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消費者と生産者を、幸せに。津軽のうまいものハンターの夢。[TSUGARU Le Bon Marché・ひろさきマーケット/青森県弘前市]by ONESTORY

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消費者と生産者を、幸せに。津軽のうまいものハンターの夢。[TSUGARU Le Bon Marché・ひろさきマーケット/青森県弘前市]by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から青森県弘前市の「TSUGARU Le Bon Marché・ひろさきマーケット」を紹介します。

右にも左にも、青森県のおいしいものがずらりと並ぶマーケット。

青森県・津軽エリアの中心地、弘前。JRの駅から歩いてすぐの所にある商業施設「ヒロロ」の地下に、『フレッシュファームFORET』という店があります。もしあなたが県外からの訪問者なら、この店での滞在時間は総じて長くなるはず。なぜなら、この店の棚という棚には、青森県中の名産品がぎっしりと並んでいるからです。野菜をはじめ、調味料やお菓子といった加工品から惣菜までが揃い、少々マニアックな品もあちこちに。店舗面積は決して広くないのに、まるで青森の食の見本市のような充実ぶりに驚きます。
次々と地元客が訪れる『フレッシュファームFORET』。POPの説明を読みながら、じっくり商品を選んでいく人が多い
「ここに来れば、青森を一周したような気分になれる。そんな店にしたくて」と語るのは、この店を運営する『ひろさきマーケット』代表の高橋信勝氏です。「ここに並ぶ商品の条件は2つ。ひとつ目は、青森県産もしくは青森県の事業者の生産物であること。2つ目は、自分たちで食べてみていいと感じたもの。産地にも極力足を運び、加工品の材料もなるべく青森県産、無添加のものを選んでいます」と高橋氏。
この日いちおしの野菜は、温泉水を使って栽培を行う弘前市「小堀農園」のもの。小規模な生産者が多く、他にない野菜も多数扱う
話している間もひっきりなしに訪れるお客さんを見れば、そのほとんどが地元・弘前の人。青森のものばかりを置いているけれど、観光客向けの店にあらず。高橋氏が「日々の食卓に寄り添う店でありたい」と話すように、地域に根差す場所として、すっかり認知されていることが伝わってきます。
昔ながらの造り方を守る地元の蔵「加藤味噌醤油醸造元」の味噌などが並ぶ冷蔵ケース。調味料をはじめとする加工品も充実する

食料自給率100%を超える青森。その豊かさに心動かされて。

高橋氏は生まれも育ちも弘前。両親ともに飲食店勤めということもあり、昔から食への関心は高かったものの、25歳で就職したのは青森市の運送業者でした。主に食品の配送に従事するうち、高橋氏はあることに気付きます。「実は青森って、すごく食が豊かなんだと。米、野菜、魚介や肉に乳製品も豊富で、食料自給率は100%を超えている。県内を回ると、それまで気付かなかった津軽と他のエリアの食文化の違いも見えてきて、これは面白い!と思いました」と高橋氏。
生産者の話になると、止まらない高橋氏。造り手のこだわりだけでなく、人柄を知ることができるのも直接仕入れの店ならでは
三方を日本海、太平洋、陸奥湾という異なる海流の海に囲まれ、八甲田山や岩木山といった山があり、四季を通じて寒暖差の激しい青森県。豊かな自然が育む食の多様性に触れた高橋氏はやがて、それらを多くの人に届ける仕事を始めようと決心したそうです。
真冬のこの時期一層美味しさを増すのが、雪室で保存することで甘みを乗せたにんじんやじゃがいも。地元の人々にも人気の、雪国の味だ
「配送業務で実感したのが、足の悪いお年寄りや子連れの方は、雪が降る冬場の買い物が本当に大変だということ。だから最初は、買い物代行業もできればと思っていました。でも配達は信頼関係が大事なので、どこの誰かもわからない僕にはなかなか注文が入らない。ならば顔と顔を突き合わせて売るしかない!と、野菜と惣菜の店を始めることにしたんです」と高橋氏。スタートは、弘前市内の小さな市場にある空きスペース。こうして2011年、フランス語で幸せを意味する「ボヌール」という店が誕生しました。
津軽ではポピュラーな甘いいなり寿司やおはぎなど、素朴な惣菜にも手が伸びる。ちなみにこちらの2品、高橋氏の義理の母が手がけている

