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今週末に観たい♪ 賞レースを賑わす、監督のこだわりがすごい海外映画3選

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今週末に観たい♪ 賞レースを賑わす、監督のこだわりがすごい海外映画3選
コロナ禍により今年は例年より少し遅れて3月~4月が映画界の賞レース期間となっています。その大トリを飾るのが4月26日(日本時間)に米ロサンゼルスで開催される第93回アカデミー賞授賞式。昨年は『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)がアジア映画として、また外国語で制作された映画として初めて作品賞を受賞して話題を集めました。はたして今年はどんな結果となるのか? 第93回アカデミー賞にノミネートされ、これまでの賞レースを賑わしている作品が日本でもついに公開になります。

圧巻の映像美とリアルな語りで、現代のアメリカの問題を映し出す『ノマドランド』

圧巻の映像美とリアルな語りで、現代のアメリカの問題を映し出す『ノマドランド』 ©2020 20th Century Studios. All rights reserved.
【あらすじ】
日本では馴染みの薄い言葉「ノマド」は、もともと定住しない遊牧民のことを指します。本作はノンフィクション本「ノマド 漂流する高齢者たち」を原作に、リーマンショックの影響で家どころか住んでいた町そのものを失い、車上生活を送りながら仕事のある場所へと季節ごとに移動する60代の女性の生きざまを描いた、現代の「ノマド」と呼ばれる人たちの物語。撮影はアメリカのサウスダコタ州、ネブラスカ州、ネバダ州など5州に渡って行われました。
【おすすめポイント】
中国は北京出身のクロエ・ジャオ監督にとって今作は長編3作目となりますが、彼女は素人を役者のように映し出すスタイルで知られています。今作に登場するノマドの人たちも、主演のフランシス・マクドーマンドとほか数名以外はすべて、実際に車上生活を行っている実在するノマドの人たち。その半ドキュメンタリー的手法が物語に説得力とリアリティを生んでいるのです。圧倒的に高齢者が多い彼らですが、車上生活を送る理由はもちろん人それぞれ。それは究極の自由かつサステナブルな生き方であり、一方で孤独で過酷な闘いでもある。そんな彼らの生活を、アメリカの広大で美しい自然が見守ります。

第77回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第78回ゴールデングローブ賞で作品賞など、主要映画祭の最高賞を総ナメにし、今年の第93回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞を始め6部門でノミネートされている話題作です。
【映画情報】
『ノマドランド』
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイほか
3月26日全国公開
公式サイト:https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html/

これはすべての人の物語。国境なき映画『ミナリ』が説く夢と希望と家族の在り方

これはすべての人の物語。国境なき映画『ミナリ』が説く夢と希望と家族の在り方 ©2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.
【あらすじ】
1980年代、農業で成功をして一旗揚げようと、アメリカ南部のアーカンソー州に移住した韓国人一家。父ジェイコブは、二人の子どもたちのためにもより良い生活をしたいと、妻とともに最低賃金のバイトをしながら畑仕事に勤しみます。そこに韓国から破天荒な祖母も加わり、独特の絆を結びながら夢を追いかけますが、畑は干上がり、夫婦はケンカばかり。さらに予想もしていなかった出来事が一家を襲います。
【おすすめポイント】
ゆったりと流れる静かな物語ですが、生き生きとした子どもたちと一風変わったおばあちゃんとの微笑ましいシーンなどを盛りこみながら、誰もが共感できる物語に仕上がっている本作。最後には感動がさざ波のようにじわじわと押しよせてきます。韓国系移民2世としてアメリカで生まれ育ったリー・アイザック・チョン監督の個人的体験を元に、夢、家族、生きることといったテーマを通して本当に大切なのは何かを問いかけます。

父親のジェイコブ役を演じるスティーヴン・ユァンはTVドラマ「ウォーキング・デッド」シリーズや『バーニング 劇場版』(18)でもおなじみの俳優ですが、今作でアジア系男性として初めて第93回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。また、祖母のスンジャ役のユン・ヨジョンは韓国人女性として初めて助演女優賞にノミネート。期待が高まります。タイトルになっている「ミナリ」は韓国語で「芹(セリ)」という意味ですが、物語ではこの「ミナリ」が象徴的に使われている点にも注目してください。
【映画情報】
『ミナリ』
監督:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョンほか
全国公開中
公式サイト: https://gaga.ne.jp/minari/

構想から約30年の時を経て現代に放たれた『Mank マンク』

構想から約30年の時を経て現代に放たれた『Mank マンク』
©NETFLIX
【あらすじ】
映画史上最高傑作と表現されるのが1941年にオーソン・ウェルズが監督・製作・主演をした『市民ケーン』です。今ではよく見かける主人公の死から物語が始まり、過去にさかのぼっていくという語り口ですが、実はこのスタイルを始めて採用したのが『市民ケーン』。斬新な撮影手法を取り入れた画期的な作品でした。『Mank マンク』はこの『市民ケーン』の脚本家としてアカデミー賞脚本賞を受賞したハーマン・J・マンキーウィッツ、通称「マンク(ゲイリー・オールドマン)」を主人公に『市民ケーン』の誕生過程をまったく新しい視点で描いた作品です。制作元でもあるNetflixで独占配信されているので、自宅で視聴可能です。
【おすすめポイント】
デヴィッド・フィンチャー監督の6年ぶりの新作となる今作は、主人公マンクが脚本を執筆している1940年代と、彼が回想する1930年代のシーンが頻繁に交錯しながら展開する上に情報量も多いので、難解な印象を受ける人もいるでしょう。しかし、このフラッシュバック(回想)という技法を効果的に使った最初の作品こそが『市民ケーン』であったため、フィンチャー監督もあえてこのスタイルをとっているのです。さらに、フィンチャー監督は1930~1940年代当時の雰囲気をできるだけ忠実に伝えるため、モノクロ映像とモノラル放送(1つのマイクで録音し、1つのスピーカーで再生する)で撮影を行うなど、ディテールにも徹底してこだわっています。本作の脚本を手がけているのは2003年に亡くなったフィンチャー監督の父ですが、彼が初めて脚本に着手したのは約30年前。ところが、生前は意欲作すぎると多くのスタジオにそっぽを向かれました。2020年にようやく息子が映画化に成功し、父の果たせなかった夢をかなえたのです。

本作は第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、さらにゲイリー・オールドマンの主演男優賞、アマンダ・セイフライドの助演女優賞など最多10部門にノミネートされています。不朽の名作『市民ケーン』と一緒に観たい、映画史を知る上でも貴重な作品です。


【映画情報】
『Mank マンク』
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、リリー・コリンズほか
Netflixで独占配信中
公式サイト: https://mank-movie.com/
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今年のアカデミー賞はアジア系監督や俳優の活躍が目立つノミネーションになっているので、それだけでもワクワクしますよね。ほかにもプロデューサーが全員黒人という『ジュダス・アンド・ザ・ブラック・メシア(原題)』が作品賞候補に選ばれるなど、史上初がいっぱい。授賞式が楽しみです。
♦︎PROFILE♦︎
カルチャーライター 柴﨑里絵子
ファッション誌、カルチャー誌の編集を経てフリーに。幼少期&学生時代をNYで過ごす。映画人やデザイナーなどのインタビューを中心に、レビューなど幅広く執筆。特に好きな映画のジャンルはミュージカルとベニチオ・デル・トロが出演している作品すべて。お家時間が増えたこの1年は韓国発のドラマにもどっぷりハマっています。

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