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部屋名の由来は縄文の言葉。コンセプトの異なる全6室にはそれぞれリピーターが。[ホテルキーフォレスト北杜/山梨県北杜市] by ONESTORY

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部屋名の由来は縄文の言葉。コンセプトの異なる全6室にはそれぞれリピーターが。[ホテルキーフォレスト北杜/山梨県北杜市] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から山梨県北杜市の「ホテルキーフォレスト北杜」を紹介します。
建物の裏側は、自然の中に溶け込んでいるかのような雰囲気
中央自動車道の小淵沢インターを降りて、クルマで5分ほどの距離にそのホテルはあります。東京からクルマや電車でも2時間あまり。これまで紹介してきたホテルの中でも、アクセスのしやすさが抜群に便利なロケーションであることは間違いありません。小淵沢から清里方面に抜ける幹線道路に面するこの奇抜な建物を見て、ホテルだと思う人はあまりいないかもしれません。「ここはどんな施設なんですか?」と、わざわざ立ち寄ってたずねる人も多いのだそうです。
看板はあるものの、どんな施設かわからずに立ち寄る人も多い
その名は『ホテルキーフォレスト北杜』。小淵沢アートヴィレッジと総称される複合施設の迎賓館的存在として2015年に開業されました。広大な敷地を誇るホテルの隣には『中村キース・ヘリング美術館』という、世界でも類を見ないアメリカの現代アートを代表する人物のプライベートミュージアムもあります。館長の中村和男氏は、キース・ヘリング作品の世界的なコレクターとしても知られる実業家です。中村氏は、生まれ育った山梨県への恩返しという意味も込めて、一代で小淵沢アートヴィレッジを作り上げてきました。
屋上テラスから八ヶ岳・清里方面の景色。天気の良い日は夜景も素晴らしい
その情熱は、『ホテルキーフォレスト北杜』にも余すところなく注がれています。このホテルを設計したのは、現代日本を代表する建築家のひとりである北川原 温氏。デザインのコンセプトは、大自然とアートとの調和。山梨県一帯は、縄文時代中期には日本の中心として栄えていたのだそうです。縄文時代の土偶の1割以上が山梨県から出土しており、国宝に指定された5体のうち2体が山梨県で発見されたことからもその歴史がうかがえます。中村氏と北川原氏の二人三脚で生み出された建築物のデザインは、縄文文化からインスパイアされたものだといいます。豊かな自然の中に不思議と調和しているコンクリート造りのホテルの魅力をたっぷりとお伝えしたいと思います。

部屋でのんびり過ごすという何よりの贅沢をもたらす落ち着いた空間

部屋でのんびり過ごすという何よりの贅沢をもたらす落ち着いた空間 「HANI」はツインベッドルーム。より温かみを感じられる木材を使用している
「何もせずに、部屋でのんびり過ごされる方が多いんですよ」と教えてくれたのは、2019年の4月1日から『ホテルキーフォレスト北杜』の支配人に就任した原 誉喜氏です。「アクティビティとしてゴルフや乗馬もできるんですが、それをあえてしない方の多くがリピーターになってくださいます。今日はどこかに行かれるご予定はありますか?とお声がけしても、『いいえ、部屋でゆっくりしようと思います』という答えが返ってくることが多いですね」と原氏。

このホテルが開業したのは2015年のこと。その背景には、2007年に先立ってオープンしていた『中村キース・ヘリング美術館』があります。
フロントの右手が「中村ウィスキーサルーン」の入り口。宿泊客のみが立ち入りを許される
「キース・ヘリングをフィーチャーした世界で唯一の美術館だけに、世界中からファンが来てくれました。日本でも東京を中心に遠方からいらっしゃる方が多いので、その方たちを同じ世界観でもてなす場所が必要だということで、ホテルを造ったのです。ホテルのゲストは滞在中無料で美術館に入館できますから、ホテルと美術館の往復だけで過ごされる方もいらっしゃいますよ」と原氏は続けます。その目論見は当たったようです。開業4年で多くのリピーターが訪れてくれるようになりました。アートラバーだけでなく、施設そのものの魅力に惹きつけられている人も多いようです。「アートと自然の中に自分の身を置いて、自分自身を取り戻して頂きたいです」と、原氏は微笑みます。

