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2022.01.22
【鳥取編④】白・黒・緑。3色染め分けのモダン民藝が息づく「因州・中井窯」に魅せられて
日常に使うものこそ美しく。そんな民藝運動の精神を受け継ぐ窯元が、鳥取には今も各地に息づいています。鳥取市の中心部から車で約30分の里山にある「因州・中井窯」もそのひとつ。白・黒・緑の釉薬で染め分けたうつわを手がける窯元で、そのモダンな色彩は多くの民藝ファンからも注目を集めています。存在感がありながら、どんな料理も受け止めてくれる包容力も魅力的。日々の食卓を豊かにしてくれるうつわを求めて、窯元を訪ねてみました。
伝統と革新を取り入れる里山の窯元へ
整然と並べられたうつわが目にも楽しいギャラリー
食卓を華やかにしてくれるうつわと出会う
染め分けのうつわが生まれる現場を訪ねて
伝統と革新を取り入れる里山の窯元へ

入口には初代が築いた登り窯がある
青みがかった緑、どこまでも深い黒、清らかで凛とした白。その3色を大胆に染め分けて作陶するのは、曳田川(ひけたがわ)が傍らを流れる中井地区に窯を持つ「因州・中井窯」。民藝のなかでもとりわけモダンで、多くのうつわ好き・民藝好きから注目を集める窯元です。 初代が開窯したのが、1945(昭和20)年。2代目が鳥取民藝のプロデューサーと呼ばれる吉田璋也の指導を受け、以来、新作民藝に取り組むようになったといいます。現在は3代目の坂本章さんと4代目の宗之さんが窯を守り、暮らしに寄り添ううつわ作りに励んでいます。
整然と並べられたうつわが目にも楽しいギャラリー

染め分けの器が整然と並ぶギャラリー
「新しい要素を取り入れなければ伝統は残らない」と語る坂本さん。その言葉どおり、窯元に併設されたギャラリーには、健やかな美しさを保ちつつ、デザイン性に富んだうつわが整然と並んでいます。平皿や碗、カップや花器など、どれもが暮らしにすんなりと溶け込む逸品ぞろい。2000年からは世界的工業デザイナー・柳宗理のディレクションシリーズも展開し、その知名度を全国に広めました。
食卓を華やかにしてくれるうつわと出会う

(左)柳宗理ディレクションシリーズ2色染め分け6.5寸皿8030円、(中)3色染め分け6寸皿6050円、(右)2色染め分け6.5寸皿4180円
「日々の食卓で気軽に使ってほしい」という思いから、因州・中井窯ではさまざまなうつわを手がけています。なかでも王道なのが平皿。和食、イタリアン、フレンチ、エスニックなど、どんな料理もどっしりと受け止めてくれる懐の深さが魅力です。豊富なサイズ展開も人気の理由。存在感があるので、1枚あるだけで食卓をパッと華やかにしてくれますよ。

ミルクつぎ各2970円
手の平サイズのミルクつぎは、食卓を豊かにしてくれる名脇役。温かみのあるコロンとしたフォルムが何ともかわいらしく、2色染め分けのカラーリングが北欧を思わせるような逸品です。一輪挿しとして使うのもおすすめです。

箸置き各506円
箸置きも、もちろん白・黒・緑で染め分けられています。蝶ネクタイのような形もとってもキュート。両端が反り上っており、箸が転がり落ちないデザインに。細部まで使い手を思った作りに頭が下がります。
染め分けのうつわが生まれる現場を訪ねて

釉薬をまとい、窯入れを待つカップ
ギャラリー横の工房では、坂本さん親子が実直にロクロと向き合っています。工房は常に整理されて美しく、その端正な仕事ぶりは作陶にも現れています。すっきりとしたライン、流れるような曲線、心地よく手に馴染む質感が魅力で、そのどれもが「料理に使いやすいように」という思いでデザインされています。

(左)黙々とロクロに向かう宗之さん (右上)瓶の中の釉薬にうつわをつけて大胆に染め付ける (右下)リズムよく次から次に染めていく
地元の山土を用いて陶土を作り、地元の稲藁や広葉樹の灰から釉薬を調合。地元の天然素材を使うからこそ、因州・中井窯の色彩や風合いが出せるのだといいます。釉薬の染め付けは、ひしゃくで流したり、瓶の中に入れたりとなんとも大胆。その大らかさもうつわに魅力を添えてくれ、ちょっとした色の重なり具合や曖昧な境界線は一つとして同じものはなく、深い味わいを生み出しています。

因州・中井窯では工房の見学は基本的に行っておらず、家族で工房を切り盛りするため訪ねる際は連絡してからが安心です。魅力あふれるうつわをめぐる旅を楽しんでくださいね。
【鳥取編③】五感で民藝を楽しむ「クラフト館 岩井窯」の記事はこちら
因州・中井窯
インシュウナカイガマ
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井手口陽子(forest)、写真:森昌史(forest)
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