LOHASブームの東京から新潟・三条市へ。海から、大地から掴み取った味を届ける。[Restaurant UOZEN/新潟県三条市]by ONESTORY
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LOHASブームの東京から新潟・三条市へ。海から、大地から掴み取った味を届ける。[Restaurant UOZEN/新潟県三条市]by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から新潟県三条市の「Restaurant UOZEN」を紹介します。

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「顔が見える生産者が育てる野菜で作る料理」「野菜がたっぷりの身体に重くないフレンチ」。今のグルメシーンではスタンダードになりつつあるヘルスコンシャスな料理を10年以上前から提唱し話題を集めた池尻大橋『HOKU』。ところが開店から7年目、人気絶頂のさなかに突如、店を閉め、東京から姿を消してしまいます。 オーナーシェフ・井上和洋氏がたどりついた新天地が、新潟県三条市。2013年にオープンした『Restaurant UOZEN』は、5年目に突入し、地元の人に愛されながら、県外からもゲストを呼ぶ店として成熟しつつあります。

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ゼラチンで濃度をつけたコンソメで海老をコーティングした「佐渡産ボタン海老のブイヤベース仕立て」。魚介のスープに欠かせないニンニク風味のマヨネーズ、ルイユを美しいドット状に散らし、ハーブをあしらって。地元で水揚げされる甘海老を生かすために考えたひと皿だったが、より上質なボタン海老に出会い今の形に

夏は自ら佐渡沖まで釣りに出かけ、猟が解禁になる11月15日以降は、毎日のように山に出かける日々。失敗と工夫を繰り返しながら、パーマカルチャーの理念に基づき、循環型のライフスタイルによる野菜作りにも挑戦しています。 きちんとした食材を使い、その味を感じられる料理を提供したい。東京時代から抱き続けてきた想いに、新潟で血肉を通わせてきました。井上氏に移転を決心させたものは何だったのでしょうか。『UOZEN』という新しい店名に隠された想いとは。真意を確かめるべく、取材班は初冬の三条市へ向かいました。

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ヘルシーレストランの先駆として人気を集めた東京時代

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店の周囲は広々とした田園地帯。前日まで周囲を覆っていた雪が解けた水が、田んぼの中で美しい夕空を映す

新潟県のほぼ真ん中、越後平野に位置する三条市。県内ではさほど雪の多くないエリアで、積雪量は多い時期で50cm程度。幹線道路の脇に大手資本のスーパーや全国チェーンの飲食店が並ぶ様子は、どこにでもある地方都市の風景です。『Restaurant UOZEN』があるのは、市街地からやや外れた田園地帯のただ中。雪解け水をたたえた田んぼの中に浮かび上がる店構えは、「レストラン」のイメージからは遠い、純和風の建物です。

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和食店時代の設備を生かした厨房は、井上氏とスタッフ2人で仕事をするには十分すぎる広さ。昼間は窓から季節ごとの陽の光が射し込む

井上和洋氏は1975年、香川県生まれの42歳。大学時代に飲食店で働き始め、卒業後にアルバイト先であった『KIHACHI』に入社し、料理はもちろん新店舗の企画、経営管理まで様々な仕事を経験します。2005年、30歳で東京・池尻大橋に『HOKU』をオープン。開業直後こそ集客に苦労したものの、経営はすぐに軌道に乗ります。ブレイクのきっかけは、生産者の顔が見える野菜にフォーカスしたことでした。 「今では当たり前になった契約農家の有機野菜を使うというスタイルが、2000年代初頭はまだ珍しかった。世間は“ロハス”ブームで、お客様がビビットに反応してくださった」と井上氏は言います。 気付けば連夜満席の繁盛店になった『HOKU』に転機をもたらしたのは、妻の真理子氏の存在でした。

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計算も計画性もゼロ、出会いと土地の縁に導かれて

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真理子氏は、新潟県三条市で日本料理の店を営む両親のもとに生まれました。しかし、20歳の頃に父を、その10年後に跡を継ぐはずの兄を亡くしてしまいます。母親がひとりで細々と続けていた店を引き継ぐ形で、カフェのような店ができないか。そう考えて東京で飲食店勤務を続けてきました。ホテルやレストランで働き、ワインショップを併設したワインバーの立ち上げにも関わるなどしてキャリアを重ねてきた真理子氏。井上氏との出会いは『HOKU』にゲストとして食事に訪れたのが始まりです。いつしか井上氏と意気投合し、店で働くようになり、やがてプライベートでもパートナーとなります。時期を同じくして、井上氏は東京以外で店をやりたいという想いを強くしていきます。

