KYOTO〜for the first time in a year #地図の読めないおやつ旅　#旅行記　#おやつ探し　#京都　#南座　#南座で歌舞伎　#エースホテル京都 #鴨川　#つくもうどん 　思い起こすと約1年新幹線に乗ってない。コロナ禍で度々利用したJR東海ツアーズも、リニューアルに伴い旧システム上のポイントが3月末で失効してしまうので、2月も終わる頃、急遽京都への日帰りツアーを予約することにした。 　新幹線のみならず京都とも1年近くご無沙汰しているが、今や外国人旅行客で賑わい、お寺や神社はどこも人で溢れていると聞く。また、月曜日のため岡崎にある京セラ美術館や国立近代美術館も休みだ。「京都に行くことにしたはいいが、さて何をしよう？」と考え、南座で花形歌舞伎が上演されていることを思い出した。試しに松竹のサイトを見ると、1階2列目中央の席がひとつだけポッカリ空いている。こういう残りものは「福席」だし、演目も近松門左衛門の「心中天網島」で、山内マリコさんの小説「あの子は貴族」でも触れられていて以前から興味があったので、少し迷ったが思い切って購入した。尾上右近さんや中村隼人さんら当代人気の面々が出演されるので、それはそれで楽しみだ。 　ツアーに申し込みしてから当日まで5日ほどしかなかったが、無事切符も受け取り、旅の準備は万端だ。久しぶりに新幹線に乗るし、振替不可の切符なので、気合いを入れて早く家を出たところ、新幹線乗り場の改札前に東京駅に着いてしまい、銀の鈴近くのベンチでしばらく待つこととなった。お昼はデパ地下でお弁当を買って劇場内で食べるつもりで、高島屋や大丸のホームページを予習していたが、せっかくの京都での食事をお弁当で済ませてしまうのはもったいなく感じ、終演後にきちんとお店で食べようとレストランの予約サイトを覗いた。しかし予約できるのが14時半以降なうえ、当日ともなるとめぼしい店はなかったが、運良く烏丸御池にあるエースホテル京都のアフタヌーンティーに空きがあった。ニューヨークにもあるオシャレなホテルとして2010年代半ばの「CASA BRUTAS」によく特集されており、その名は聞いたことがあった。南座近辺なら飛び込みで入れる店もあるだろうが、ランチの時間は過ぎてもお茶の時間でまた混雑することが予想されたし、こちらのホテル自体にも興味があったので、予約することにした。 　こうして京都に行くのに、寺社も拝観せず、買い物の時間もさほどないプランが出来上がったが、すっかりコロナ前の賑わいを取り戻した京都ではこれくらいしないと待ち時間と混雑のストレスから逃れられない気がした。 　9時に京都駅に降り立ち、駅構内を歩いたが、桜の開花前の平日だからか、思っていたほどごった返している感じはしない。まずは地下鉄烏丸線乗り場近くにあるつくもうどんで早めのお昼だ。以前帰り掛けにサクッと寄っただけだが、一見どこにもありそうなうどんスタンドなのに、麺はシコシコ腰があるし、お出汁も美味しくて、今回久しぶりの京都で是非食べたかった。前回同様とり天とぶっかけうどんを注文したが、東京の他の店では物足りない甘じょっぱいお出汁がやはり美味い。 　食後、お約束のプレスバターサンド抹茶味をゲットしてから、南座まで鴨川の遊歩道を歩くことにした。京都に来て、鴨川を眺めるとホッとするのは変わらず、七条大橋から四条大橋まで30分近くの道のりも飽きなかった。 　開場時刻となり南座に入ると、歌舞伎座よりはこじんまりしているものの、天井のシャンデリアやバルコニーの装飾が洋風で格式を感じた。春という季節柄と京都という土地柄が相まって両隣の客は着物を着ている。演目の前に口上があり、中村隼人さんが登場したが、写真撮影タイムがあるのにびっくりした。SNSでの拡散のためだろうが、スマホを一旦出させてまた仕舞う際に、電源をオフにするよう促す効果も兼ねている。 　いよいよ本日のメインイベント、「心中天網島」が始まった。心中を約束した妻子ある男と遊女、男の家族を巡る物語のうち「河庄」という場面を抜粋し、1時間以上にわたり演じるのだが、心中という重く深刻なテーマなのに、動きやセリフにコミカルな要素もあり、思わず声を上げて笑ってしまう。漫画やゲームを題材にした新作歌舞伎もそれなりの良さはあるのだろうけど、やはり古くから受け継がれている古典は無理がない感じがして見応えがある。 　観劇を終え、烏丸御池にあるエースホテル京都まで徒歩で向かった。四条通と烏丸通と大通りを歩いたが、バス停には列があるものの、歩きにくいとか店に入れないということもなく、清水寺周辺などの一部のエリアの混雑情報に踊らされていたことに気づいた。以前と同様、地下鉄1日券を利用して、観光客が集中するスポットを避けて行動すれば、何とかなる気がした。 　エースホテル京都は、新風館という前から気になっていた複合施設の中にあった。ホテルのエリアに入ると、ジャズと思しきサックスの音が聞こえ、ニューヨークっぽい。内装は「CASA BRUTAS」に特集されるだけあり、お手洗いのタイルが水玉だったり、エレベーターの壁面に木の格子がはめられているなど凝っていた。 　アフタヌーンティーはいちごがテーマで、コーヒーではなく、紅茶や日本茶、中国茶など数種類のお茶が飲み放題だ。スイーツは小ぶりで甘さ控えめ、適量で美味しく食べ切るのにちょうどいい。一番美味しかったのはサクラのフレーバーのドーナツで一足早く季節を感じられた。お茶は台湾の烏龍茶やジャスミン茶など中国茶を中心に飲んだが、ポットではなくカップでのサービスなので、お腹がパンパンにならずに飲み切れてよい。スタッフは若くスマートで、タイミングを見計らって次のお茶を尋ねてくれる。いわゆるラグジュアリーホテルのような煌びやかな雰囲気とは違うが、食器やBGMなどもスッキリ洗練されていて、とても落ち着く。 　久しぶりの京都。あまり京都らしいことはしていないけれど、京都駅のホームに降りた時のなんとも晴れやかな気持ちや鴨川べりでの軽い足取り。それだけで、変わらず京都が好きだと再確認できた。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ○信号を　待ちて足止め　胸深く 　吸い込む息の　美味きみやこ路 ○ 背中から　聞こえる川の　せせらぎに 　耳をやりつつ　前急ぐ足 ○そこここに　鴨泳ぎたる　川の辺に 　ふわり降り立つ　名も知らぬ鳥 ○川べりに　見ゆる町屋に　古きビル 　胸も高鳴る　四条は近し