下田食べ部 vol.33
「雑賀屋(さいかや)」
子供の頃、私はよく母親の買い物についてまわりました。
当時はまだ近所に小さな魚屋さんや八百屋さんがあったりして、そうしたお店で母は夕飯の材料を揃えていました。
「端数はいいよ!」とか、「これおまけで入れとくね!」なんてやり取りがあったりして、そうした光景を母の背中越しに眺めているのがとても好きでした。
私の育った東京の住宅街では、もうその八百屋さんも魚屋さんも姿を消して、ほとんどの買い物はスーパーですませています。
時代とともにカタチが変わっていくのは仕方ないけれど、どこか心の奥が淋しいと感じてしまうのです。
2年前、我が家は東京からこの下田に移住してきました。
下田の魅力をあげるとすれば海や山などの豊かな自然、それに美味しい魚や山の幸などたくさんありますが、まちなかにある小さな商店も私にとっては魅力的に感じています。
下田のまちには魚屋さんも八百屋さんも、そして小さなお菓子屋さんもたくさんあります。
今回紹介する「雑賀屋」さんも、そうしたお店のひとつです。
こちらのお店は150年の歴史をもつお菓子屋さん。
お店の看板商品となっているのは、今ではなかなか珍しい手作りの飴です。
スーパーに陳列されている飴をみて、「誰がつくったのかなこの飴?」なんて想像したことはありませんでしたが、この飴は目の前にいるこのご主人が暑いおもいをしながら砂糖を煮詰めて伸ばしたもの。
ふんわりと空気を含んだその飴は手作りならではの軽い食感です。
そして、店内には飴以外にも焼き菓子がずらりと並んでいます、もちろんすべてご主人の手作り。
飴以外にも根強いファンがいるというのが、ラムレーズンサンド。
実は私もこのラムレーズンサンドが好きで、食べ終わるとついもうひとつ、と手を出したくなるのです。
なにが好きかって、やわらかすぎないザクッとしたクッキー生地と、ふんだんに使用されたラム酒の香り。
「このレーズンサンド、癖になりますよね〜」なんてご主人と話している私の後ろ姿を、娘は大人になったら思い出すのかな。
部員 テツ
ラムレーズンサンド 130円
べっこう飴 大きさにより70円前後
手作り飴 1パック190円
http://shimoda100.com/restaurant/pageone/
2019.01.12

33
