料理を通して台湾をもっと知ってほしい

黄色いのれんと立て看板が営業中の目印

名古屋から車で1時間半ほどの岐阜・郡上八幡。岐阜県のほぼ中央に位置する郡上市の八幡エリアは、夏の郡上踊りと名水の町として知られています。 町の中心部にある商店街、新町の通り沿いに「台椀」がオープンしたのは、2024年8月。郡上市の男性と結婚して10年前に移住した、台湾出身の大坪あいりさんが営むお店です。娘さんが生まれたことで、“故郷である台湾の料理を食べてもらいたい” “日本の人たちに、台湾のことをもっと知ってほしい”という想いが強くなった大坪さん。その想いを形にしようと、郡上八幡にお店をオープンしました。

郡上の町家と台湾テイストのバランスがほどよい

外光が入り、明るい雰囲気のカウンター

郡上八幡に多い町家を生かした、台椀の店舗。狭い間口から入り、奥に長い造りになっています。入口すぐの土間にはキッチンに面したカウンター席があり、台湾の食堂のようにカジュアルな雰囲気。大坪さんが調理する様子が間近に見られて、会話も楽しめます。

カウンターとはがらりと変わって、座敷は落ち着いた雰囲気

お店の奥は靴を脱いでゆっくり過ごせる座敷席で、町家らしい風情が感じられます。階段箪笥を上った2階にもテーブル席が一つ。開放感のある吹き抜けの空間も魅力的です。 町家の雰囲気になじむレトロな照明や古材のカウンターは、地元の古道具店「gugulab（ググラボ）」によるもの。台湾の飾りものも店内のあちこちにあり、日本と台湾のテイストが調和して、あたたかな雰囲気を醸し出しています。

キッチンの上に位置する2階の席。少し暑いので、夏はあまりおすすめではないそう

台湾らしさを感じるものが店内のあちこちに。用紙に書いて注文するのも台湾風

定番だけでなく、珍しい台湾料理も味わって

ルーロー飯（1000円）。きゅうりの右側にのっているのは、台湾ではおなじみの魚フレーク。ほんのり甘いふりかけのようで、混ぜて食べれば味変に

本格的な台湾の味を伝えたいと、日本風にアレンジはせず、調味料も台湾のものを使用。大坪さんは台南出身ですが台湾各地で暮らした経験があり、各地の味やレシピを料理ごとに柔軟に取り入れています。 ランチタイムの通常メニューとして、台湾の定番料理「ルーロー飯」や、台湾焼きそば、細切り豚肉の卵チャーハンなどがそろっています。手切りで脂を取り除いた豚肉は脂っぽさがなく、スパイスも控えめで食べやすいルーロー飯。箸休めになる甘酢漬けのきゅうりや、たくわんとの相性も抜群です。

煮込んで一晩寝かせるルーローハンの豚肉。特製の台湾醤油が効いている

月替わりメニューの一例、ルーパイグー（1500円）。豚肉の衣にはタピオカ粉を使っているので、プルンとしておいしい。バランスを考えて野菜もたっぷり、高菜や煮玉子も添えて

ランチには月替わりのメニューもありますよ。取材時のメニューは、台湾の駅弁の定番「ルーパイグー」。大きな豚肉がのっていて、ボリューム満点！と驚きますが、丁寧に筋切りしたロース肉はやわらかく、ご飯によく合う味付けで、もりもり食べ進んでしまいます。 「定番料理だけでなく、あまりなじみのないメニューも味わってみてほしい」と大坪さん。やきそばやチャーハンもおすすめとのことなので、違うメニューを選んでシェアするのもいいですね。

朝の身体にやさしくなじむ、台湾の朝食

シェントゥジャンとマントウ（650円と300円だが、セットで50円引き）。すべすべした見た目がかわいらしいマントウは、中華まんの皮のようなもの。手づくりの蒸したてで、写真の黒糖味はほんのり甘い

金曜と土曜限定で、朝8時30分から朝食も楽しめます。栄養満点の豆乳スープ「シェントゥジャン」に、ふんわりした台湾風の蒸しパン「マントウ」や卵クレープを組み合わせて。マントウに、ネギ入りの卵焼きをはさむこともできますよ。シェントゥジャンには、揚げパンでなく、仙台の油麩をトッピング。やさしい風味ととろみ、あたたかさが朝の身体にすーっとなじんで、元気をもらえそうです。この朝食をお目当てに少し早起きして、郡上八幡を目指してみてはいかがでしょう。

きっと、郡上も台湾も好きになる

「台」の字とお椀をモチーフにしたロゴは台湾の学生がデザイン。いくつも貼られた大入り袋は、地元のお祭りで頂くもの

台湾と郡上八幡、どちらの魅力も兼ね備えた、この町ならではの台湾料理店「台椀」。明るくて親しみやすい大坪さんの人柄も、お店を訪ねたくなる理由の一つです。台湾大好き♪という人も、まだあまりなじみのない人にもおすすめのお店。ぜひ郡上八幡で、台湾料理のおいしさや台湾の魅力を感じてみてくださいね。