生鮮食品×お洒落なデザイン。小さな野菜&惣菜店が注目を集める。

業態変更により3年ほどで閉店した1号店「ボヌール」ですが、当時は地元にちょっとした衝撃をもたらしました。昔ながらの渋いアーケード「弘前中央食品市場」内に誕生した店は、高橋氏の同級生でもある若手建築家・蟻塚 学氏が手がけたモダンでシンプルなインテリアに、マルシェ風の陳列。野菜はフィルムで包まず、ナチュラルな雰囲気に積み上げたり、クラフト紙と麻紐で包装したり。

「当時の弘前には、まだそういう売り方をする店がなくて」と高橋氏。更に、接客や試食販売にも注力。「例えば、実力のある生産者さんが、珍しい野菜の栽培に挑戦してくれたとします。でも道の駅で売っても、消費者が使い方を知らないから全然売れない。一方で、ちゃんと使い方を示したり、試食してもらったりすると、みんな喜んで買ってくれる。こだわって作られたものを買いたいという土壌は、弘前にもきちんとあるんです」と高橋氏は話します。
「弘前中央食品市場」内に登場した「ボヌール」(現在は閉店)。高橋氏も小さい頃から通ったという、市民にはおなじみの庶民的な市場だ
「初めての小売り、惣菜の販売。当時は本当に必死でしたよ(笑)」と言う高橋氏ですが、この場所で大きな手ごたえを感じることに。工夫を凝らしていいものを売れば、きちんと反響がある。それを生産者に伝えると、彼らのモチベーションが上がる。更に高橋氏自身が青森県中の産地を訪れる中、様々な生産物の品種や味の違いなどに感動し、それがまた自分の仕事のモチベーションにもなっていったそうです。その後、『フレッシュファームFORET』の前身である青果店の業務委託を依頼された高橋氏。惣菜部門はより進化し、バル形態の営業に。青森のいいものを多くの人に届けたいという想いが、地域を巻き込み循環し始めたのです。

生産者と消費者の双方を繋ぎ、双方の幸せが交錯する場所。

現在、バイヤーとして青森中を回る日々を送る高橋氏。店という基盤を確立したからこそ、見えてきた次なる課題もあります。それを実現する場が、2018年12月にオープンした飲食店『Local Food Buffet そらにわ』。こだわったのは、旬の野菜をバイキング形式でたっぷりと提供することでした。高橋氏曰く「こんなにたくさん野菜を扱えるようになったのに、それをもりもり食べてもらえる場所がない!と思って」。
新店『Local Food Buffet そらにわ』では、長年培った惣菜の製造・販売スキルを活用。農業の専門知識も備えた店長をはじめ、若いスタッフが元気に切り盛りする
同時に、「生産者から直接生産物を仕入れる販売代理店」という『ひろさきマーケット』の立場を、よりブラッシュアップしていきたいという想いも強くなったそうです。「私たちには、生産者の想いをより詳しく消費者に伝える役割があります。一方、生産者側からは消費者側が見えづらい現状もある」と高橋氏。『Local Food Buffet そらにわ』の営業が落ち着いてきたら、と前置きしつつ、「生産者の方々に代わるがわる『Local Food Buffet そらにわ』に立ってもらい、直接お客さんと話ができる場にしたい。もっとライヴ感のある演出ができれば」と語ります。実現すれば、おそらく日本初のレストランになるはずです!
『Local Food Buffet そらにわ』のブッフェ料金は、中学生以上1,500円、小学生850円、5歳未満300円、3歳以下無料と良心的。既に女性やファミリー層から大人気だ
この日、偶然「フレッシュファームFORET」へ野菜の納品に来ていた黒石市の生産者、「サニタスガーデン」のスタッフ山崎氏が、私たちにこう話してくれました。私たちが「この野菜を作り始めた頃から扱ってくれて、応援してくれて……高橋さんには感謝しかない。足を向けて寝られません」と。その横では、夕飯前の買い出しでしょうか、スタッフにあれこれ聞きながら、ニコニコと笑顔で惣菜と野菜を買い込む常連客が。
『Local Food Buffet そらにわ』に納品された様々な野菜。価値を理解できる人の手で、きちんと価値を生かされて使われる、幸せな野菜たちだ。思わず「美味しい料理になってね」、と心の中で呟いた
この店ではおなじみであろうその光景を見た時、頭に浮かんだのは、高橋氏の原点である1号店「ボヌール」の店名の意味、「幸せ」という言葉でした。生産者にも、消費者にも、幸せを。高橋氏の作る幸福な食のサイクルは、今後ますますたくさんの人を巻き込み、発展していくことでしょう。

ひろさきマーケット

0172-55-8711


フレッシュファームFORET

青森県弘前市駅前町9-20 ヒロロ B1F

0172-55-8711


Local Food Buffet そらにわ

青森県弘前市土手町78 ルネスアリー1F

0172-55-5980


※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

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