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2020.09.25
「ごみ集積施設に泊まる」。そこから見えてくるものとは。[WHY(ワイ)/徳島県勝浦郡] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から徳島県勝浦郡の「WHY(ワイ)」を紹介します。

ごみゼロの町が世界に問いかける、「なぜ」

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」は5月30日にオープン。ホテルの宿泊予約はWEBより
「ごみ集積施設に泊まる」と聞くと一瞬ひるんでしまいそうですが、ここ「HOTEL WHY」は世界から注目される前衛的な環境配慮型ホテル。「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」は、リサイクルごみ集積施設、ホテル、リサイクルショップ、セミナールーム、ラボから成る環境型複合施設です。

「どう処理するか」というより、「そもそも出さない」

上勝町は高い山々に囲まれ、深い渓谷を成す絶景を望む場所にある
上勝町は、徳島市内から車で約1時間の人口わずか1500人ほどの町。大部分が標高700m以上の山地に覆われ、急な斜面に棚田や段々畑の風景が残るのどかな里山です。ここでは2003年、自治体として日本で初めて『ゼロ・ウェイスト(Zero=0、Waste=廃棄物)宣言』を行い、現在リサイクル率は80%を超えるエコビレッジ。ごみをどう処理するかではなく、ごみ自体を出さない社会を目指し、各家庭で生ごみを堆肥化したり、瓶や缶などのさまざまな資源を住民各自がゴミステーションに持ち寄るなどして45種類以上に分別しています。

「上勝町モデル」から国内外の人々が学べる施設を

上勝町民の為のマルチファンクションルーム、リメイク&リユーズを推奨するパーツセンターなども併設
ゼロ・ウェイスト活動の拠点である「ゴミステーション」は設置から20年以上が経過。その取り組みを視察するために、上勝町には年間約2600人が国内外から訪れていました。視察者の増加に伴い、彼らにもっと深く上勝町のゼロ・ウェイストに対する取り組みを見せる工夫をするため、「WHY」のプロジェクトチームが発足しました。

床などにも廃材を利用し、温かみのある空間に
総合プロデュースはトランジットジェネラルオフィス、建築設計は中村拓志が主宰するNAP建築設計事務所が手掛け、2018年から「WHY」の設立計画がスタート。ちなみに「WHY」は、「なぜ、今?なぜ、ここに?なぜ、我々が?なぜ、ゴミを?」という問いかけに対する答えを見つける場所となるような思いを込めて名付けられました。また、施設全体を上空から見ると「?」の形状に似ていることにも由来します。もちろん建物はリサイクル・資源保護を徹底しており、上勝町で伐採された杉材や不要になった建具や家具などを活用しています。

使い捨てのものはない、ミニマムな生活を体験する宿

部屋にはテレビもない。バス、トイレ付きのメゾネットタイプ
「HOTEL WHY」は、 1 日を通して上勝町の豊かな自然を感じつつ、環境について学び考える場に。全4室で、上勝町の山々を一望できる「マウンテンビュー」と、「ロードビュー」があります。ゴミ削減のために歯ブラシなど使い捨てのアメニティは準備されていません。また洗濯排水を限りなく少なくするため寝間着は各自で持参。使い捨てではないアメニティは購入可能です。

山、川に恵まれ、魚や新鮮な野菜など食材に恵まれた町
なお客室で利用する石鹸はセルフ切り分け、サービスコーヒーの豆は量り分けとゼロ・ウェイストアクションを徹底。石鹸は、65 年の歴史を持つ「無添加石鹸本舗」、コーヒーはサステナビリティを提案するTADE GG 農園の豆をローストする「Little Darilng Coffee Roasters」のコーヒー豆。さらに、バスアメニティーはニュージランド発の「ecostore」、オリジナルウェルカムドリンクは、日本初のコールドプレスジュース専門店「SUNSHINE JUICE」と、さまざまなブランドがWHYの想いに賛同し協力しています。 また朝食では上勝のブリュワリー「RISE & WIN Brewing Co BBQ & General Store」監修による、上勝や徳島の大地の恵みを取り入れたピクニックスタイル・ブレックファーストを味わえます。

自然の中でのアクティビティから学べることもある

自然の中で生きる知恵を学ぶサバイバルゲームなど、子供から大人まで楽しめる
ホテル以外には、上勝町住民のリサイクル可能な不用品をリサイクルする無料交換所「くるくるショッフ」、年数回企画されるサステナブルラーニングのためのセミナールーム、「3R活動」に興味がある大学や企業に貸し出す研究室を併設しました。ハード面だけでなく体験・参加することで楽しく学べるよう、アドベンチャーとエコロジーツーリズムのインフォメーションデスクを設置。フライフィッシング、レイクカヤック、リバーピクニック、トレイルランニング、循環型ライフ体験など上勝町の自然を体験できるフィールドアクティビティーを用意しています。

快適=豊かなのか。日常生活の中に「なぜ」を

上勝町で昔から営まれてきた、循環型の暮らしも体験できる
使い捨てのアメニティ、洗い立てのタオル、寝間着などが備えられたホテルでの滞在は確かに快適で便利です。しかし、本当はそこに「捨てられる理由」「新しいものでなければならない理由」はないのかもしれません。「WHY」を訪れた人は、日常生活にある「なぜ」に気付くとともに、「本当の豊かさとは何か」という概念が少し変わるのではないでしょうか。
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写真提供:トランジットジェネラルオフィス
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