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2015.09.15
文化を感じる街へー3つの小京都をめぐる週末旅
旅行に出たいけど休みが取りにくいという人に、時間を有効に使えておすすめなのが金曜夜出発の週末旅。テーマを立てて行き先を決めれば、さらに旅が充実します。そこで、旅行ライターの松岡絵里さんが、おすすめのテーマ別に、週末旅の行き先を提案。今回のテーマは、「小京都」と呼ばれる街で文化を感じる旅です。
プラン1:山間に花開いた小京都・飛騨高山と郡上八幡
「小京都」という言葉に、どこか旅心をそそられる人も多いのではないでしょうか。その多くは、歴史と風情がある街並みの中で、そぞろ歩きが楽しめます。金曜日夜に出発すれば、近隣のふたつの小京都を無理なくめぐることも可能なのです。 まず最初に提案するのは、山間の緑豊かな地に、江戸時代以来の城下町・商家町の姿が保全されている岐阜県・飛騨高山。拠点となる高山駅への金曜日夜発のアクセス方法は、東京から行くなら、電車、夜行バス、飛行機と選択肢はさまざま。電車なら名古屋経由で行くこともできますし、名古屋からバスでアクセスする手も。 飛騨高山の趣ある街並みには、地酒や朴葉味噌など、この地ならではの名産品を扱うお店がずらり。また、宮川朝市、陣屋前朝市というふたつの朝市も開かれています。どちらも40〜50軒ほどの露天が出され、地場野菜や工芸品、土産物などが並びます。お昼まで開かれていますが、目玉商品は早い時間になくなってしまうので、土曜日の朝到着したら、まずは朝市散策へ出るのがいいでしょう。
城下町・郡上八幡では名水スポットめぐりを
飛騨高山を満喫したあとは、バスを使って約1時間半でアクセスできる、同じ岐阜県内の郡上八幡へ。「うなぎの寝床」と呼ばれる町屋が建ち並び、どこか懐かしさを覚える光景が広がっています。 街の中心部には長良川の支流である清流・吉田川が流れ、街には水路が張りめぐらされていています。名水百選第1号に指定されている湧水「宗祇水」や、水を生活に利用するための「水舟」と呼ばれる水槽が設けられているので、それら名水スポットでのどを潤すのも、この地ならではの醍醐味です。 毎年7月末から9月上旬の三十夜にわたって、名物の「郡上踊り」と呼ばれる盆踊りも開催されているので、この時期を狙って行くのもいいですね。 帰りはバスで名古屋に出て、新幹線でスムーズに帰るプランが理想的です。
プラン2:瀬戸内海の風情を求めて尾道と倉敷をめぐる
海の香りを感じたい人におすすめなのが岡山県・倉敷と広島県・尾道。ふたつの街は電車で1時間ほどしか離れていないので、あわせてめぐるのがいいでしょう。 まずは首都圏から遠い尾道へ。金曜日夜発の夜行バスを利用すれば、手頃な料金で効率良く移動できます。 尾道は「坂の街」「文学の街」「映画の街」といういくつもの顔を持ちます。また、かつて戦火を逃れたことから、数々の寺社仏閣が残り、古寺めぐりも楽しめます。中でも市街と尾道水道・向島が一望できる千光寺は絶景。入り組んだ坂道が多い尾道では、迷いながらの散策も楽しみのひとつです。 林芙美子、志賀直哉などの文学者が居を構え、大林宣彦監督の映画作品の舞台にもなった尾道では、ロケ地や文学館めぐりなど、カルチャーにどっぷり浸るのもおすすめです。
倉敷は古さと新しさが同居する街
尾道を堪能したあとは倉敷へ。江戸時代に天領(幕府の直轄地)として繁栄した地で、白壁土蔵のなまこ壁や、格子窓の町家が軒を連ねる倉敷美観地区を筆頭に、街歩きが楽しめるスポットが多数あります。本町・東町には土蔵や町家を改装したおしゃれなカフェやギャラリーが続々と誕生していて、お気に入りの店が見つかるはず。西洋の名画が見られる大原美術館にも立ち寄りたいですね。 ファッションに興味のある人なら、倉敷駅から電車で約40分ほどのところにある「繊維の街」児島まで足を延ばすのもいいでしょう。 なお、倉敷から岡山空港まではバスで30分ほど。帰りは飛行機で一気に帰るというプランが週末旅にはおすすめです。
プラン3:ノスタルジックな気分に浸れる盛岡と遠野
ノスタルジックな気分を味わいたい人には、「みちのくの小京都」と言われる盛岡と、神話のふるさと遠野をめぐる2泊3日の旅はいかがでしょうか。盛岡は東京から新幹線を使えば2時間強とアクセスも抜群。金曜日の夜、多少残業した後でも行けてしまう距離なのです。 しかも盛岡なら夜遅く到着しても、じゃじゃ麺・冷麺などの名物麺のお店は比較的遅くまでやっているので、到着早々に地元グルメを味わうことが可能です。この2つとわんこそばを合わせて「盛岡3大麺」と呼ばれていて、ぜひ本場の味を楽しみたいものです。 金曜日夜中に盛岡に入ったら、土曜日は朝から明治、大正期の建物が残る街並み散策へ。ノスタルジックな風情が漂う盛岡には、スローフードや手仕事の品々を扱うショップが点在していて、こだわりの逸品を探すのにももってこいです。
民話のふるさと・遠野で懐かしい風景に触れる
続いて盛岡から電車で2時間程度でアクセスできる遠野へ。ここは民俗学者・柳田国男が綴った『遠野物語』の舞台で、「民話のふるさと」と言われる地だけに、郷愁をそそる風景があちこちにあります。駅前周辺には江戸時代初期の碁盤の目のような町割りが残っており、建ち並ぶ町屋は城下町の面影をたたえます。 カッパが暮らすと言い伝えられている「カッパ淵」や農村文化を学べる「伝承園」、民族伝承を伝える「とおの物語の館」などのスポットを、レンタサイクルでゆったりとめぐるのもおすすめです。 以上、3つの小京都めぐりプランをご紹介ましたが、青森県の弘前市や山口県の萩市など、日本にはほかにもまだまだすてきな小京都がたくさんあります。年間50回以上もある週末を使って、少しずつ「小京都ハンティング」をしていけば、また新たな日本が見えてきそうです。
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松岡絵里 構成:相馬由子
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