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2022.07.30
ユニークでかわいい萩焼を探しに窯元「カネコツカサ」へ
江戸時代に萩藩(長州藩)の御用窯として開かれた萩焼は、古くから茶の湯の世界で重宝される美術品。時代を重ねるにつれ用途やデザインの幅が広がり、日々の暮らしに彩りを添えるうつわも多く作られるようになりました。今回紹介する窯元「カネコツカサ」もそのひとつ。ユニークでかわいい作品が生まれる工房兼ギャラリーを訪れてみませんか。

のどかな里山に建つ古民家の工房兼ギャラリー

訪れる場合は事前に連絡を
JR萩駅から車で約10分。周囲に田畑が広がるのどかな里山に、窯元「カネコツカサ」はあります。萩で生まれ育った金子司さんが2005年に開窯したもので、以来、銀座三越での個展やミラノ万博への出品など国内外で精力的に活躍。築250年の古民家をリノベーションした工房兼ギャラリーで、日々うつわ作りに励んでいます。

ギャラリーでは昭和レトロな箪笥や食器棚などを陳列棚として活用し、平皿やカップ、花器やオブジェなど多彩な作品をディスプレイ。ランプシェードやオブジェといったインテリアも展開し、日々の暮らしに彩りを添える作品を展示・販売しています。

カラフルな幾何学模様のうつわに魅せられて

墨流しで絵付けした「豆皿」1枚1760円
こちらの窯を代表するのが、「墨流し」と呼ばれる絵付けを施したカラフルな幾何学模様。赤、ピンク、水色、黄色など色彩豊かな化粧土をスポイトで一滴ずつたらすことで、うつわの曲線に沿って放射線状の模様が生まれたり、振動を加えることでマーブル模様に変化したりと、表情豊かな作品ができあがるのです。

(左)真摯に作品と向かう金子司さん (右上)12色もの化粧土を使い分け、スポイトで一滴ずつ絵付け (右下)うつわの中心に向かって美しい放物線が現われる

「注器」13200円~。黄色い注器のフタが点描で描かれたもの
色の異なる化粧土をスポイトでドット状に埋め尽す絵付け「点描」を施したシリーズも、同窯を象徴する作品です。色彩が織り成す緻密な模様、ドットがぽっこりと膨らんだ立体感が何とも愛らしく、すべて表情が異なる一点もの。300種類以上の色と柄から自分好みフタを選べるティーポット「注器」は、バリエーション豊かな「カネコツカサ」を体現するうつわのひとつ。選ぶ楽しさも一緒に味わってくださいね。

うつわの概念を覆すキノコの世界に圧倒される

きのこのスプーン「くさびら匙」は1本2750円
キノコの造形美、種類の多さに魅せられた金子司さんが、2019年から手掛けているのがキノコをかたどった作品です。墨流しや点描を施し、唯一無二の存在感をまとっています。作品も幅広く、アクセントにキノコを加えた平皿やスプーンをはじめ、マグネット、ピン、オブジェなど実にさまざま。その独特の世界観とデザインに圧倒されます。

(左上)回転を加えたキノコのオブジェ (左下)キノコの図鑑からインスピレーションを得ることも (右上)各地から収集したキノコの木型 (右下)墨流しや点描を施したキノコのピン
成形もユニークで、干菓子の木型や自作の道具で型押しする独特のスタイル。なかには成形後、伸ばしたり、台に叩きつけたり、時にはフリスビーのように回転を付けて投げたりすることで、偶発的な形状を作品に与えているのだといいます。

(左)幹にキノコのピンをデコレーション。太陽光や風雨による経年変化も楽しみ (右上・右下)きのこのへやは自由に見学できる。撮影ももちろんOK
また工房兼ギャラリーには、「きのこのへや」というスペースも。中に入ると、キノコのピンが壁一面にびっしり。さらに屋外の木々にもキノコのピンを飾り、まるでキノコが自生しているよう。萩焼の伝統を大切にしながら、新たな視点と自由な発想で生まれる作品の数々。ぜひ足を運んで、その世界観をのぞいてみませんか。
カネコツカサ
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井手口陽子(forest)、写真:森昌史(forest)
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