潮風サイクリングで「ゆめしま海道」の島さんぽ

本州と四国を結ぶ「しまなみ海道」の東隣に位置する離島の町・愛媛県上島町。弓削島～佐島～生名島～岩城島の4つ離島には「ゆめしま海道」と呼ばれる橋が架かり、島を行き交う全航路を合わせると1日150便近くも。船と橋を利用することで、気軽に瀬戸内の離島めぐりが楽しめる、今注目のエリアなんです。

（上・右下）4つの離島に3つの橋が架かるゆめしま海道。いくつもの島が重なる様子から多島美と称される美しい島風景が広がる　（左下）島をめぐるとあちらこちらで柑橘を見かける。岩城島では防腐剤・ワックス不使用のグリーンレモン「青いレモン」が特産品

新幹線のぞみの発着駅でもある広島県のJR福山駅から高速バス「シトラスライナー」で約1時間、しまなみ海道で結ばれる因島の土生港へ。そこからフェリーに乗り換えわずか3分。「ゆめしま海道」のひとつ、生名島へとたどり着きます。港に降り立つと穏やかな島時間が流れ、訪れる人をやさしく迎えてくれます。

（上）平坦な道が続く絶好のサイクリングロード　（左下）島内の3か所に描かれた防波堤ペインティング　（右下）ゆめしま海道を周遊する「円」、自転車の「輪」、訪れた先で出会った「縁」をイメージしたアート「YUMESHIMA CIRCLE」

そんなゆめしま海道の島々をめぐるなら、瀬戸内の潮風や橋上を渡る爽快感も一緒に楽しめるサイクリングがおすすめです。島には信号とトンネルが１つもなく、道も走りやすく舗装され、さらに交通量も少ない、初心者向けのサイクリングコース。港から近い3つのサイクリングターミナルでは自転車がレンタルでき、クロスバイクや電動タイプなど種類も豊富にそろいます。ゆめしま海道を望むビュースポットに設置された「YUMESHIMA CIRCLE」や若手アーティストによる「防波堤ペインティング」などの島アートも楽しみながら、サイクリングで々をめぐってみましょう。

【弓削島】まずは「上島エコツーリズム」で瀬戸内海を舞台にしたSUP体験

静かな海で海上散歩

ゆめしま海道の島旅は、マリンアクティビティから始めてみませんか。多くの島々に囲まれるため波穏やかな瀬戸内海は、初心者でも気軽に海遊びが楽しめる絶好のスポットです。今回は、浮力のある専用ボードの上に立って、パドルを漕ぎ進むSUPにトライ。カヤックよりも視点が高く、より遠くの風景が見渡せるのも魅力のひとつです。

白砂青松が広がる松原海水浴場でSUPが楽しめる

会場は、愛媛県で快水浴場百選に唯一選ばれた松原海水浴場（または隣接する日比海岸）。インストラクターライセンスを持ったガイドスタッフと一緒にめぐれるので、初心者でも安心です。早朝、午前、午後、サンセットから時間帯が選べ、幻想的なもやがかかる朝、空と海が溶け合う青の世界に包まれる日中、色彩のグラデーションに染まる夕暮れ時など、時間ごとに瀬戸内海が見せる表情もさまざま。ほかにも、シーカヤックやセーリングなども楽しめ、マリンレジャー施設も島内にはいろいろ。まずはマリンアクティビティで島の魅力を存分に体感しましょう。

【弓削島】ベーグルをおやつにパクリ♪ 路地裏に建つベーカリーへ

（上）土壁や飴色の梁が残る味わい深い店内へ、奥のキッチンから香ばしいパンが運ばれてくる　（左下）瀬戸内らしい焼板の外壁　（右下）食パンには313の焼き印が押される

島の暮らしが息づく細い路地裏にひっそりと佇むベーカリー「Kitchen 313 Kamiyuge」でおやつタイム。登録有形文化財の築約110年の古民家の蔵をリノベーションした空間に、店主・宮畑真紀さんが手ごねした生地で焼き上げるベーグルと食パンが並んでいます。

ベーグルは1個200円～。定番のプレーンのほか、レーズンやセサミなど

食感はもっちり＆しっとりで、ベーグルは常時8～9種類が並び、時には島の柑橘の自家製フィリングを使ったものも登場。その味を求め、オープン前から島内外から多くの人が列を成す島の人気店です。

（左）島で採れた野菜をたっぷり使ったベーグルサンド。丁寧に仕込んだ自家製シロップのドリンクはやさしい味わい　（右上）パラソルの下で味わって　（右下）自家焙煎珈琲600円。100年以上前の土壁を粘土にし、向島の陶芸家に特注したマグカップも素敵

