地域と人、そしておいしいものをつなぐテイクアウト店「knot」

名古屋鉄道の豊田市駅と豊田スタジアムの中間にある「knot（ノット）」は、ドーナツとホットドッグのテイクアウト専門店。豊田市から日進市に移転した「Riso Bagel」の水谷緑さんとカフェ「think」を手がけた小野健さんがはじめたお店です。

一番人気は「シュガー」

お店のまわりには市役所をはじめ多くの企業がありますが、桜城址公園（さくらじょうしこうえん）や教会、幼稚園などもあり、のんびりとした時間が流れるエリア。地元の人々はもちろん、スポーツ観戦や花火大会、街をお散歩で訪れる人たちも気軽に立ち寄る、地域にやさしく開かれたお店です。

シーズンごとに変わるフレーバーやイベントとのコラボドーナツも。

ホットドッグ（チーズ）。沖縄の「TESIO」のソーセージを使用。

持ち歩きに便利な「CUP DONUT」

オーナーの小野さんは建築家でもあり、店舗はご自身で設計したもの。昭和40年ごろから営業していた、美容室を印象的な角丸の窓はそのままに、リノベーションしました。運営しているカフェの仕込みや通販の配送作業のためのセントラルキッチンとして利用しようとしていた空間を、気軽に立ち寄れる場所へと構想を膨らませました。 「せっかく人と機材があるので、手軽にたのしめてテイクアウトで食べやすいものを」と始めた、ドーナツとホットドッグのお店。 ドーナツには美味しいコーヒーを、ホットドッグには美味しいビールを。お店のメニューはそんな4つの柱を中心に展開されています。

「knot」という店名は、「つなぐ」「縁」という意味があります。 お店のメニューに使われている食材は、北海道の「江別製粉」の小麦や沖縄の「TESIO」のソーセージ、名古屋の「haru.」のスペシャルティコーヒー、「奈良醸造」のクラフトビールなど。北から南まで全国各地の作り手を訪ね、直接交渉して仕入れているのだそう。 「全国のおいしいものを、この地域のみなさんとつなげたい」そんな思いがそのまま形になっている様子がお店の雰囲気からも伝わってきます。

ショップの外には、もともと花壇だったスペースを活かしたベンチが。テイクアウトを片手にひと息ついたり、記念写真を撮ったり……。お客さん同士が自然につながれる場所になっています。 豊田スタジアムやスカイホール豊田でサッカーやバスケットボールの試合がある日には、サポーターやブースターたちが集まり、自然と交流が生まれることも。そんな光景がなんともほほえましいですね。 それではテイクアウトしたものを持って、次のスポットへ出掛けてみましょう。

ドリンクにドーナツをのせて撮るのが人気のスタイル。思わず写真におさめたくなるかわいさです。

ランチをテイクアウトして、豊かな自然に包まれる鞍ヶ池公園へ

豊田市の東部にある「鞍ケ池公園（くらがいけこうえん）」は、鞍ケ池を中心に広大な敷地の中に観覧車や動物園、植物園、観光牧場、眺めのいいスターバックスコーヒーやスノーピークのストア・カフェなど、自然とふれあえる施設がそろうファミリーパーク。 愛知高原国定公園の豊かな環境を生かした園内は、四季の風や光を感じながら、のびのびと過ごせる心地のよい空間です。

「knot」からは車で10分ほど。テイクアウトしたドーナツやホットドッグを片手に、芝生や池のほとりでのんびりピクニックをするのもおすすめです。

今回チョイスしたのは、マーブルのドーナツとプレーンドッグ。 チョコレート、レモン、抹茶、ミント、ストロベリーの「マーブル」は、噛む場所によってテイストが変化するドーナツ。鼻にぬける小麦の香ばしさと、もっちりとした生地の食感がクセになります。 プレーンのホットドッグは、パン生地の小麦の香りに、パリッとしたソーセージ、ほどよい酸味の自家製ザワークラウトと自家製粒マスタードのバランスが絶妙。 自然の中で味わうと、よりいっそうおいしく感じられます。公園を通りぬける風が心地よく、木々の緑や水面のきらめきを感じながら過ごす時間は、開放的な気分になれます。

左上：「住箱」、右上：「住箱」付近からみえる鞍ケ池を望む景色、左下：展望台へと向かう道、右下：「住箱」

また、2021年のリニューアルでは、「スノーピーク」直営店が登場。ストアやカフェ、キャンプフィールドのほか、建築家・隈研吾さん設計の宿泊できるトレーラーハウス「住箱」も加わり、建築好きにもたまらない”泊まれる公園”としてさらに進化しました。

「スノーピーク」直営のストア・カフェへと続く階段。

山頂にある展望台と「PARKFIELD Snow Peak TOYOTA-KURAGAIKE」

こちらは山頂にある「スノーピーク」。カフェを併設する直営店「PARKFIELD Snow Peak TOYOTA-KURAGAIKE」は、なんと「knot」の小野さんが設計を担当。シンプルで機能的な建物からは、自然との調和を大切にするデザインの美しさが感じられます。 園内は、さまざまなアクティビティや四季折々の植物やお花もたのしめるので、ぜひ足を運んでみてください。

回廊を回りながら登れる、展望台

木のぬくもりと光に包まれる、新しい“まちのミュージアム”「豊田市博物館」

豊田市博物館のエントランス

2024年にオープンした「豊田市博物館」は、建築家・坂 茂（ばん しげる）さんが設計を手がけた、豊田市の杉を使った木のぬくもりあふれる建物です。 吹き抜けの空間ややわらかな光が差し込む館内は、歩いているだけで心地よく、隣接する豊田市美術館とも緑地を通じてつながる開放的なつくりになっています。

屋根の形状、それを支える柱の形も美しい

高さ7.8mの展示が圧巻、常設展「とよたの自然と人々の営み」

展示室では、豊田市のものづくりや暮らしの歴史、地層や生きものなど、この土地の自然と文化をまるごと感じられる展示や体験コーナーが満載。 2階へと続くスロープからは、双眼鏡で高さ約7.8メートルの展示棚をのぞくこともでき、 大人も子どももわくわくするような仕掛けになっています。

図書コーナーやキッズスペース、カフェ、資料の閲覧や研究ができる「みんなの研究室」もあり、誰もが思い思いに過ごせるのも魅力のひとつ。 災害時には災害対策本部を設置できる機能も備えており、環境への配慮や省エネだけでなく、災害にも強い建物になっているそうです。美しさだけでなく、安心をもたらす新しい建築の力を感じます。 ミュージアムショップには個性豊かなグッズが多数揃っているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

アートや建築、自然、そして人がつながる“豊田時間”をたのしんで

建築家の個性やデザインの思想が息づく建物をめぐりながら、地元の素材や人とのつながりを感じられる豊田エリア。 「knot」でテイクアウトしたドーナツを片手に、「鞍ケ池公園」で自然を満喫し、「豊田市博物館」で文化にふれる――そんな1日を過ごせば、街のあたたかさと創造力を肌で感じられるはずです。 ジブリパークから少し足をのばして、“建築とデザインのまち・豊田”を歩いてみませんか。