2024.4.10
地域創生、情緒的価値の提供を目指す商品企画コンセプトと合致。三菱食品×ことりっぷコラボサワー
商品企画者に誕生秘話をお聞きしました
2024年3月26日発売の和歌山「じゃばら」サワー
三菱食品の「J-CRAFT」ブランドから、2023年に新たに立ち上がった「J-CRAFT TRIP」は、国産果汁を使用した低アルコールチューハイ。青森の「王林」、京都の「水尾ゆず」、宮崎の「日向夏(ひゅうがなつ)」が発売され、2024年3月26日には、和歌山の「じゃばら」が新登場します。ことりっぷとコラボレーションした缶デザインが好評で、『ことりっぷマガジン』でも特集をしています。その取り組みの様子をご紹介します。
日本各地の果汁の魅力を伝える「J-CRAFT TRIP」
三菱食品 国内商品開発本部 商品企画第一グループ Bユニット 主任 篠原安沙世さん
―今回ことりっぷとタイアップをさせていただいた「J-CRAFT TRIP」は、三菱食品様が手がけているJ-CRAFTというブランドの中の新たな製品展開と伺っています。まずはJ-CRAFTブランドについて教えてください。 J-CRAFTは、弊社オリジナルのお酒のブランドです。「日本の達人が丁寧に作ったおいしさを全国に届ける」というコンセプトの元、2016年から国産クラフトビールや日本ワインなどを展開しています。弊社は食品の卸会社として全国にお取引をしている会社があるのですが、日本中にお酒の達人と呼ばれる方がたくさんいらっしゃって、その方たちが作り出す本当においしいものを世の中に広めていきたいと考えたのが始まりです。
日本の産地や日本の職人にこだわりつくられた「J-CRAFT」のワインやビール
―その中で、「J-CRAFT TRIP」という新製品を企画された背景や経緯などを教えていただけますか。 2022年にJ-CRAFTブランドで新製品を作ろうという話しが持ち上がった時に、弊社全体のパーパスとして掲げている「地域活性」や「地域創生」に繋がる取り組みをしていこうと企画しました。それが、国産果汁を使用した新たなJ-CRAFTシリーズを作ろうというものだったのです。 その頃の市場背景にコロナ禍があり、家飲みなどの需要が高まる傾向が見られ、アルコールの楽しみ方がより多様性のあるものになっていました。一方で、飲み過ぎの懸念や健康配慮の観点から、低アルコールチューハイの需要が非常に高まっているという市場環境でした。
他方、コロナ禍が続き外出もしにくく、旅行にも行けないという閉塞感の中で旅行欲が高まってきていました。とはいえ海外旅行は難しいこともあり日本回帰の傾向となっていて、人々は国内の魅力に目を向け始めているんじゃないか、という仮説を立てました。そして、その市場背景と生活者の方たちの心の揺らぎを踏まえ、日本各地で育った果汁原料を使用して、各地の果汁の魅力を伝えたい。ただおいしいだけではなく、その土地の魅力を伝えて旅したくなるような気持ちを喚起したかったのです。 元々弊社のオリジナル製品は、ただ食べておいしいとか、飲んで楽しいだけでなくて、今の時代に求められている生活者の需要とかニーズを鑑みた上で、商品作りをするというところが基本コンセプトで、それが「J-CRAFT TRIP」にも繋がっています。
製品コンセプトの「旅したくなるチューハイ」がことりっぷの考え方に合致
―「J-CRAFT TRIP」で、ことりっぷとコラボレーションしようと思っていただいた理由をお聞かせください。 今回「J-CRAFT TRIP」は、低アルコールチューハイということをキーにしていました。低アルコールチューハイのメインターゲット層から、ユーザーは20~40代の女性と定めたのですが、その方々に「J-CRAFT TRIP」というブランドの意図を、どうお伝えするのが良いかを考えました。「旅したくなるチューハイ」がコンセプトだったので、それをお伝えする手段として、旅行ガイドブックとのコラボレーションを考えたのです。 ことりっぷさんの読者層がブランドのメインターゲットと同じであったこと、また女性をターゲットにした各種食品とのコラボレーション実績があったことにプラスして、ことりっぷさんが掲げる「旅する人に小さな幸せをお届けします」というキャッチフレーズに共感できたからです。私たちにも、弊社の商品を飲んでいただいたときに、ほっこりした気持ちになって幸せを感じてもらいたいという思いがあるので。それに、同じ部署の担当者が大のことりっぷファンだったこともひとつのきっかけです。
