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2021.09.27
城下町の情緒と季節の移ろいを感じに。東北の小京都「角館」で過ごす1泊2日旅
秋田県内陸部に位置する角館は「みちのくの小京都」と呼ばれる歴史情緒あふれる城下町。黒板塀の武家屋敷が藩政時代からの風情でたたずみ、レトロな蔵や昔ながらの手仕事も残っています。秋田新幹線が停車する角館駅を起点に見所がコンパクトにまとまっているので、徒歩や自転車でめぐれるのも魅力。今回は週末にでかけたい角館へ、1泊2日の旅プランをご案内します。
タイムスリップしたような気分になる風光明媚な町並みの武家屋敷通り
重厚な黒板塀とそれを覆う木立が印象的な武家屋敷通り
藩政時代、佐竹北家の城下町として栄えた角館。三方を山々に囲まれ、桧木内川に沿うように広がる風光明媚な町並みには、今もしっとりとした雰囲気が漂い、みちのくの小京都と呼ばれています。町の北側に位置する武家屋敷通りは、黒板塀や立派な門が継ぎ目なく続く情緒あふれる場所で、通り沿いには今も6軒の武家屋敷が現存します。 なかでもひと際目立つ「角館歴史村・青柳家」は、400年の歴史を誇る武家屋敷。約3000坪もの広々した邸内では、茅葺き屋根の母屋や武器蔵、カフェが併設するアンティーク館などをめぐることができます。
薬医門とは、かつて藩に功績が認められた武家だけが特別に建造を許された格調高い門のこと
武家屋敷「石黒家」の母屋の座敷から庭を眺める
武家屋敷通りの北端に建つのが、角館のなかで最も歴史がある武家屋敷「石黒家」。座敷に上がって建物内をゆっくり見学することができます。武家屋敷通りを歩いていると歴史の息吹が感じられ、まるで江戸時代を旅しているような気持ちになります。
「武家屋敷通り」の記事はこちら
武家屋敷通り
ブケヤシキドオリ
レトロな蔵造りの商家が並ぶ外町エリアでおみやげ探し
1891(明治24)年に建造された「安藤醸造本店」の煉瓦蔵
江戸時代後期から大正時代に建造された蔵も数多く残っています。町の南側に広がる外町エリアには、今も歴史ある蔵造りの商家が点在。 煉瓦造りが素敵な「安藤醸造本店」は、1853(嘉永6)年創業の味噌・醤油の老舗。明治時代に建造された煉瓦造りの蔵座敷が無料で見学できます。昔の商家の雰囲気のなかで選ぶ、無添加・天然醸造で手づくりされた味噌や醤油、漬け物の買い物も楽しみです。 ほかにも明治時代後期から大正時代に建てられた5棟の蔵と母屋が現存する「あきた角館西宮家」もあります。蔵を利用した雑貨店やレストラン、資料館などがあり、蔵めぐりができますよ。
「あきた角館西宮家」のレストラン北蔵
「蔵の町」の記事はこちら
安藤醸造本店
アンドウジョウゾウホンテン
「料亭 稲穂」で庭を眺めながら味わう角館懐石
昼の角館懐石2420円~。写真は3630円
みちのく小京都を散策したあとは、創業約70年の老舗料亭で「角館懐石」をいただきましょう。伝統の郷土料理に店主の工夫を凝らした角館懐石は、この土地ならではの味を追求した料理。素材は生産者の顔が見える地元の旬素材と無添加の調味料を使っています。 角館で昔から食べられている八杯豆腐(はちへとうふ)の汁もの、いぶりがっこの甘露煮や紫芋寒天イワナの一夜干しなどがカラフルに並ぶ焼き物……などが一品一品供されます。秋田名物のきりたんぽは天ぷらや田楽で味わえます。 料理はもちろん、女将さんのあたたかみある秋田弁の接客や、中庭の緑を眺めながらゆっくりと食事が楽しめる空間も魅力です。
自家製の玉味噌を付けた田楽でいただくあきたこまちのきりたんぽ
「料亭 稲穂」の記事はこちら
料亭 稲穂
リョウテイイナホ
日々の生活を豊かにする角館ならではの手仕事の品を探しに
1851(嘉永4)年創業の樺細工の老舗。蔵を改装した風情を感じる店内
角館はクラフトの町。自然素材のあたたかみとデザイン性の高さを兼ね備えた手仕事の品に出会えます。なかでも山桜の樹皮を使う樺細工は、角館に唯一技術が受け継がれている伝統工芸品。 1851(嘉永4)年創業の「藤木伝四郎商店」は、7代にわたって樺細工製造業を営む老舗で、江戸時代末期の蔵をリノベーションした店内には樺細工の品がまるでアート作品のように飾られています。現代の生活空間になじむ、モダンなデザインの茶筒やテーブルウェアが多く、手にとって質感を確かめながら選ぶことができます。
伝統的な山桜の樹皮に、さくら、くるみ、かえでの素材を取り入れた革新的なデザインの茶筒16500円~
「角館クラフト」の記事はこちら
藤木伝四郎商店
フジキデンシロウショウテン
蔵をリノベーションした宿「和のゐ 角館」で非日常を過ごす
レトロな蔵を一棟まるごとプライベート空間として利用できる
角館に宿泊するなら、「和のゐ 角館」はいかがでしょうか。角館には歴史ある蔵が数多く残されていますが、和のゐ 角館は江戸時代末期から大正時代に建造された蔵をリノベーションした一棟貸しの宿。現代的な利便性のなかで、昔の生活空間の雰囲気を感じられるのが魅力です。 客室となる蔵は、「西宮家 武士蔵」「西宮家 ガッコ蔵」「反物蔵」の3棟で、それぞれ2階建て。一階はリビングルームで囲炉裏が切られ、カフェカウンターが配されています。バスルームなどの水回りや床暖房、Wi-Fiなど設備は最新。ベッドルームは二階にあり広々。 時を重ねた蔵だからこそ持つ静寂が心地よく、日常を忘れリラックスできる宿です。
西宮家 武士蔵(朝食付1棟39000円~)のリビングルーム
「和のゐ 角館」の記事はこちら
和のゐ 角館
ワノイカクノダテ
武家屋敷や黒板塀、蔵が歴史の面影を伝える古都、角館。清涼感あふれる緑の香りと、耳に心地よい鳥の声。角館の町を歩いていると時間の流れはゆるやかで、どこか懐かしい気持ちにさせてくれます。次の旅の参考にしてみてくださいね。
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本間景子 写真:板元義和
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