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2016.11.26
紙とはさみで広がる“よろこびのかたち”とは? 切り紙作家・矢口加奈子さんインタビュー
折り畳んだ紙を持ちながら、片方の手を動かしはさみを入れること数分。ぱっと華やかなかたちが目の前に現れる、切り紙の世界。オリジナルの切り紙を使ったアクセサリーやインテリア雑貨を手掛ける、今注目の切り紙作家・矢口加奈子さんに切り紙の魅力や作品への思いを伺いました。
切り紙の面白さとは一体なんでしょう?
切り紙柄のバッグなども手掛ける
大学在学中から切り紙を用いた作品を発表し、「歓 よろこびのかたち」をテーマに、切り紙を用いたプロダクトを制作している矢口さん。年に数回の個展や、企業への作品提供・国内外でのワークショップを行っています。2016年の春には、スマートフォンXperiaシリーズのCMに出演するなど、色々な分野で活躍されています。 矢口さんと切り紙の出会いは、空間デザインを学んでいた学生時代にさかのぼります。進路に迷いつつも、自作の切り紙に着想を得て、バッグやインテリア雑貨の展示を行ったのが今日にいたる活動の原点だそう。
矢口さんの工房にはこれまでに制作した切り紙がたくさん
そもそも、切り紙とはどういうものかを簡単に説明すると… 紙にはさみを入れ、出来上がったかたちを見て楽しむ。という、きわめてシンプルな作業なんです。とはいえ、紙の大きさに始まり、折り方・畳み方の違い、はさみを入れる角度などにより仕上がるかたちは多種多様。それらのかたちを元に色々な作品を作るのが、切り紙作家・矢口加奈子さんの仕事なんです。
実際に切り紙を行ってもらいました。
お話しながら、さくさく手を動かす矢口さん
100色もある折り紙の中から赤色を1枚選び、切り紙を作ってもらいました。矢口さんはてきぱきと紙を折り畳み、ハサミを入れて手を動かします。 「花の形なら、花びらいっぱいの仕上がりになるのが私の特徴かな。細かい柄を作る時は、間に切り込みをいれるなどの工夫もあるんですよ…」と良いながら切り紙を開くと、かわいらしくて華やかな、芍薬のようなお花のかたちがあっという間に完成!
革細工や型染め、刺繍など…色々な技法を用います

中:2015年、松井清さんとの2人展「ヒリーナ王国の休日」ポスター
アトリエには、型紙や過去の作品ポスター、バッグなどの試作品などがいくつも。真ん中の画像は、鳥のシルエットをベースに、ボディに柄違いの切り紙で模様を重ねたもの。鳥のかたちを同心円状に配置し、鳥のボディにはひとつづつ異なる切り紙模様を配置しているのが分りますか? オリジナルの切り紙をいくつも用い、ひとつの作品に仕上げるプロセスや、バッグやテキスタイルなど、様々なジャンルのプロダクト制作のほとんどを自身が手掛けているのも、矢口さんの仕事の面白いところ。
切り紙のテクニックでアクセサリーも
「ピアス(歓 よろこびのかたち)」(各5800円)
矢口さんが切る素材は紙だけではありません。切り紙を型紙として使用し、布やフェイクレザーなどの素材を用いれば、アクセサリーなどにも応用できます。 生地や糸の色、ステッチの扱い方次第で、バリエーションは様々。 「切り紙で作品を発表する方は他にもいるけれど…私は切り紙を軸にしながら、色々な展開をしたいの。他にはない、自分なりの世界を広げたいですね」 完成した1枚の切り紙にとらわれず、色々な素材や技法を組み合わせ、ひとつのプロダクトに仕立てるテクニックは、矢口さんならではの大きな魅力です。
11月29日まで表参道で個展を開催中

「パスケース(歓 よろこびのかたち)」(8000円)
思わず見入ってしまうような繊細な切り紙や、切り紙柄のグッズの数々。 11月10日~11月29日までの間、「トーキョーファンタスティック表参道」にて、これらの作品が並ぶ矢口さんの個展「 夕暮れの庭」が開催中です。 今回は、「夕暮れの庭」展で紹介する作品についても聞いてみました。 「今回は秋の展示なので、落ち葉の重なりを思い浮かべて、色の組み合わせと同じように、柄と柄の重なりでひとつのイメージが出来上がる感じかな」 パスケースに施された型染めも、よく見ると枝葉のような複数の模様の組み合わせですね。 「最近は、黒っぽい色に黒、グレーに黒を重ねるなどの、ダーク系の色の色づかいに興味があります。たとえば細かい黒縞のウール地にベージュの模様を重ねたり。コントラストを効かせるよりも、より深い重なりを強調するのが自分の中の流行りですね。」
「トーキョーファンタスティック表参道」はこちら
「夕暮れの庭」展には、バッグやテキスタイル、インテリア雑貨の取り扱いも豊富です
トーキョーファンタスティック表参道では、11月27日に「和紙のトレイ」と「ふろしき」作りのワークショップも行われます。ワークショップの面白さについては、 「たとえ何も考えずに紙を切ったとしても、かたちは出来るし、感性が出るので、ぜひ気軽に自分のオリジナリティを楽しんでください。」とのこと。 また、「切り紙を体験すると、町の中の色んなものが切り紙に見えてくるのが本当に不思議で面白いんですよ。」とのこと。 ワークショップを体験した方からも同じような感想を頂くそうです。
今後の活動について聞いてみました。
矢口さんに、今後どのような仕事をしたいか聞いてみました。 「例えばホテルの空間、店舗や舞台装飾といった、空間デザインに落とし込むような仕事にトライしてみたい。これまでは、ひとりで作業するのが向いていると思っていたけれど、今は誰かと作り上げることも出来る状態になってきたと思う。規模が大きくなれば、扱う素材の量も増えるので。ひとりではできないことを、自分も見てみたい。」 …切り紙から生まれる様々なかたちや模様が広がり、壁紙やベットリネン、家具や室内の意匠に展開するなど、今後の活躍がとっても楽しみですね。 矢口さんの作品は、トーキョーファンタスティック表参道のほか、個展などのイベント開催時に購入することができます。ぜひ実際に足を運んで、切り紙の世界にふれてみてください。 ※商品は全て税抜きを表示しています。
「トーキョーファンタスティック表参道」はこちら
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ライター:Tomomi Furukawa カメラマン:彌永浩次
矢口加奈子

大学在学中より制作活動をスタート。「切り紙」という表現方法を軸に様々なかたちで作品を発表。 切り紙を自らの手でプロダクトに落とし込む制作スタイルで 「歓 よろこびのかたち」をテーマとして独自の展開で活動する。最近では、実用書を始め、作品集や絵本も制作。 初の著作本は英訳版も出版され、多くの人の目にふれることで更に活動の場を国内外に広げている。
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