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2025.05.09
京都「うつわと古物 幹」で、物語のある手なじみのよいうつわと一期一会の出会いを
京都御所を守るようにさざめく木立ちや、人々が憩う芝生広場が広がる京都御苑。その東南角にあたる河原町丸太町の交差点から少し北へ歩いたところに「うつわと古物 幹(うつわとこぶつかん)」があります。こちらは焼き物の古い技法をリスペクトし、古物の使い込まれた味わいをこよなく愛する店主がセレクトしたギャラリーショップです。ここで過ごす、作家もののうつわやアンティークに宿る物語を愛情深く語る店主の話に耳を傾ける時間はとても贅沢なひととき。京都での旅の思い出がよみがえる、うつわとの出会いを楽しんでみませんか。

河原町通りに佇む静謐な町家ギャラリー

ひときわ静けさを湛えた店構え
「うつわと古物 幹」が店を構えるのは、京都駅から市バスで北へ20分ほど。河原町丸太町で下車し、河原町通り沿いに北へ3分ほど歩いた先の、古い長屋や町家を改装したレストランやショップが軒を連ねる中の一軒です。横壁に小さく貼られた「幹」の文字と、ガラス扉に控えめに書かれた店名を見つけてくださいね。

今のものと古いもの、ふたつの魅力に手をのばして

1階の印象的な展示台はフランスの骨董市で見つけたもの
それぞれの個性が光る作家もの、唯一無二のヴィンテージやアンティークと、うつわを愛する人は好むジャンルだけを追い求めがちなのだとか。店主の下西幹さんは、フラットにそれぞれの良さに触れてほしいと、現代作家のうつわと骨董を同じテーブルに並べています。

丸みを帯びた味わいがたまらない古物たち

ミニチュアサイズの「珉平焼茶器」(20000円)
長年ヨーロッパアンティーク家具を扱う店で働いていた店主は、古物なら使い込まれたものに強く惹かれると言います。特に日本の陶磁器は高品質で、良いものは直しながら受け継ぐ文化から状態の良いものが数多く残ります。当時大量生産されたものでも、それぞれの暮らしの中で、他にない表情が出てくるところが面白いのだとか。

にかわや刃物の痕など、職人仕事のあとを残した「張子人形型」(55000円)
店内のいたるところにそっと飾られているオブジェや什器として使われているヨーロッパのアンティーク家具たちは、多くのものは買い求めることもできます。ときめく出会いがあれば、一期一会の機会を逃さず手に取ってみるのもよいかもしれませんね。

古さと新しさを内に秘めた現代作家もの

海外アンティーク、国内の骨董、現代作家ものが使い込まれた棚に横並び
最初は古いうつわ一筋だった店主ですが、ある時唐津焼の陶工・村山健太郎さんの窯開きに立ち会い、作り手の人柄にも触れたことで、たちまち現代作家の作品にも興味が湧いたそうです。長く九州に住んでいた縁もあり、「うつわと古物 幹」には唐津や有田の作家の作品が数多く並びます。 「私が扱うのは、登り窯や薪窯を持ち、古いものへのリスペクトを持っている作家さんが中心です。のちのち骨董と呼ばれるものに育っていくような、使い込むほどに味の出るうつわになってほしいと思っています」と思いを語ってくれました。

谷穹作「おやつシリーズ」(各2200円)
店内をめぐっていると、いかにもモダンで遊び心のある作品も。「おやつシリーズ」は、信楽焼の谷穹さんの作品。信楽焼の特徴である緋色を出さないよう、お菓子作りのように低温でじっくり焼き上げた真っ白の菓子皿です。しっとりとした質感やなめらかな食感を思い起こさせるシンプルなフォルムは、ティータイムのおしゃべりが弾みそうです。 落ち着いた町家の中で静かに一人吟味するのも楽しいけれど、うつわづくりや作家さんとの出会いのお話や、古物がたどってきたルーツなど、ものに宿る物語を店主に聞かせてもらうのもおすすめです。穏やかな語りに耳を傾ける中で、旅の記念になる出会いがありますように。
うつわと古物 幹
ウツワトコブツカン
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文:Union Synapse(鈴木茉耶) 撮影:成田直茂
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