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街、自然、人が入り混じる生きた建築。[太田市美術館・図書館/群馬県太田市] by ONESTORY

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街、自然、人が入り混じる生きた建築。[太田市美術館・図書館/群馬県太田市] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から群馬県太田市の「太田市美術館・図書館」を紹介します。

空中庭園を頂くスタイリッシュなアートゾーン。地方都市の駅前に忽然と現れる、理想郷のような建築。

空中庭園を頂くスタイリッシュなアートゾーン。地方都市の駅前に忽然と現れる、理想郷のような建築。 あらゆる方向へと動線が伸びる。自由に行き交える街のような空間(©Daichi Ano)。
白く小高い丘が有機的に連なり、その上部には開放感溢れる空中庭園を頂いています。訪れる人々を分け隔てなく受け入れてくれる建物の中では、アートを楽しみ、本を広げて、思い思いの時間を過ごすことができる――。そんな近未来的な文化施設が、2017年4月に群馬県太田市にオープンしました。
ガラスを多用した開放感あふれる外観(©Daichi Ano)。
『太田市美術館・図書館』。太田駅前の人の流れを活性化し、街と人と自然が入り混じった、生きたサイクルを生み出す施設です。そのコンセプトは「まちに創造性をもたらす、知と感性のプラットフォーム」。サンゴ礁や森の木々のように有機的な一体感のある建築を目指したといい、展示室や通路が独立しながらも連続性を持っています。
夜も温かな光が灯り、外から内へと人々をいざなう(©Yoichi Onoda)。
人の流れを生むために、あらゆる方向に出入り口を設置。これによって、自由に行き交える街のような建築を実現しました。各展示室は緩やかなスロープに取り巻かれており、自然な動線が妨げられない空間を造り上げています。

壁にはガラスが多用されており、外からも展示物や人の動きが見えます。「中に入ってみたい!」と思わせてくれるだけでなく、美術館と図書館の間にも人が流れ続けます。

目指すのは、未来を担う人材を育成する場。

目指すのは、未来を担う人材を育成する場。 勉強するための空間にも寛げるムードが漂う(©Daichi Ano)。
この斬新な空間を造り上げたのは、建築家・平田晃久氏と太田市の市民たち。1年間に計7回ものワークショップを重ねた上で、かつてない美術館と図書館を完成させました。

その目的は、市民のまちづくりへの参画と協同。太田市が「人と自然にやさしい笑顔で暮らせるまち」であり続けるために、『創造的太田人(そうぞうてきおおたびと)』を育成する場として企画されたのです。
個性的なソファやクッションをいたる所に配置。自由に座り、リラックスできる(©Daichi Ano)。
『創造的太田人(そうぞうてきおおたびと)』とは、太田市の未来を担う人材のことです。太田市はかつて「ものづくりのまち」として知られ、富士重工(現・SUBARU)の本工場の他、多くの下請け企業がひしめきあっていました。ですが、それらの繁栄の歴史にも陰りがおとずれ、日本全体が人口減少の波にさらされるようになりました。そんな少子高齢化のうねりの中でも、幼い頃から創造性を育んでもらいたい――そんな想いのもとに、このアートと文化の空間は築き上げられたのです。
「多種多様な人々が、心地よい居場所を見つけられる空間」。市民にとってそんな場所でありたい、とスタッフは願っています。美術の展示スペースを除けば入場は無料で、いつでも・誰でも気軽に訪れて滞在することができます。館内のいたる所にソファやクッションが置かれ、建物そのものが歓迎してくれているようです。

人の流れを生み出し、駅前に活気を呼び戻す。

人の流れを生み出し、駅前に活気を呼び戻す。 まるで単体の店舗のようなカフェ。駅近の立地で若者を呼び込む(©Yoichi Onoda)。
かつて太田市には美術館がありませんでした。『太田市美術館・図書館』ができたことで、市外に足を運ばなくてもアートに触れられるようになったのです。更に既存の4つの図書館とは異なる斬新な図書館も併設。蔵書数はやや少ないものの、絵本・芸術・ものづくり関連の書籍に特化し、よりアーティスティックで創造性のある本に触れられるようになりました。
蔵書にもオリジナリティが溢れる。美術館と連携した図書館の強み(©Yoichi Onoda)。
更にカフェを併設することで、気軽に立ち寄れる、誰もが寛げる空間を演出。駅にほど近い立地もあって、若い人たちや仕事帰りの人たちも気軽に立ち寄ってくれるようになりました。
「カフェだけ、テラスだけ、といった利用方法でも立ち寄って頂けています。顕著なのは、柔らかい雰囲気のためか元気のいいお子さんも来てくださるところ。吹き抜けや屋上緑化などの開放的なスペースがふんだんにあるため、皆さんリラックスして頂けているようです」と、広報担当の星野氏は語ります。
そうした自由な楽しみ方をするうちに、自然にアートや文化に触れることができるのです。

主役は市民。ともに歩んで発展を目指す。

主役は市民。ともに歩んで発展を目指す。 市民が集い、市民を育む。外から、内から、人が流れ続ける(©Daichi Ano)。
市民からの評価も高い『太田市美術館・図書館』ですが、その強みは、2つの文化施設が複合していること。例えば現在開催中の『本と美術の展覧会』などは、アートと本の関わりによる相乗効果的な展示を実現しています。図書館に美術館の資料を置いたり、図書館の蔵書にちなんだ企画を開催したり。アートと本の楽しさを1ヵ所で体感できます。「こういった企画は当施設ならではですね。今後も様々な試みを行っていきます」と星野氏。
いつでもここに在る、居心地の良い空間(©Daichi Ano)。
太田駅前に生まれた人の流れと賑わいは、いずれは駅周辺の活性化にもつながっていくことでしょう。建築界からも熱い視線を浴びている『太田市美術館・図書館』。主役である市民とともに、今後も発展を続けていきます。

太田市美術館・図書館

群馬県 太田市東本町16番地30 MAP

0276-55-3036

10:00~20:00(日曜・祝日は18:00まで) ※企画展の観覧は18:00まで(入場は17:30まで)

月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日) 年末年始(12月29日~1月3日) ※毎月最終火曜日は、図書館エリアのみ休館


※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

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