能の礎である狂言。猿楽のけれん味を洗練させた喜劇で、シテと呼ばれる主役とアド(脇役)によって演じられます。今回はその狂言の魅力について、狂言だけでなく現代劇から映画まで、幅広く活躍される狂言師、野村萬斎さんに解説いただきました。

プロフィール

東京都出身。1994(平成6)年に二世野村萬斎を襲名。狂言師として古典から新作まで意欲的に舞台に取り組んでいる。テレビや現代劇、映画への出演も多数。2016年公開の「シン・ゴジラ」では、ゴジラの動きを好演して話題に。

狂言に登場するのは、まさに「あなた自身」です

狂言は、能とセットで演じられることが多いので違いがわかりづらいのですが、簡単に言えば、能がシリアスなストーリーの芸能であるのに対して、狂言は喜劇として理解いただければいいですね。
多くの演目が「このあたりの者でござる」という第一声で始まることが多く、場所・時代・文化を超えた「どこにでもいる市井の人々」に潜む人間の存在そのものの滑稽さをシンプルに描いた演劇です。
狂言は素手の芸とも呼ばれ、演者の身ひとつで表現します。お酒を飲む場面でも具体的な小道具は出さずに扇を酒器に見立てるなど、すべてエアーで演じます。お客さんに場面設定や人物像を想像してもらうために、声色やボディランゲージなどのパフォーマンスがとても重要になってくるんですね。
シンプルな演劇だからこそ、狂言師の身体性そのものを楽しんでいただきたいです。ツメ、ヒラキといわれる、身が引き締まる、あるいは和むという演技は狂言独特のものです。基本的にはせりふ劇ですが、謡や舞だけで表現する場面もあり、総合芸術として五感で感じてほしいですね。装束(衣装)は、かつて庶民が愛用していた麻素材のものが多いです。お正月には松竹梅、秋には萩があしらわれるなど、日本人の大事にしてきた地域性や季節感が取り入れられていますので、視覚的にも楽しめると思います。

わからなくてもまずは体験。シチュエーションを楽しんで

狂言が演じられる能舞台は、背景に松が描かれた三間四方(さんげんしほう)の真四角の本舞台がメインの演技エリアになります。これに橋掛りという廊下が付いている、というのが基本的な構造となっています。能の場合はこの橋掛りと本舞台が「あの世」と「この世」の境界を表現しているのに対して、狂言の概念はもう少し曖昧です。登場人物は「どこか」とか「あっち」から橋掛かりを通って「このあたり」とか「こっち」へ登場してきて、とてもラフに舞台設定が展開していきます。
ですから、皆さんも多少意味のわからない言葉や表現が出てきても、すべてを理解しようとするより、全体のシチュエーションを楽しんでいただきたいです。前後のストーリーや演者の動きを見れば、必ず理解できる内容が多いですし、笑いが基本にありますから、きっと楽しんでいただけると思います。そのために、技や体や声を使ってわかりやすく演じるのが、狂言師の仕事ですから。
「棒縛」より。 召使いが主人の酒蔵に忍び込んで盗み酒。一計を案じた主人は隙をみて縄に縛ろうと画策する。縛られたまま酒を飲もうとする身振り手振りが楽しい代表的な演目
狂言は一般的なホールなどでも上演されていますが、雰囲気を味わっていただくには、やはり専用の能舞台での公演がベストです。全国には能楽堂はもちろん、多くの美しい能舞台があります。修善寺のあさば旅館にある能舞台は、池の向こう側に能舞台があって、とても雄壮な場所ですし、嚴島神社では能舞台が海の中に建っていてとても幻想的です。山の方では中尊寺の白山神社に素敵なものがあり、旅の途中でぜひ立ち寄ってみてほしいスポットです。
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インタビューの後半は、3月6日発売の「ことりっぷマガジン2018 春号」で読むことができますよ。新作での挑戦や、狂言の可能性についても語っていただきました。ぜひ本誌を手にとってチェックしてみてくださいね。
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文:

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