台形の窓は、全て形が異なる造り、コンクリートと木の壁と床が落ち着きのある空間を演出

台形の窓は、全て形が異なる造り、コンクリートと木の壁と床が落ち着きのある空間を演出 台形をベースに全てサイズが異なるガラスと大理石を組み合わせた窓がこのホテルの個性を物語る
多くのリピーターを惹きつける理由は、やはり建築物としてのホテルの魅力なのだと思います。建物の設計は『中村キース・ヘリング美術館』と同様に、日本を代表する建築家のひとり・北川原 温氏が担当しました。『ホテルキーフォレスト北杜』の建築コンセプトは、相対する様々な要素を巧みなバランスで融合することでした。より具体的に言えば、「建築と自然」「現代と原始」「和と洋」という一見対立する概念です。アヴァンギャルドな設計でありながら、周囲の豊かな自然と違和感なくコントラストを生み出すように計算されています。
メッシュ状のソファとチェアは、陽の光を受けた時のスケルトン効果が楽しめる
人工物であるコンクリートと、自然素材の代表ともいえる石や木材が絶妙なバランスで両立しているのです。未来的なモダン建築でありながら、どこかプリミティブな生命力を感じさせる建物なのです。細部を見ても、和紙などの伝統的な素材や、日本的な工法が取り入れられていますし、世界中から選りすぐった輸入家具と、窓の外に広がる八ヶ岳南麓の自然がマリアージュして、独自の世界観をつくり上げているのです。
「UOSE」と名づけられた部屋は、太陽の光がたっぷりと降り注ぐダブルベッドの部屋
6つの客室は、太古の時代に縄文文化が栄えた小淵沢の地に敬意を払い、大和言葉の起源で、縄文時代に使われていた言葉とされる、ヲシテ文献から名づけられています。例えば「UOSE(うおせ)」は太陽を表します。「HANI(はに)」は植物を表すそうです。部屋ごとに、調度品や照明も異なっています。パジャマには肌触りの良い麻素材が使われていますし、ヨガマットも常備されており、リピーターたちが愛する「何もしない1日」をさり気なくサポートしてくれるグッズが備えつけられています。
広いテラスで、昼寝を楽しむかそれとも朝食を楽しむか
エントランスの反対側には、大きめに取られたテラスがあります。食事をした後に部屋に戻り、デッキチェアに寝転がりながらまどろめば、至福の時間が訪れることでしょう。夏場はリクエストをすればテラスで食事をとることもできるそうです。

取材した時期は梅雨の真っ最中で、残念ながら星空を拝むことはできませんでしたが、天気が良ければ屋上のテラスから天の川を眺めることもできます。日本酒をベースに開発されたオリジナルの「ぼけ酒 金精」のカクテルも頂けます。9月から2月くらいまでが天体観測には絶好の時期だそうです。

温泉好きに至福の時を約束する、贅沢な貸し切りスパのご馳走は星空

温泉好きに至福の時を約束する、贅沢な貸し切りスパのご馳走は星空 シースルーのバスルームを併設。温泉に浸からなくても、森林浴気分でリラックス可能
部屋で落ち着いてのんびり過ごしたり、美術館でキース・ヘリングのアートに浸ったりした後は、素晴らしい温泉が待っています。今回の取材で一番感銘を受けたのが、このお風呂でした。スパは貸し切りで、15時から22時まで60分刻みで7つの枠が取られています。宿泊が決まったお客さんが、お風呂の時間をあらかじめ指定してくることも多いそうです。
テルから歩いて5分ほどにある、スパ。1日7枠60分間の貸し切りで、のんびりと浸かることができる
ホテルを出て、美術館との間の谷を歩くこと5分。暗闇の中にお風呂が現れます。施錠解錠を済ませれば、後はふたり(あるいは家族の)の自由な時間が始まります。初めて足を踏み入れると、その広さに驚くでしょう。これほどのスペースを独占できることに、思わず笑みがこぼれるかもしれません。うぐいす色に濁った温泉は、塩化物泉です。少し口に含めば塩分を感じるお湯は、トロリとしていて、いかにも身体に良さそうです。星を眺めながら、湯船の端に腰かければ、時折聞こえてくる鳥や鹿の鳴き声をBGMにしているうちに、60分はあっという間に過ぎてしまうでしょう。
敷地内から湧き出した源泉掛け流しの塩化物泉。うぐいす色に濁ったお湯
もし、温泉が気に入れば、前述の時間帯以外でも空いていれば対応してくれるそうなので、アーティスティックなホテルに滞在しながら「湯治」気分まで味わえるお得な場所になるでしょう。後ひとつだけご注意頂きたいことがありました。湯船が想像以上に深めに造られているので、身長によっては頭までお湯に浸かってしまったり、つんのめって水没する危険があるそうです。

ホテルキーフォレスト北杜(ホテルキーフォレストホクト)

山梨県 山梨県北杜市小淵沢町10248-16 MAP

0551-36-8755


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