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外観からは一転、店内は和の設えを所々に残しながらもモダンな印象。床の間を改装したセラーには、グランヴァンからナチュラルワインまで、2,000本ものワインが用意されている。サービスは真理子氏の担当

「もともと、僕も香川の田舎育ち。自然が近くにある環境が性に合っているなあ、と。東京は家賃も高く、毎晩満席でも経営は決して楽にならない。自分たちにとってサスティナブルな形って何なんだろう、と考えるようになりました」と井上氏は話します。 休日になれば夫婦で三浦海岸に釣りに出かけていたという井上夫妻。初めは鎌倉や逗子・葉山などに店を出すことを考えていました。

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「新潟産天然オナガガモのバロティーヌ」。天然鴨のフォアグラ化したレバーと「佐渡の黒ダイヤ」の異名を持つ黒イチジク「おぎビオレー」を使用。ビーツとおけさ柿の干し柿、ルレクチェのチャツネを添えて

しかし、調べてみると店舗物件の家賃は東京並み。環境は好ましくても「経営のための営業」から自由になりたいという理想にはほど遠いというのが現状でした。そこに新潟県三条市という移転先候補が浮上します。いずれ、真理子氏が帰らなければと思っていた場所。そう、『UOZEN』の前身は、真理子氏の両親が営んでいた日本料理店『魚善』なのです。 「どうせ東京を離れるなら、知らない土地で料理をしてみたいという気持ちが日ごとに増していった。迷いも恐れもありませんでした」と井上氏。 人気絶頂のさなかに店を閉め、夫婦で新潟県三条市へ。料理人・井上和洋氏の第二章の始まりです。

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妻のルーツでもある土地に根ざした店に、新たな命を吹き込んで

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佐渡牡蠣と月の輪熊のひと皿。生の椎茸のスライスと木の芽、香茸のパウダーが、強い旨味に複雑さを与えている

『Restaurant UOZEN』は2013年11月に産声を上げました。外観は真理子氏の両親が営んでいた日本料理店そのまま。店名もあれこれ考えましたが、この地に導いてくれた先代への敬意から、『魚善』を欧文にして『UOZEN』に。店内も古い柱や梁は極力生かしてリノベーションしました。一方、移転を機に、料理は目覚ましい進化を遂げています。井上氏に劇的な意識の変化をもたらしたのは、自らの手で食材を調達するようになったことだといいます。 「野菜を自分で育てる。山で獣や野禽(やきん)を仕留め、海で魚を釣る。自然からもたらされた味をそのまま知ってほしいから、余計なものは削ぎ落とした上で、いかにこの土地ならではの素材を感じてもらえる料理にするか。それを第一に考えるようになりました」と井上氏は言います。

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新潟産天然真鴨のロースト。新潟市『糀屋団四郎』の味噌が隠し味に。ポン菓子風の米のスナックと、三条産ポワローのロースト、フリットが皿を彩る

スペシャリテは、「佐渡産ボタン海老のブイヤベース仕立て」。新潟県沖で水揚げされる南蛮海老と呼ばれる甘海老(正式にはホッコクアカエビ)を生かした料理を作れないかと考えたひと皿で、『HOKU』時代から作っていた甘海老のブイヤベースを再構築しました。生の海老に海老のコンソメを纏わせたひと品は、日本海が育んだ極上のボタン海老のピュアな甘みを堪能できます。 2週間前後、骨つきのまま熟成させた佐渡の寒ブリは、カルパッチョやタタキで供されるかと思いきや、薄い衣をつけたカツレツにするという変化球。火を入れることで、肉を彷彿とさせる力強い食感と濃厚な脂の甘みが最大限に引き出されています。

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秋から冬にかけての新潟の自然を映し出したアミューズ。上は、佐渡産コシヒカリのチップスに月の輪熊のラグーとラルドを載せたもの。右の球状のコロッケの中身は、カスレ(新潟産天然真鴨腿肉のコンフィと自家菜園で採れた白インゲン豆の煮込み)。左下の切り株の上には、越乃黄金豚のソシッソンや上越鹿のジャーキー。大地に見立てた盛りつけで

海に山、畑や田んぼから集められた新潟県産食材が一堂に会するアミューズから、井上氏自らが仕留めた真鴨のロースト、デザートまで全8皿のコースは、まず素材の味ありきながら、単に「シンプルな料理」とも異なります。必要な手間を過不足なくかけることで滋味を余すところなく引き出し、わくわくするようなプレゼンテーションで新潟の海や山、自然の中へ食べ手を導きます。食材が育まれる場所の風土を、春夏秋冬の気候を知る料理人だからこそ作れる味。都会で、頭の中で理想としていた「ロハス」「ヘルシー」の何歩も先へ。三条の地が、井上氏を導いたのです。

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