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食べたら島に行きたくなる、豆腐屋のバターとは。 [山下商店/鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市] byONESTORY

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食べたら島に行きたくなる、豆腐屋のバターとは。 [山下商店/鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市] byONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の
「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から鹿児島県甑島(こしきじま)の「山下商店」を紹介します。

ある若者が島でオープンしたのは、豆腐屋。

ある若者が島でオープンしたのは、豆腐屋。 「山下商店」は“コーヒーも美味しい豆腐屋”。山下氏自らが一杯ずつ淹れる。
鹿児島県の甑島。今まであまりメディアに取り上げられることのなかった小さな島が、最近全国的に名前を知られるようになりました。そのきっかけを作っているのが「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」という会社。事業内容は、豆腐屋だったり、農業だったり、民宿だったり……。知れば知るほど興味深く、魅力的な活動を行っている会社の代表・山下賢太氏に話を聞いてみました。一度は食べてみたい「大豆バター」など、ユニークで美味しい商品についてじっくりご紹介します。

「豆腐屋がオープンしました」という告知、あまり聞かないですよね。廃業する豆腐屋は多いものの、新規開業とはなんと度胸があるのでしょう。鹿児島県の西に浮かぶ小さな甑島に2013年、新しく開店した豆腐屋があります。しかも店主は当時25歳。濃厚な豆腐はもちろんですが、この店で大ヒットを遂げた商品があります。それはなんとバター。豆腐屋ならではの、牛乳や動物性油脂を一切使わない「大豆バター」です。

店主の山下賢太氏は甑島出身の32歳。豆腐屋の主人でありながら、島米(しまごめ)を作る農家であり、民宿のオーナー、交流施設「コシキテラス」の運営者、観光ガイド……とさまざまな肩書きを持っています。すべての事業は全くの素人畑からスタート。その背景にあるのは、「島の風景の価値を多くの人に伝え、未来に遺したい」という一貫した信念です。

島の「朝ご飯の風景」は、ふるさとの財産だ。

島の「朝ご飯の風景」は、ふるさとの財産だ。 風景をつくるのも人、壊すのも人。でも、再生だってできる。
中学卒業後は地元が嫌いで離れたものの、帰省した時に「ふるさとの風景」が経済活動によって失われていく姿を目の当たりにし、島にある有形無形の財産を守ろうとUターン。特に地域の人たちの働きによって成り立っている「島の朝ご飯の風景」に価値を見出し、島の米を育ててインターネットで販売する事業をスタート。その後2013年、自分の中にあった“島の朝ご飯”の原風景を形にして未来へ残したいと考え、『山下商店』をオープン。あくまでも日常的な島の風景でありたいと、宣伝はほとんどせず、のぼりも出していません。大切にしているのは、あくまで“島の日常を観光客に体験してもらう”こと。

豆腐がつなげる島の外と内の人たちの輪。

豆腐がつなげる島の外と内の人たちの輪。 粗めに崩した絹ごしと、焼き目をつけた木綿豆腐の食感が楽しい「とうふ屋さんの麻婆豆富丼」。
築100年以上の古民家を改築した店内にはカフェも併設。山下氏自らドリップすることもある「島の波珈琲」他、できたての濃厚な豆腐を味わえる3種盛り、「とうふ屋さんのかき氷」などの軽食メニューも提供しています。当初は「地元の人が日常集える場に……」と始めましたが、嬉しいことに口コミで知った観光客も多く訪れ、今では地元のおばあちゃんや漁師さんたちと観光客が交流する姿も見られるようになりました。

大豆を使って、パンにも合うヘルシーなものを。

大豆を使って、パンにも合うヘルシーなものを。 大豆へのこだわりはひとしお。いずれは甑島産で作ろうと試験栽培中(写真はイメージ)。
山下氏にとって豆腐屋とは「誰かの朝を準備する職人」。慌ただしく移り変わるライフスタイルの中で、豆腐屋にできることは、豆腐を作るだけでなく、忙しい朝を少しでも豊かな時間に変えること。そうして監修したものが、「とうふ屋さんの大豆バター」です。ついついパン1枚で済ませてしまいがちな朝を、健康に良い大豆バターを添えて、「今日も一日がんばろう」と思ってもらえれば――。九州産の丸大豆「フクユタカ」を使い、動物性油脂をいっさい使用せず、植物性のものだけで丁寧に練り上げます。豆腐を1丁1丁手作りするように、大豆バターを作るのも全て人の手。砂糖も上白糖ではなく、喜界島で栽培したサトウキビ由来の黒砂糖で煮詰め、大豆に含まれている甘さをじっくり引き出していきます。

