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海からの光
#地図の読めないおやつ旅 #旅行記 #おやつ探し #瀬戸内海 #瀬戸大橋アンパンマントロッコ
 瀬戸内海。以前から、折に触れて思いを馳せる土地である。社会人になったばかりの頃、夕陽のきれいな海岸で、燃えるような茜空を見たり、しまなみ海道を自転車で走ったりした。ある時は、小さな島の人気のない海岸で、あまりにも透明な水に我慢ができず、服のまま泳いでしまい、車の影でこっそり着替えたりもした。また、30代半ばの仕事で悩んでいた時期には、海道沿いの売店でもらったお魚コロッケに慰められ、ホロリと涙ぐんだ覚えがある。
 近年、電車に乗ることが楽しいと意識し、車窓から瀬戸内海を眺めることに憧れていた。今回、ちょうど岡山で寝台列車を降りたため、その足で高松まで行き、折り返しで瀬戸大橋を渡るトロッコ列車に乗ることにした。
 このトロッコ列車、正式には瀬戸大橋アンパンマントロッコと言って、車内外にアンパンマンのキャラクターが描かれたもの。私の幼少期はまだアンパンマンが今ほどの覇権を握っておらず馴染みがないし、子どももいないので、せっかくの特別仕様もたいしてありがたみはない。当日はちびっこがたくさんの賑やかな道中が予想され、私同様にアンパンマンには縁がなさそうなアダルトがどれくらい乗っているものか逆に興味が湧いてしまう。
 高松駅でアンパンマントロッコに乗り込むと、小さな子を連れた家族連れが続々と乗って来る。みんなアンパンマンの装飾に大はしゃぎだが、私にはいまいちピンと来ない。この列車一の異質な存在だろう。ともするうちに「アンパンマンのマーチ」が流れ、ホームでは駅員さんによる旗を振ってのお見送りが始まった。
 完全なるアウェー感に肩身は狭くなるものの、私の目当ては瀬戸内海。坂出から児島駅間はトロッコ車両に乗り換える。暖かな日差しと、開放された窓からの風はさわやかで心地よい。瀬戸大橋に差し掛かると、風はいっそう強く当たり、乱れる髪を絶えず掻き上げた。海は藍をぼかしたような色合いで、行き交う船の白い航跡が美しい。遠くに見える小さな島々は柔らかな光に霞んで見える。車窓の風景を眺めていると、海へ降り立ちたく思った。
 私が瀬戸内地方を訪れる際は、いつも曇りなく晴れていて、太陽がもたらす自然の恵みを存分に味わっている。今日、またしても、秋日和の穏やかな日に訪れることができ、贅沢なひとときを過ごすことができた。

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