大人の隠れ家のように落ち着いた戸隠の人気店「そばの実」へ

風情あるたたずまいの「そばの実」

標高1000m以上にある戸隠は昼夜の寒暖差があり、おいしいそばが採れる名産地です。平安時代の修行僧の携行食としてそば粉が使われたのが、戸隠そばの始まりといわれています。その後、宿坊が「戸隠神社」に詣でる参拝客にそばきりを振舞ったことから、全国に戸隠そばの名が広まったそう。 戸隠神社で参拝をすませたら、おいしいそばを味わうのが戸隠流の楽しみ方。人気店の「そばの実」は、「戸隠神社中社」から「戸隠神社奥社」方面に向かう道路沿いにある、木々に囲まれた一軒家のそば処です。1988（昭和63）年にオープンし、戸隠の中では比較的新しいお店です。

広くてゆとりのある空間でそばをいただく

「そばの実」の店内はゆったりした音楽が流れ、和モダンカフェのような雰囲気。大きく取られた窓の向こうには、まるで絵画を眺めているような木々の美しい風景が広がっています。「戸隠は四季がはっきりしているので、それを感じてもらいたいです」と2代目店主の徳武祐介さん。冬は真っ白できれいな雪景色がみられるそう。

お手洗いに行く前の小さな空間もすてき

素材のよさを存分に引き出すていねいな仕事

そばを打つ2代目の徳武祐介さん

店の入口にそばを打つ場所も設けられています。朝以外にも時間帯によっては、店主の徳武さんがていねいにそばを打つ姿がガラス越しに見られますよ。徳武さんは大阪で日本料理の修業をし、2代目として初代のお父様からそばを学んだそう。 「そばの実」で使うそば粉は、信頼のおける地元・戸隠の契約農家さんから玄そばの状態で仕入れたものを使っています。その農家さんのそばは、味が濃いそう。「作る前、挽く作業が大切。原料がすべてです」と徳武さん。冷温保存でしっかりと品質管理を行っています。

その日の気温や湿度を感じながら、一工程ずつていねいに行われる

そば粉は玄そばの殻をむき、挽き方を変えながら石臼で自家製粉。粗さを変えた3種類をブレンドしたものだそう。毎日挽くことで、そばの香りが引き立ちます。石臼も熱で劣化しにくい石を使うなど、そばをおいしくするためのていねいな仕事が感じられます。

「ぼっち盛り」も美しい♪ 香り豊かな名店の極上そばを堪能

おすすめの「そば三昧」1600円

「そばの実」のそばは、そばの味が濃くて甘みも感じられ、のど越しがいいのが特徴。戸隠山からの伏流水を使うため、そばのおいしさをいっそう引き出してくれます。 人気メニューは「そば三昧」。そばつゆが特徴的で、濃厚な味がたまらない信州産の鬼くるみ汁、さっぱりといただける長野市松代産の長芋のとろろ、地元の醤油を使ったざるつゆの3種類。１枚のそばで食べ比べができる贅沢なメニューです。できるだけ地元のものを使うようにしているとか。根曲がり竹で作った戸隠竹細工のそばざるや、木曽檜のお箸も信州産ですよ。

窓の外の景色も楽しみながらそばをいただく

戸隠そばといえば特徴的なのが「ぼっち盛り」という盛り付け方です。そばざるの上に、少量ずつ馬蹄型の「ぼっち」と呼ばれる束を並べます。ひと口サイズで食べやすい盛り付けですが、これは戸隠の神様へのお供えや、賓客へのおもてなしとして、切れたり折れたりした不ぞろいなそばをはずすために定着したとか。「そばの実」はぼっち盛りも美しいので、それも楽しみながらいただきましょう。

日本料理の経験を生かした季節の料理や人気のそばだんごも

「季節の味くらべ」1500円（提供は春～秋）

日本料理の修業をした徳武さんならではのメニューが、春から秋に味わえる「季節の味くらべ」。春は山菜、夏は高原野菜など旬の食材を使い、彩り豊かで繊細な料理が少しずつ盛られています。夏のある日のメニューはズッキーニやヤングコーンのグリル、稚鮎の甘露煮などが並び、食材のおいしさを堪能できる一品です。地酒と合わせるのもおすすめ。冬は鴨を使ったそばや一品料理が味わえますよ。 「季節の味くらべ」の下に敷いた上品な木製の折敷は、徳武さんの手作り。漆も施したそう。器用さとセンスのよさが光ります。

ファンが多い「そばだんご」380円

甘味として人気なのが「そばだんご」。茹でたそばを練って丸く団子状にしたものを揚げて、甘みを足したそばつゆのかえしに絡めた、みたらしのような甘辛の一品です。外がカリッとしたホクホクの甘じょっぱいおだんごはおすすめですよ。冬はそば粉ともち粉で作るそば餅入りの「そばしるこ」で温まって。

おいしいおそばをおみやげにいかが

家でも気軽に「そばの実」のそばが味わえる

売店には上質なおみやげも並んでいます。生そばや干そばのほか、黒豆や青大豆、くらかけ豆など手作りの豆菓子、そばクッキーもおみやげにぴったりですよ。 戸隠神社を参拝後は、そば処に立ち寄り、おいしいそばのおもてなしを受けてみてはいかがでしょうか。