―ことりっぷにお問い合わせをいただいたタイミングは、企画がどの程度進んだ段階でしたでしょうか。 ご連絡をしたのは、2022年の秋頃だったと思います。それから販売まで約1年間準備をしました。普段ことりっぷを読む機会が少ない方々に、ことりっぷの良さを伝えるのに少し苦労しました(笑)。みんなでディスカッションをしたり、ことりっぷの市場認知率のアンケート調査なども行って、上司を説得した記憶がありました。
クラフト感があり、自然な甘さの低アルコール飲料を目指す
―「J-CRAFT TRIP」は、2023年10月に第1弾として「王林」と「水尾ゆず」テイストの2種類を発売、その後、2024年1月に第2弾の「日向夏」、3月に「じゃばら」を発売されました。そこに至るまでの、ご苦労や想いを教えてください。 果汁の選定には苦労がありました。1年間で4テイストを発売するという事業計画を立てていたので、季節性を考えながら販売量に見合った果汁原料を確保しなければなりません。ターゲット層をぶらさず、コンセプトもしっかり定めた上で、味わいと甘さのバランスなどを決める時も調整の苦労がありました。「J-CRAFT TRIP」は、飲んだときのクラフト感、自然な甘さを意識しました。 生産者の方たちは、本当に真摯にものづくりに取り組んでいらっしゃいますが、チューハイに使われる果汁量は莫大な量ではないので、農家さんへの還元が製品自体ではあまりできないのです。だからこそ、生活者の方たちに原料を知っていただいて、食べていただき、良さを知ってもらって実際に足を運んでいただくとか、そういうことでも還元できるようにすることも、大切なんだと思っています。
旅の要素や果汁感が詰まったパッケージデザイン
―パッケージデザインにも、とてもこだわられていました。弊社とも何度も打ち合わせをしていただき、お互いで意見を出し合って、最後には全員が納得する素敵な缶のデザインになったと思っていますが、その過程はいかがでしたか。 最初から、ことりっぷの表紙柄を使用させてもらいたいという気持ちがありました。でも、同じ柄で表現させてもらったとしても売り場に並んだときに、「J-CRAFT TRIP」の新しいブランドで、どういう商品なのかが訴求できない。ことりっぷとコラボレーションしていますよ、というところも含めて伝えるには、どう表現するか悩みました。他社のチューハイもたくさん並ぶ売り場の中で、この商品が目立たなくてはいけないし、中には王林というリンゴの種類をご存知ない方もいらっしゃるので、それが青森で収穫できることも含め、情報のバランスが難しかったです。
―旅の要素も入れたいというご要望があり、エリアを代表する風景を探してご提案するなど、私たちもパッケージデザインに参加させていただけて、とても興味深かったです。 既存商品との差別化のためにも、ことりっぷとコラボしているなら旅行ガイドブック感を出したいっていうのがすごく強くて、双方でかなり話し合いましたよね。缶の製造会社にも協力してもらい、ことりっぷのみなさんにも製造会社さんに同行いただき、色の表現について学ぶところから! デザイナーにも、ことりっぷのブランドの良さや特徴を共有して、理想の形を具現化してもらいました。 私たちが大切にしている果汁の部分の表現もしっかりと打ち出しながら、旅感を出す表現として、そのエリアを代表するスポットのイラストや、ことりっぷの旅メモが入って、両方の要素がすごいうまくいっているなって思いました。
雑誌で伝わる情報発信量の多さが魅力。デザインと製品イメージがマッチ
―今回、じゃばらの産地のほかにも、王林、水尾ゆず、日向夏の生産者や産地に訪問されているとお伺いしています。実際、農家さんや産地に行かれて、どのような感想をお持ちでしたか。 じゃばらって和歌山県北山村でしか取れず、その幻の果実を北山村の方々が一生懸命に育ててアピールしていらっしゃるストーリーすべてが、じゃばら商品の魅力です。インタビューを通してじゃばらを栽培された歴史や、じゃばらの活用法など、さまざまな知識を得ることができました。 ―取材をした内容が『ことりっぷマガジン』に掲載された感想を教えてください。 本来、私たちとお客さまは、小売店様に並んだ製品を手に取っていただくところが接点なんです。私たちが伝えたいことって、たくさんあって、それを伝える手段として製品リリースを使ったりSNSで発信しますが、今回雑誌になったのを見て、情報発信量って本当に大きく違うなって実感しました。 ストーリーをしっかり雑誌で伝えていただけたことが今までにない取り組みですし、私たちが目指している「情緒的価値」にあったものだと思いました。