ピーナッツバターのようにコクがあり、カロリーは約半分。

ピーナッツバターのようにコクがあり、カロリーは約半分。 「山下商店のお豆腐セット」は豆腐に厚揚げ、「サクラカネヨの濃口醤油」などの詰め合わせ。
およそ2時間丁寧に煮詰めてできる植物性バターは、まるでピーナッツバターのようにコクがありクリーミー。ですがカロリーはピーナッツバターの約半分。大豆の食感も残っていて、パンに塗ってトーストすると香りがより立ってとろけるような味わいに。「豆腐の匂いが苦手という人も、これなら大豆を美味しく取り入れることができます」と山下氏。インターネットでは豆腐セットに固定ファンがいましたが、さらにこの大豆バターもヒットし、多くの人に山下商店の味が知られるようになりました。

島特産のキビナゴだってお洒落なお酒のつまみに。

島特産のキビナゴだってお洒落なお酒のつまみに。 新鮮なきびなごをオリーブオイルに漬けた一品。パスタのソースにも。
そのひとつが「太陽のきびなご」。鹿児島県はキビナゴ漁が盛んで、その水揚げ量の約6割が甑島(こしきしま)漁協に所属するきびなご漁船によるものだとか。2005年には農林水産大臣杯で天皇賞を受賞したという天下一品のキビナゴですが、あまり他県の人には知られていません。この財産を知ってもらうために企画したのがこの商品です。食感はジャーキーに似ていて、チーズと合わせてブルスケッタにしたり、豆腐に載せて食べたりとお酒の肴にピッタリです。

知ってほしい、食べてほしい、島の母ちゃんの味。

知ってほしい、食べてほしい、島の母ちゃんの味。 カワハギ、アジ、ブダイなど甑島の漁港に水揚げされた新鮮な魚が材料。
また山下氏は「島の母ちゃんたちの味」も大切な財産だと考えています。「ヨシエおばちゃんの地魚つけあげ」は、島で40年以上家族で守り続けてきた庵地ヨシエ氏のさつま揚げ。つなぎとしてのデンプンや卵白を使用せずに、一枚一枚丁寧に揚げた、余分なものを足さない魚のすり身そのものの美味しさが感じられます。
「庵地つけあげ店」で40年以上家族で守り続けてきた味だという。

祖母直伝のこっぱもちは、もう自分にしか作れない。

祖母直伝のこっぱもちは、もう自分にしか作れない。 冬にしか食べられないこっぱもち。通販の時期も限られている。
そして「オソばあちゃんのこっぱもち」も山下氏自慢の味です。こっぱもちとは干したサツマイモ(こっぱ)と餅米を使用した昔ながらの郷土のお菓子。これは、亡くなった山下氏のおばあちゃんが、春先に芋を植えるところからはじまり、およそ1年間という歳月をかけて毎年作ってくれた、思い出が詰まったものでした。高齢のため体調を崩したおばあちゃんに頼み込んで直伝してもらい、何度も試作をして「こいならよか!」と太鼓判を押してもらったそう。使うサツマイモは糖度15〜16度の「紅はるか」。サツマイモも餅米も甑島で育てます。「この郷土菓子とオソばあちゃんの故郷への想いを後世に伝えていくためにレシピを受け継ぎました。これからもこの島の日常のなかにそっと在り続けたい」と山下氏は話します。

豆腐屋にカフェに島宿、美味しい風景がそこかしこに。

豆腐屋にカフェに島宿、美味しい風景がそこかしこに。 「コシキテラス」の新名物、キビナゴとタカエビのパテを挟んだ「スペシャル断崖バーガー」。
「とうふ屋さんの大豆バター」を通販で購入した人は、きっとできたての豆腐も味わいたいと思うはず。さらに『山下商店』に足を運ぶと、今度は中甑(なかこしき)港にあるカフェレストラン『コシキテラス』や島宿『island Hostel 藤や(2018年春にFUJIYA HOSTELにリニューアル予定)』にも導かれるでしょう。これらも実は山下氏が運営している施設。全て「島の失われつつある風景を未来につなげたい」との想いから事業をスタートさせたもので、ここにも山下氏ならではのアイデアたっぷりな美味しい“仕かけ”が用意してあります。もしかして甑島(こしきしま)は、日本で一番グルメな島といっても大袈裟ではないかもしれません。

(写真提供:東シナ海の小さな島ブランド株式会社)
ONESTORY

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「ONESTORY」は「ONE SPOT,ONE TRIP」をテーマに日本に潜むONE=1ヵ所を求めて旅するトラベルメディアです。そのONEは地域で活躍する人との出会いや宿、レストランのような場所など様々。ONEを深く知ることによって生まれるSTORY=物語の感動をお伝えします。

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