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純度100%の錫で独自の世界を魅せる。[能作/富山県高岡市] by ONESTORY

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純度100%の錫で独自の世界を魅せる。[能作/富山県高岡市] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から富山県高岡市の「能作」を紹介します。

新たな素材で新時代のものづくりを開拓。

柔らかな艶を帯びた美しい銀色と、触れればなめらかになじむ肌触り。日用品でありながら卓越したデザイン性を誇る『能作』のプロダクトは、金や銀に次いで高価な金属である『錫(すず)』を主に使用しています。酸化しにくく抗菌作用に優れているため、古くは紀元前1500年頃の古代エジプト王朝でも珍重されていました。また、日本にも奈良時代に伝来し、正倉院に宝物として収められています。

その特性によって、「錫の器に入れた水は腐らない」「お酒の雑味が抜けてまろやかな味になる」などと評価され、古くから茶器や酒器などに用いられてきました。
売れ筋商品のビアカップは、鋳込む際にできる梨地調の少しザラザラとした鋳肌により、ビールのまろやかな泡立ちを生み出すと評判。また、熱伝導性が高いため、よりクールでスッキリとした飲み心地になる。
『能作』は高い技術力によって純度100%の錫を使用。他の金属を全く混ぜないため、先述の抗菌作用をはじめとして、熱伝導性が高い、非常に軟らかくて自由自在に曲げられるなどの特性を存分に発揮させています。
錫の他にも真鍮や青銅などによる個性的なプロダクトを展開。真鍮製品の仕上げの様子。
そのため、『能作』の器は「ガラスなどと比べて飲み物の味がまろやかになる!」と評判。例えば、ワインなら安いワインや若いワインでも年を重ねたように感じられる、酸味の強いオレンジジュースならえぐみがとれて甘さが増すなどの感想が寄せられているそうです。また、造形の妙も楽しめる花器は、抗菌作用の高さによって雑菌が繁殖しにくいため、花や植物が長持ちします。
ブレイクのきっかけとなった『風鈴 スリム』。造形の美しさと澄み切った音色が楽しめる。

歴史を糧に新たな境地へ。

そんな独自のものづくりを誇る『能作』ですが、かつては地元・高岡市の伝統産業として発展した仏具のメーカーでした。それが大胆な転換を果たしたのは、2001年に誘われて開催した、東京・原宿での展示会だったそうです。

もともと『能作』が得意としていた真鍮(しんちゅう)製の仏具や茶道具、花器などを出展しましたが、新たな挑戦としてベル(呼び鈴)も製作。これが大評判となって、東京のセレクトショップで取り扱われるようになったのです。
溶かした金属を型に流し込み、冷やして目的の形状にする「鋳造(ちゅうぞう)」。それによって生まれる「鋳物(いもの)」を独自の技術力で極める。
更にバイヤーのアドバイスを受けて風鈴にしてみたところ、これが大ヒット。そして「食器も作ってもらえませんか」と頼まれましたが、食品衛生法の問題で、当時メインとしていた真鍮は食器にできませんでした。そこで錫で作ってみたところ、これまた評判に。その錫の食器がきっかけとなって、錫製品をメインに製造するようになったのです。
錫の柔軟性を生かした、自由自在に曲げられる『KAGO』。デザイン・機能性の両方に優れた製品が魅力。

伝統を重んじながらも時代に即したエッセンスを。

他の金属とは違う、錫の特性を生かした独自のものづくり。それとともに評価されているのが、際立ったデザイン性です。購入した人からは、「とにかくデザインが良くて形が綺麗!」という声が寄せられているそうです。更に軟らかく曲げられる性質など、いくつもの驚きや感動が秘められています。
鋳造前に鋳型を焼成したり、薬品処理をしないため、「生型鋳造法」と呼ばれる。本社エントランスにある美術館のような木型倉庫には多種多様な型が並ぶ。 
そんな『能作』の製品は、一つひとつ生型鋳造(なまがたちゅうぞう)法で作られています。これは『能作』が本社を置く富山県高岡市に400年にわたって伝えられてきた技術。砂を利用して、職人が手作業で型を作ります。
工場には、見学者が一目で分かるようにサインを設置。照明も明るく、気持ちの良い空間となっている。
製品と同じ形状の木型をもとに、少量の水分と粘土を混ぜた砂を押し固めて成型していきます。鋳型が早く作れるだけでなく、コスト面でも優れた製法。他にもシリコーン鋳造法などの技術や素材を使い分け、多品種少量生産の体制を確立しています。
錫100%の『KAGO』は収納時には平たく、使用時は端を曲げて深さを持たせるなどして、フレキシブルに使える。