―前回の日向夏サワーの発売時にも、商品の紹介記事を『ことりっぷマガジン』に掲載いただいています。 日向夏(ひゅうがなつ)での掲載が『ことりっぷマガジン』初登場で、「J-CRAFT TRIP」の特長を含めて、しっかりお伝えしていただけたと思っています。うれしかったのは、そのあとのページに日向夏のふるさと・宮崎県の記事を組んでいただいて、私たちが伝えたかった、「これを飲んで宮崎に行ってほしい」っていうことを広めていただきました。ページデザインもすごくかわいかったです。
―私たち編集部のスタッフが試飲会をさせていただきました。私たちも初めての味に触れられるっていう楽しさや、御社の思いを直接伺うことができ、うれしかったです。今度は読者の方たちの試飲会もあります。 ことりっぷのみなさんと行った試飲会は、とても楽しかったです。私たちも最終的には、この製品から果汁が取れる地域の良さを知ってもらって、飲んだ方がその地域に足を運んでもらえることがゴールなんです。だから、目指しているゴールがことりっぷさんと同じなのがとてもうれしいです。読者の方の試飲会も楽しみにしています。
お客さまからの「おいしい!」や、今後の展開への期待の声に感動
―ことりっぷとのタイアップについて、お客さま、小売店からの反響はいかがでしたか。 お客さまから、非常にご好評をいただいています。弊社のお客様相談室に直接お電話をいただく件数も多いです。「すごくおいしかったので、もっといろんなテイストを展開してほしい」などの声をいただき、とてもうれしかったです。SNSを見ていても、飲んだ人たちが「おいしい」と書き込んでくれて。小売店様からは、「お客さまからの評判がいいですよ」というお声や、「九州フェア」といった地域を重視したフェアにもお声をかけてもらうなど、新しい動きもあります。 ―味に対する評価が高いのですね。本当に私たちもうれしいです。ちなみに今回ターゲットとされていた20~40代女性の方々に製品は届いていますか。 ある小売店様の購買履歴から、その年代の方々にしっかり買っていただいていることがわかりました。低アルコールチューハイは、メインターゲットとなる20~40代の中でも、比較的40代女性の購買率が低いのですが、「J-CRAFT TRIP」はその世代の販売実績が高くて、それを聞いたときに、40代女性の方の支持が高いのは、長年女性に愛されていることりっぷと組んだ効果があったのだと実感しました。
ことりっぷと「J-CRAFT TRIP」のコラボ旅行を実施してみたい!
和歌山県北山村のじゃばら農家さん
―今後、ことりっぷにご要望はありますか。 そうですね、製品化や、製品を盛り上げるというところで引き続きご協力いただきたいなと思っています。いろいろ旅のプロの方とお話をさせていただいたことが、私たちもすごく楽しかったので、その楽しさをさらに生活者の方たちに広げていきたいです。そういったことを発信していくことも一緒にできたらと思います。 ―今後の展望をお教えいただけますか。 今後も、新しいテイストを出していきたいと思っています。 ほかにも、この「J-CRAFT TRIP」=旅したくなるチューハイで、一緒にその産地に行かれるようなアプローチまで、できればと考えています。例えば旅行代理店と協力して、「ことりっぷとJ-CRAFT TRIPサワーの産地をめぐる旅」が一緒にできればいいなと。発展性が見いだせたことがうれしくて、あくまで夢ですが、そんな展開も描いています。 ―私たちも、ぜひ、ご協力させてください。「ことりっぷとJ-CRAFT TRIPサワーの産地をめぐる旅」いいですね。これからもよろしくお願いします。
独特の苦味があるじゃばらの果実
今回お話をお伺いしたのは、三菱食品の商品企画を担当している2名 (写真右) 三菱食品株式会社 国内商品開発本部 商品企画第一グループ Bユニット ユニットリーダー 外薗樹里(ほかぞのじゅり)さん (写真左) 三菱食品株式会社 国内商品開発本部 商品企画第一グループ Bユニット 主任 篠原安沙世(しのはらあさよ)さん
浅子百合(クレッシェント)、写真:清水ちえみ