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2015.06.24
山形の秘境「肘折温泉」で始まった旅プラン「七治里暮らし」とは?【前編】
山形県大蔵村にある名湯「肘折温泉」。自然豊かな里山に包まれた温泉地で、2015年4月より、新たな旅プラン「七治里(ちちり)暮らしプロジェクト」が始まりました。今回はおすすめの癒しプランを、2泊3日で体験してきました。
東京、名古屋、大阪から飛行機で約1時間、旅の始まりは山形空港から。送迎用の観光ライナーに乗り、肘折温泉へ出発します。 出羽三山の主峰・月山の麓、美しい山々や河川に囲まれた温泉郷「肘折」の湯は古くから「骨折、疵(きず)に肘折」と伝えられるほど、からだを癒す効果が高く、湯治場としても多くの湯客に愛される名湯です。 温泉地に長期間滞在し、体調を整えることを意味する「湯治」。言葉だけを聞くと年配の方向けのイメージがありますが、「七治里暮らし」で体験できるのは、肘折の穏やかに流れる時間のなかで自然の恵みをたっぷりと感じ、こころもからだも整えようという都会で働く女性に向けた現代版の湯治です。7日間の旅を基本としていますが、1泊2日からでも参加可能なので、週末を利用して体験できるのもうれしいポイントです。
黄色が「七治里暮らしプロジェクト」専用のてぬぐい。緑色は温泉街の商店などで販売
どんな旅になるだろうとワクワクしていると、乗務員から1枚の手紙が渡されました。 肘折温泉の女将の似顔絵や山菜などのイラストが描かれたウェルカムメッセージ。季節ごとの見どころやおいしい食材などが、あたたかみのある手書きの文字で紹介されています。手書きのイラストに、これから始まる旅がより楽しみになります。 肘折温泉には1時間半ほどで到着。月山を望む美しい山々や緑に包まれた田畑を眺めながらの移動は、心地よくあっという間の時間でした。 宿にチェックインしたら渡される手ぬぐいは、七治里暮らしプロジェクトのロゴマーク入り。温泉街の共同浴場や旅館で見せると、入浴料のサービスなどが受けられます。 それでは、さっそく温泉巡りへ。
スパリエに聞く、温泉の入り方
まず訪れたいのが日帰り温泉施設「肘折いでゆ館」。そこでスパリエの先生に温泉の入り方を教えてもらいます。 七治里プランに参加すると、こちらで温泉のスペシャリスト「スパリエ・インストラクター」から、肘折温泉の魅力やおすすめの入浴方法を直接伺うことができます。ちなみに、「スパリエ」とは、「スパ」と「ソムリエ」を組み合わせた造語なのだそう。 さっそく肘折温泉について教えてもらうと、魅力はやはり泉質の良さ、とのこと。保温効果が高く、入浴後も温かさが長く続くそうです。女性にうれしい美肌効果もあり、つい何回も入りたくなりますが、1日目の入浴は1、2回にとどめ、2日目から徐々に回数を増やし湯を肌になれさせるのがベスト。1日5回までの入浴がからだを癒すのに適しているそう。先生のアドバイスを受けたら、いざ入浴です。 ○肘折いでゆ館(ひじおりいでゆかん) [所] 山形県大蔵村南山451-2 [TEL] 0233-34-6106 [時間] 9:00~20:00(5~9月)、9:30~18:00(4・10月)、10:00~17:00(11~3月) ※入館受付は終了、30分前まで [休] 第2・4火曜(祝日の場合は営業) [料] 400円 [HP] http://www.hijiorionsen.jp/ideyukan/
2種類のお湯が湧く秘湯に癒されます
次に訪れたのは、日帰り温泉施設「カルデラ温泉館」。 肘折温泉にはおもしろい湯があることで知られ、そのひとつがこちらの湯。なんと熱い温泉(塩化物泉)と冷たい温泉(炭酸泉)の2つが湧き出す全国的にもめずらしい温泉です。熱い湯船でからだが温まったらパチパチと炭酸の刺激を感じる冷たい温泉で足浴…、この繰り返しがおすすめの入浴法なのだそう。 温泉は内湯と露天風呂の2種類があり、春から夏にかけての時期は露天風呂が特に人気。温泉を囲む緑輝く木々を眺めながらのんびり入る湯は、気持ちをリフレッシュさせてくれます。また、冷たい温泉は浴室の入口で飲泉として味わうこともできます。炭酸の強さは気温に左右されるそうで、そうした違いが楽しめるのも自然の恵みならでは。
