ログイン / 会員登録するアカウントを選択

人と人、人と場所を繋ぐコネクター的ローカルコーヒーショップ。[SHIMOIMAICHI HOPPING・日光珈琲 玉藻小路/栃木県今市] by ONESTORY

120
人と人、人と場所を繋ぐコネクター的ローカルコーヒーショップ。[SHIMOIMAICHI HOPPING・日光珈琲 玉藻小路/栃木県今市] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から栃木県今市の「[SHIMOIMAICHI HOPPING・日光珈琲 玉藻小路」を紹介します。

3年に及ぶセルフリノベーションを支えた原動力。

3年に及ぶセルフリノベーションを支えた原動力。 『日光珈琲 玉藻小路』のエントランス。ツートンカラーの壁が愛らしい。
今市地区の中心に位置する「道の駅 日光」。その裏手にある玉藻小路はドーナツ屋や花屋が居並ぶ味わい深い小路です。その最深部にあって、多くの人を惹きつけてやまないのが『日光珈琲 玉藻小路』です。木製サッシの窓から毀れる光、ノスタルジックな調度、穏やかな空間に流れるコーヒーの香り……オープンと同時に店内はこの空間を愛してやまない人々で満たされます。
朝の陽光が差し込む開放的な店内はノスタルジックな空間。
この場所に惹かれ、自ら改装を手掛けたのは、県内で5店舗の『日光珈琲』を運営する風間教司氏。「僕は隣町の鹿沼出身なんですけど、今市に叔父がいて、ちょこちょこ遊びにきていたんです。昔は、ちょうど今お店がある裏手が飲み屋街で、子供心に『ここは大人の場所だ』と思っていました。その後、お店を1軒作ったあたりで、叔父から『あそこを駐車場にするために買ったから、建物を解体しようと思う。ついては建具やテーブルで欲しいものはあるか?』と連絡があったんです。その時、初めて中を見たんですけど、まるでお化け屋敷(笑)。どうやら昔は連れ込み宿だったらしい、なんてことを聞きながら辺りを物色していると、欄間にちょっとした飾りがついていたりして面白いんですよね。気が付いたら叔父に、『このまま貸してくれない?』と言っていました。それまで、もう1軒店を出すつもりもなければ、お金もなかったんですけど」
店内はキッチンから流れ出るかぐわしいコーヒーの香りに満たされている。
この日から3年間に及ぶセルフリノベーションが始まります。休日を使って埃を落とし、古い壁紙をはがし、床を張り替え……。「精神的にも肉体的にもしんどい時期はありましたが、発見のワクワク感が勝りました。例えば、ボロボロになった壁紙をはがすとその下から明治時代の荷札が出てきたりするんです。それが滋賀から日光へ届いた東照宮改修の道具だったりして」。そもそも今市は日光へ向かう日光街道、会津に至る会津西街道、中山道と繋がる日光例弊使街道と3つの街道が交わる交通の要所です。「今市は多くの旅人が交流を深めた宿場町。いろんな文化が融合してきた歴史を持っています。ですからここにもう一度、いろんな人が集い、交流する場所が作れたらという思いが芽生えてきたんです」
地元民と観光客が同じ空間で思い思いの時間を過ごす。
小さな階段を上ったところにある半個室。市松模様の壁紙が目に鮮やか。
年季の入った梁と新しい構造がナチュラルに融和している。
過去にさまざまなルートを辿った旅人がのぼったであろう階段。
壁紙をはがしたあとに出てきた荷札などをそのまま残している。

自然に広がっていくコミュニティーの中心に。

自然に広がっていくコミュニティーの中心に。 店内奥にあるショップinショップ。この日は鹿児島の美味しいものが大集結。
風間氏がこのお店を開いてから、次々に新しいコミュニティーが生まれています。「この小路にお店を出しているのは、別の場所でお店をやっていて、『2軒目を出すなら玉藻小路で』と言ってくれた元々の知り合いが多いんです。向かいの2階では僕より若い男の子がゲストハウスをやっていて、気付いたらウチのスタッフと仲良くなって、結婚していました(笑)。この場所がきっかけで、あとは自然発生的に繋がっていく。そういうのが面白いじゃないですか」
「ここで鹿児島の商品に触れた人が、鹿児島を旅するきっかけになれば」と風間さん。
この日、店内奥の小部屋には「KENTA STORE」と書かれた黒板がさがっていました。なかには鹿児島の生醤油を使ったパスタソースや九州産の丸大豆を使った大豆バターなどが売られています。なぜ、栃木で鹿児島なのでしょう? 「この出張ストアを運営するヤマシタケンタさんは鹿児島の離島から鹿児島の美味しいものを発信している人。たまたまコミュニティーが広がっていく中で知りあいました。もちろんセレクトもいいし、人もいい。何より今市で鹿児島のものっていうのが面白いでしょう? 宿場ってもともとそういう機能があったのかなと思うし、現代においてもそういう部分を残していきたいんです」

