屋島の魅力を体感しに、アートな回廊型建築「やしまーる」へ

周囲の自然に溶け込むように設計されている

標高292mの屋島は、山上が平らな形をしていることから「屋根のような島」と名付けられた溶岩台地。そんな屋根のてっぺんに位置するのが、交流拠点施設「やしまーる」です。設計は世界的にも有名な建築ユニットSANAA出身の建築家・周防貴之（すおうたかし）氏によるもの。瀬戸内国際芸術祭2022の作品にも登録されたアートな建物は、屋島のシンボルとして親しまれています。

地形の起伏にあわせて曲がりくねる

まず目を見張るのが、その独創的なデザイン。約200mの回廊がうねうねとカーブを描きながら中庭を包み込むように一周する造りは、建物そのものがひとつの作品。敷地の起伏に呼応するように上下左右に曲がりくねる通路を歩くことで、目線が常に変化する仕掛けになっています。屋根瓦には屋島特産の庵治石を約3万枚も使用。複雑にうねる屋根に整然と並ぶ瓦は、太陽の光を浴びて、それぞれ異なった表情を見せます。

屋島の魅力を展示アートからも感じましょう

回廊を歩いていると、まったく同じ形をした石に遭遇する。現代アートチーム・目[mé]による偶然と必然を問う作品

回廊にはアート作品の展示も。「ローカル展示」では、屋島エリアの魅力を写真や彫刻、音楽、ドローイングなどの作品鑑賞体験を通して伝えています。「パノラマ館」に展示されている『屋島での夜の夢』は、美術家・保科豊巳氏が手がけたもので、瀬戸内国際芸術祭の作品のひとつ。円筒形の建物のカーブに沿って遠近法を用いて描かれた高さ約5m×幅約40mの作品です。屋島が舞台となった源平合戦をテーマに、油絵とジオラマで表現しています。日本国内ではここだけでしか見られないパノラマで表現された絵画。臨場感ある絵をぜひ見てみましょう。

パノラマ館の常設展示作品『屋島での夜の夢』。20分ごとの入れ替え制。音声ガイド付き

パノラマに広がる瀬戸内海と高松市街の景色も楽しんで

「日本の夕陽百選」にも選ばれた夕日も拝める

全面ガラス張りの建物からは、海と山に囲まれた景色がパノラマ状に広がります。なかでも美しいのが、海に開けた西側の展望スペース。屋島三大展望台のひとつ「獅子の霊巌（ししのれいがん）」を眼下に望む場所で、手前には屋島の町並み、その先に高松市街地、右手には瀬戸内海が広がり、女木島、男木島などの多島美を見渡すことができます。金・土曜、祝前日は21時までオープンしているので、昼とは異なる夕景を楽しむこともできますよ。

ショップとカフェで屋島名物を探して

（左）「太三郎ケーキ」400円　（右）「屋島のはちみつレモネード」500円

回廊の一角には小さなカフェとショップもあるのでぜひ立ち寄りを。カフェではドリンクやスイーツに加え、カレーやトーストなどの軽食も提供しています。おすすめは愛嬌ある顔がかわいいたぬきのケーキ。屋島に伝わる化けだぬきをモチーフにしたスイーツで、生どら焼きもあります。地元で採れたはちみつとレモンをたっぷりと使ったレモネードやレモンソーダも人気です。

（左）屋島をモチーフにデザインされたガラス細工の箸置き「やしまのまくら」各750円　（右上）折りたたむとコンパクトになる「やしまーる袋」は各2200円　（右下）「やしみつ」100g各900円

ショップには地元企業と香川大学で共同開発したおみやげが並びます。リネンの残布をアップサイクルした風呂敷型のバッグ「やしまーる袋」は、開館当時からのロングセラー商品。屋島で採蜜されたはちみつ「やしみつ」は、桜や玉椿など8種類をそろえ、季節ごとに異なる味わいが楽しめます。この他にも、高松のガラス細工工房が手作りする箸置きなど、屋島をモチーフにしたグッズも魅力的です。

瀬戸内国際芸術祭2025では、やしまーるを舞台に9名の作家による企画展示が行われます。コンセプトは「いきいき、のびのびと暮らす島の動物たち」。瀬戸内海の豊かな生態系を起点に、アーティストの独自目線で表現した立体作品が並びます。屋島山上の景色とともに、新たに誕生するアート作品を見に、ぜひ足を運んでください。