続ハイキング日和
#地図の読めないおやつ旅 #旅行記 #おやつ探し #尾瀬
先日訪れた上高地がとても楽しかったので、またハイキングがしたく尾瀬に行くことを考えた。2年前東武鉄道の夜行列車を利用したが、車内で眠れず悶々とした記憶が鮮明で、別の行き方はないか検討していたところ、普段はスルーしている旅行会社からのメールマガジンに上越新幹線を使い日帰りするプランが載っていた。そこで、2週間先の天気予報を確認し申し込みをしてみた。
ツアーの行程は、東京から6時台の新幹線に乗ると8時前に上毛高原駅に着く。そこから2時間ほど路線バスに乗り尾瀬戸倉に行き、さらにシャトルバスに乗り換えて鳩待峠に辿り着く。そこからまたハイキングコースを3キロ歩くと尾瀬ヶ原に出る。
上毛高原駅で路線バスを待っていると日差しが強く、肌がヒリヒリする。バスの中にも陽が差し込んで来るので、日よけを下ろししのぐことにした。2時間の道中は市街地も走り、登山客だけでなく地元客の利用も多い。尾瀬戸倉に着くと9時57分で、10時の便に乗るべく走ってシャトルバス乗り場に向かい、急いで切符を買って乗り込むと同時にドアが閉まった。マイカーで来ている方々を乗せるため2か所ほど寄るとマイクロバスは満席になった。
10時半に鳩待峠に着いたが、帰りの新幹線の時間を考えると14時のシャトルバスに乗らないといけないため、あまりのんびりしていられず、足早にハイキングコースに向かった。最初は15分ほど下り道で、階段に大きめの石が敷き詰められており、つまずいたり、滑ったりしないか心配しながらスタートした。木道に入ると足場もよく、身体も慣れて来てペースが上がった。最初が下り道のため足元を見る目線は下になるので、周囲の景色をゆっくり眺める余裕がなかったが、鳥のさえずりや川の流れる音が耳に心地よく、平坦な道に出ると周囲が目に入るようになった。天気予報のとおり爽やかな快晴で、体感気温も暑過ぎず心地よかった。すれ違うと挨拶し合う習慣やご夫婦と思われる高齢ハイカーの存在に気持ちが温かくなりながら進むと40分ほどで尾瀬ヶ原の入口に着いた。
まだ11時半になる前だったがベンチに座り、持参したおにぎりを食べることにした。朝食が早かったし、運動をしたあとだったので、いつもより美味しく感じた。ネットで調べた情報では復路は1時間半掛かると書かれていたが、行きがスイスイ下れた分帰りはしんどそうだと予想が付いたため、14時のシャトルバスに乗るためにも12時15分には尾瀬ヶ原を発とうと考えた。
尾瀬ヶ原は湿原の先に山があるだけで360度視界が開けている。時期的に見頃は過ぎたようだが、水芭蕉がまだチラホラ見られた。個人的には濃い紫色のカキツバタの上を白い蝶々が飛んでいるコントラストが美しいと思った。また湿原の水の溜まったところに陽が差して、キラキラ光っているのが神秘的だった。尾瀬ヶ原に居たのは30分程度だが、天気がよく、目で見ても体感しても美しい自然を味わい、身体を動かす心地よい疲労感に、またしても「幸せ」だと感じた。明日になればまた仕事だし、バタバタと日常に戻ればこの余韻も1週間も持たずに消えてしまうのはわかっているけれど、「今、間違いなく、私は幸せなんだ」と改めて思った。
予定より早く尾瀬ヶ原を出ると、川上川の橋の近くに人が集まって何かを見ている。野次馬根性で参加すると、小さなバンビちゃんが1匹橋の下に隠れている。周りの人の話では「親からはぐれてしまったのだろう」、「お腹が空いているのではないか」とのことだった。リュックに入っているバームクーヘンのことが頭によぎったが、「これはあげちゃダメな奴だよな」と考えていると、案の定近くにいたツアーガイドが注意喚起していたので、後ろ髪を引かれつつ先に進むことにした。奈良公園や厳島神社の鹿はそれなりに管理されていそうだが、このバンビちゃんはまさしく野生の子で、観光地のようなイメージだった尾瀬もやはり大自然なのだと認識を改めた。
復路は基本的に登りであるが、コースの半分くらいまでは平坦だったり下りの部分もあってそこまでしんどくはない。最後の4分の1である800mほどは登りが続き、いよいよ試練の道だ。少し登っては立ち止まり、立ったまましばらく休憩してまた進むを繰り返した。喉が渇いてはいるが飲んでしまうと脱力しそうで飲むに飲めない。それでも「あと150mでゴール」との表示を見ると俄然やる気が出て、最後は勢いでフィニッシュした。あまりにしんどくて息が上がり、尾瀬ヶ原での多幸感もとっくに消えていたが、やり遂げた満足感ともう登らなくていい解放感で再び幸せになれた。