コーヒーを介して生まれた師匠と弟子の絆。

コーヒーを介して生まれた師匠と弟子の絆。 適正温度でドリップできるよう選ばれたケトルで丁寧にコーヒーを淹れる。
目に見えるものも、見えないものも。今市が持つ歴史に目を向け、現代に残すべく尽力する風間氏ですが、その肩書は珈琲焙煎士。「高校生の頃から喫茶店に行くのが好きだったんです。年齢も職業も違う人同士が趣味の話で盛り上がっている。そういう話ができるのが大人だなって。その後、バックパッカーとして世界を回るなか、どの国にもカフェがあって、人が集って、情報拠点にもなっている。カフェって世界中で親しまれる場所なんだなと改めて思ったんです。大学卒業後は普通に就職したんですけど、面白くなくてやめてしまって。大学まで出してもらった親の手前、バイトばかりもしてられないし、自分で店を持てば冷たい目をむけられないですむかなと地元で喫茶店を始めたんです。最初はどこかで修行するでもなく、ただ買ってきた豆でコーヒーを入れていました。そうすると、味にうるさいおじさま方が色々と教えてくださるんです」
ステンレスのソーサーで供されるコーヒー。この質実剛健さがいい。
コーヒーに夢中になっていくなか、風間氏はあるブログと出会います。「コーヒーについて書かれたその人の文章がいちいちすっと腑に落ちるんです。『一度会ってみたい』と思って軽井沢まで会いに行くと、『そんなに色々考えているなら自分で焙煎してみたら?』と。それから、休日は軽井沢に通い始めました。コーヒーってワインと同じで、作り手によっても、ブレンドによっても味が変わるんです。そうすると、これは男体山のイメージだなとか、自分なりの味が出来てくるわけです」。時を経て、自分で焙煎した豆を「日光珈琲」というブランドにしようと決めた風間さん。今でもその師匠とはいい関係が続いています。
爽快な「木いちごソーダ」648円。ほんのり甘酸っぱい人気のメニュー。
ブランドを作る──。大きな決意を胸に、向かった先は男体山でした。「日光といえば男体山。だったら自分で焙煎したコーヒーを頂上で飲んでみようと、男体山の水を詰めたペットボトルと豆と道具を持って男体山に登ったんです。そこで味わったコーヒーが本当に美味しくて。でも地上に降りてくると、そこまでではないんですよね。あれは何だったんだろう?と考えるうちに、標高で沸点が変わること、使った道具に起因していることに思い至るわけです」。一度気になったら研究を重ねずにはいられない性分は、メニュー開発にも及びます。「スープカレーを出そうと思った時は札幌に1週間滞在して50軒ほどスープカレーを食べ歩きました。先日はクラフトビールの醸造を学ぶため岩手まで。スタッフにはよく、『また社長は思いつきでどこかへ行って』って言われるんですけどね(笑)」。そんな日光珈琲のスタッフは半分が県外出身。栃木に面白い業態のカフェがあると聞きつけ、近県からこの地に移住してくるそうです。
鹿沼の豚、地野菜、地元の蕎麦粉を使った「さつきポークの具だくさんガレット」ドリンクセット1,600円。
今年11月、風間氏の新たな挑戦が始まります。「ありがたいことにお話をいただいて、日光に2軒ほどお店を出す予定です。そのひとつが甘味とお茶のお店。コーヒーをやっている人間からみた日本茶ということで、ブレンドも考えてみたいですね。違う分野のものが合わさった時にどんな化学反応が起きるかと考えるとワクワクします」順風満帆にみえる風間さんですが、全てが成功しているわけではないとおっしゃいます。「実は昨年、京都にお店を出す話があったんですけど、最終的にまとまらなかったんです。これはまだまだ地元の掘り下げが足りないということなのかなと。自分が出来る範囲は限られていますし、全てが叶う場所も存在しない。だったら僕が作るカフェが、人と場所を繋げるコネクターとして機能すればいいのかなと思っています」


(supported by 東武鉄道)
「特製スープカレー」1600円。ドリンクとのセットは1950円。
クリームチーズのアイスを添えた「キャラメルシフォン」ドリンク付きで1080円。
地元のフルーツを使った「果実のタルト」ドリンク付きで1080円。この日はりんご。
日光連山が描かれた「リキッドアイスコーヒー」850円。側面を繋ぎ合わせると風景が浮かび上がる。
エチオピアのイリガチャフ地区のものなど焙煎した豆の販売も行っている。
「この後はかき氷用の氷を仲間たちと切り出しに行くんです」と風間氏。

日光珈琲 玉藻小路

栃木県 日光市今市754 MAP

0288-22-7242

11:30〜20:00(LO./19:30)

月曜、第1.3火曜(祝日の際は翌日休み)


※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

「エリア/ジャンル」の関連投稿写真