高度な技術と丁寧な仕上げによる凛としたたたずまいが、海外でも高く評価。

こうして独自の世界を構築するにいたった『能作』のプロダクトは、海外でも高く評価されています。
本社にあるファクトリーショップはハイセンスなたたずまい。ここでしか購入できない限定品も並ぶ。
錫の特性と「高岡銅器」の技術を生かした自由自在に曲がる器『KAGO(カゴ)』は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やニューヨークのソーホー地区のショップ、タイの伊勢丹バンコクなどで販売。更にフランスのデザイナーのシルビー・アマール氏とコラボレーションした、ホテルやレストラン向けのシリーズ『シルビー・アマール・スタジオコレクション』をリリースするなど、デザイナーやブランドとも積極的に提携。高まる海外人気に合わせて販路も広げています。
錫製品の仕上げの様子。高い技術力とオリジナリティが、金属製品の本場である欧州でも認められた。

「より能(よ)い鋳物を、より能(よ)く作る。」

1916年(大正5年)に創業し、1967年(昭和42年)に設立という長い歴史を重ねながらも、その研鑽を怠らない姿勢は健在。創業以来のプロダクトである仏具・茶道具・花器に加えて、近年はテーブルウェアからインテリア雑貨、照明器具、建築金物まで手がけるようになりました。
変形に伴う痛みや腫れのある指の第一関節に装着して、安静を保つことができる『ヘバーデンリング』。錫の“曲がる”特性を生かした。
国内でも多くの百貨店や企業、セレクトショップなどとコラボレーションしており、日本橋三越、銀座松屋など全国各地に直営店を設けています。更に近年は、錫の抗菌作用を生かして医療機器・ヘルスケア用品にまで幅を広げています。
能作の多種多様なプロダクトは、そのどれもが日常の中で特別な存在感を放つ。秋の新製品の『干支ぐい呑 亥』。

続々と登場する新製品にも注目。

今後も「高岡銅器」の伝統技術を守り伝えながら、アート作品としての価値も加え、日本のものづくりと「高岡銅器」を世界にPRしていくそうです。

そのたゆまぬ挑戦の流れとして、2018年の秋には新商品を立て続けに発売。毎年シリーズで発売している干支のぐい呑や、錫のペンダントトップにアロマオイルをたらし、香りも見た目も華やかに装えるアロマペンダントなど、既存製品の人気に安住せず、常に新たなプロダクトに取り組んでいます。
本社にある「NOUSAKU LAB」での製作体験の様子。高岡銅器の伝統技法を用いた錫製品の製作を体験できる。
また、こうしたものづくりの現場を紹介する『産業観光』にも注力。本社工場にて製作体験や工場見学を行っており、年間10万人以上もの人を受け入れています。『能作』と「高岡銅器」のものづくりを間近で見てもらい、その背景を伝えていきたい――そんな想いによって実施しています。

こうして『能作』は、仏具メーカーからアート作品のような日用品、更には医療機器にまで展開する革新的なものづくりメーカーへと転換しました。
加賀藩の時代から続く「高岡銅器」を今と未来に伝える。
『能作』の現在のモットーは、「より能(よ)い鋳物を、より能(よ)く作る」。これからも技術と素材を最大限に生かすデザインを探求して、地域に誇れるものづくりを目指していくそうです。

写真提供:株式会社 能作

株式会社 能作

富山県 高岡市オフィスパーク8-1 MAP

0766-63-5080(代表)    

10:00~18:00

年末年始(工場見学は、日・祝日休業。土曜は月により変更有。)


※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

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