建物自体が民藝品のように美しい「倉敷民藝館」

（左）外村をモチーフにした版画　（右）倉敷の町並み保存のきっかけとなった民家再生の第一号

きらびやかな芸術品ではなく、名もなき職人によって紡がれた日々の生活道具（民藝品）にこそ美しさを見出した民藝運動。大原美術館を創設した大原孫三郎が民藝運動を支援して以来、民藝の精神が根付く倉敷の地に、倉敷民藝館は誕生しました。初代館長・外村吉之介（とのむらきちのすけ）は、江戸時代から残る白壁貼り瓦の町並みに感動し、当時はまだ主流ではなかった町並みを保存するという考えのもと、倉敷川沿いに建つ江戸時代後期の米蔵を民藝館に再生させました。

白壁に黒瓦が映える、コントラストの効いた2階窓からの眺め

階段と渡り廊下でつながった3棟の建物からなる民藝館。2階の窓から見る中庭の景色は、イギリスの詩人、エドモンド・ブランデンが称賛した美しさです。それ自体が民藝品のような建物を、ぜひ内外から楽しんでください。

民藝品を身近に感じる展示品の数々

外村が収集に力を入れていた、かごなどの編組品

館内には、日本各地にとどまらず、朝鮮半島やアメリカ大陸、ヨーロッパなど、世界中から収集された陶器やガラス、染織品など、およそ15000点の所蔵品のうち約600点が展示されています。なかでも外村が好んで収集したかごは、国内の民藝館でも屈指の所蔵点数を誇ります。

（左、右上）建物と展示品が調和する空間　（右下）倉敷ノッティングが敷かれた腰掛けでひと休みも

民藝品そのものを見てもらうため説明書きはあえて少なく、生活美として、空間に溶け込むように陳列されています。椅子や腰掛けなどは、一部を除いて実際に座ることも。ぜひ実際に腰かけて「日常の暮らしの道具」としての魅力を体感してみてください。

倉敷ノッティングや倉敷ガラスといった、倉敷生まれの民藝品も

ていねいな手仕事から生まれる倉敷ノッティング

展示品には倉敷生まれの民藝品も多く、展示品の椅子に自然と置かれている椅子敷・倉敷ノッティングもそのひとつ。外村が考案し、技術を弟子に伝えるために設立した「倉敷本染手織研究所」で、現在でも一点ずつ手織りされています。毛足を長く残すためクッション性が高く、何十年使ってもへこたれない丈夫さと、時代を超えて愛される洗練された幾何学模様が魅力です。

シンプルなデザインが美しい倉敷ガラス

今から約60年前に生み出された吹きガラス・倉敷ガラスの展示も。創始者である小谷眞三さんの作品から、跡を継いだ息子・栄次さんの作品まで種類豊富に並びます。透明ガラスのほか、深い青色の色ガラスも印象的。このほかにも島根県の出西窯や鳥取県の牛ノ戸焼など、近県の民藝品も充実しています。

日々の暮らしに取り入れたい「倉敷の手仕事」をお持ち帰り

倉敷メイドをはじめ、国内外の民藝品をショップで販売

1階の売店では、倉敷ノッティングや倉敷ガラスに加え、イ草で作られたいかごやはなむしろ、約1200年の歴史を誇る備中和紙のアイテムなど、倉敷を代表する民藝品を中心に、陶器やかごなど全国各地の民藝品を販売しています。

木綿のかがりが美しい倉敷手まり

色柄豊富にそろう倉敷手まりはおみやげにおすすめのひとつ。外村の指導によって、約40年前に倉敷に生まれた民藝品で、現在では10人に満たないグループで伝統をつないでいっています。

展示品だけでなく建物自体に息づく民藝の精神を感じたり、ていねいに作られた生活道具を日常に取り入れたり。外村が提唱した「美しいよい暮らし」を始めてみませんか？