館内では炭酸泉を使ったすっきりとした甘さの「カルデラサイダー」(270円)も販売。炭酸が強く、さっぱりとしたあと味なのでお風呂あがりにぴったりです。肘折のお地蔵様や銅山川、三角山が描かれたかわいらしいラベルで、おみやげにも人気です。大蔵村産のトマト味もあり、温泉街の商店でも販売しています。 ○カルデラ温泉館(カルデラおんせんかん) [所] 山形県大蔵村南山2127-79 [TEL] 0233-76-2622 [時間] 9:30~19:00(5~9月)、9:30~18:00(4・10月)、10:00~16:30(11~3月) ※入館受付は終了、30分前まで [休] 第1・3火曜(祝日の場合は営業) [料] 450円 [HP]http://www.hijiorionsen.jp/karuderakan/ ほかにも、手掘りの洞窟を歩いて温泉へと向かう旅館松屋の「洞窟風呂」や、男湯と女湯のそれぞれにお地蔵様がいる肘折温泉のシンボル的な共同浴場「上の湯」など、魅力的な温泉がたくさん。七治里の旅のなかで、ゆっくり巡ってみましょう。
温泉にたどり着くまで、探検気分を楽しめる洞窟風呂
上の湯。男湯には男地蔵、女湯には女地蔵がいる
豊かな自然を眺めながら名物のおだんごをいただきます
温泉を楽しんだあとは、そよ風を感じながらふらりお散歩。 キラキラと輝く川の水面や道端に咲く可憐な花など、何気ない景色に心が洗われるよで、肩の力がすっと抜けていくことを感じます。 のどかな風景を楽しんでいると、川のほとりにおだんご屋さん「羽賀だんご店」を発見。お店に入り、さっそくオーダー。ずんだ、しょうゆ、あんこ、ゴマの4種類があり、なかでも人気は枝豆をすり潰して作る郷土料理「ずんだ」だそう。豆は甘みが強く、香りが良いと言われる山形県産のだだちゃ豆を使用。豆をしっかりと潰しているので、食感がなめらかなことも特徴です。ひと口ほおばると、自然な甘みが口いっぱいに広がり、思わず笑顔になってしまいました。 ○羽賀だんご店(はがだんごてん) [所] 山形県大蔵村南山499 [TEL] 0233-76-2231 [時間] 4~11月、8:30~17:30 [休] 期間中不定休 [料] だんご1串100円
旅の記念に「肘折こけし」の絵付け体験
肘折温泉の伝統工芸品といえば、にんまりとした表情が特徴の肘折こけし。温泉街から少し離れた場所にある鈴木こけし店では、肘折こけしの絵付けを体験できます。教えてくれるのは、肘折で唯一のこけし工人、鈴木征一さんです。墨のほか、赤、青、黄の4色で思い思いに表情や絵柄を付けていきましょう。「どんなふうに描くといいかな」と迷ったときは鈴木さんのこけしをお手本に。最後にこけしの底に日付と名前を記して完成です。 ○鈴木こけし店(すずきこけしてん) [所]山形県大蔵村南山2126-291 [TEL] 0233-76-2222 [時間] 8:00~18:00 [休] 無休 [料金]絵付け体験(1000円)※1回5人まで、10日前までに要予約
温泉街を散歩しながら宿に戻ります
ノスタルジックな雰囲気漂う街並みには、タイムスリップをしたような気分にさせてくれる建物がいっぱい。なかでも注目は肘折温泉の小さなランドマーク「旧肘折郵便局舎」です。建物のどこかに、郵便局を表すなにかが隠れているので、じっくり探してみてくださいね。 肘折名物の「ほていまんじゅう」を買うことも忘れずに。宿でくつろぎながら、客室でゆっくり味わうのもいいですね。やさしい甘さに旅の疲れが癒やされます。 湯治宿ということもあり、図書スペースを設けている宿が多いのも肘折温泉の特徴。肘折温泉について書かれた本もあるので、ふらりと立ち寄ってみては。
スパリエによる温泉講座や2つの湯が湧き出す温泉など、一日目からすっかり魅了された七治里暮らし。明日はどんな出会いが待っているか、今から期待が膨らみます。
【後編】の記事はこちら
「七治里」の温泉郷・肘折温泉
0233-76-2211
肘折温泉観光案内所
http://hijiori.jp/enjoy/chichiri.html
「七治里暮らし」の旅館プラン、体験プログラムの詳細については、こちらにアクセスしてください。
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菅原聡子 写真:板元義和
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