ベーグルは店内のソファ席はもちろん、ハーブや季節の花々が植えられた前庭の屋外席で味わえます。好みのベーグルに、プラス300円で自家製ハムと島野菜の具材を入れたベーグルサンドにすることも。四季折々の島の柑橘や果物で作った果実ソーダ、自家焙煎珈琲などのドリンクと一緒にどうぞ。

【弓削島】海を見渡す眺めも魅力的。個性豊かな島宿ステイ

（左上）高台に建つリゾートホテル　（左下）一面ガラス張りのレストラン　（右上）白と青を基調にした和洋室　（右下）地中海をモチーフにした洋風の風呂

遠くに瀬戸内海を望む露天風呂があるホテル、古民家をリノベーションしたゲストハウスや一棟貸しの宿、料理自慢の民宿など、スローな島時間が楽しめる宿がゆめしま海道に点在しています。今宵の宿泊先は、宿が多く集まる弓削島からピックアップ。 たとえば「インランド・シー・リゾート フェスパ」。ここは、全室東向きのオーシャンフロントのホテル。ロビー、客室、風呂、レストランと、館内のいたるところで瀬戸内の絶景が迎えてくれます。客室は、露天風呂付きの和洋室、シンプルモダンなツインルーム、風情ある和室の3タイプ。夕食には、島の特産品を用いた会席料理がいただけます。レストランや風呂は日帰り利用もOK。宿泊はもちろん、島の拠点としても頼りになるスポットです。

（上）2階の屋根裏には、ソファと2台のベッドを配置　（左下）目の前が海という好立地に建つ　（右下）ピアノやギターなどの楽器もある

弓削島の中央部に位置する明神地区に2024年にオープンした「Common宿みょうじん」は、民家をリノベーションした海辺の宿。1階には６畳と８畳の2間続き部屋とトイレのほか、共用のキッチンとお風呂がレイアウト。2階には屋根裏を利用したベッドルームとトイレがあり、窓の外に広がる瀬戸内海のロケーションが魅力です。アメリカの西海岸で10年以上過ごしたオーナー・藤井明子さんの感性を現したような和と洋がミックスした宿は、1棟を丸ごと貸し切ることもできますし、1階と2階のフロアを分けて最大2組までが宿泊可能です。

【弓削島】　夜ごはんは、瀬戸内の幸を主役にした寿司居酒屋「ととや」で召し上がれ

海鮮生春巻き1200円、上にぎり1980円

観光拠点「海の駅舎ふらっと」のほど近く、ヨット乗りの常連客も多い寿司居酒屋。京都の和食店で修業した大将・岩越竜二さんが切り盛りしています。こちらでいただけるのは、瀬戸内海であがった魚介を主役にした握り寿司や脂ののった鯖おぼろ寿司、海鮮春巻きといった魚介を中心にした料理。たこぶつやあさり酒蒸しといった居酒屋メニューもそろい、地元の飲み会や宴会で利用されるアットホームな雰囲気も魅力的です。

（上）上島町役場の弓削支所の1階にある　（下）ゆめしま海道の素材で造られたクラフトビール

岩城島のレモンの皮を使ったクラフトビールもあり、料理のおいしさを引き立たせてくれます。店内には、大将との会話も楽しいカウンター席のほか、テーブル席、掘りごたつ式の小上がり座敷があり、思い思いの席で過ごすことができます。メニューの一部は持ち帰りOKなので、宿泊先でゆっくり味わうのもいいですよ。

【弓削島】　2日目は「ゆげ手まり作り体験」を島のお母さんたちと一緒に　

体験料は1000円

ゆめしま海道ではマリンアクティビティだけでなく、島に伝わる伝統体験が楽しめるのも魅力です。そのひとつが「ゆげ手まり作り体験」です。愛媛の一部の地域では、12月最初の巳（み）の日、または午（うま）の日に、故人の初正月を祝う伝統行事「巳午（みうま）」があり、弓削島では手まりを飾る風習が残っているそう。今も島のお母さんたちの手により、色鮮やかな刺繍糸で幾何学模様の手まりが作られています。

（左上）カラフルな糸から好きな色を選ぶ　（左下）島のお母さんの指導のもと手まりを作成　（右上・右下）糸をかがって模様を作る

体験で作るのは、直径3cmほどのストラップ。赤、紫、白などベースとなる土台の色を選んだら、それに合う色の糸も選びます。「ここはね、次はね」と島のお母さんに教えてもらいながら、一針一針、丁寧にかがっていく細かな作業が続くこと約2時間。世界にひとつだけの手まりの完成です。島の一部の店舗では、お母さんたちが作った手まりストラップも販売していますよ。

【佐島】元保育園をリノベーションしたブックカフェでランチタイム

（左上・右上）細長い廊下の一角には、棚や空き箱を利用して本棚を設置　（左下）カフェスペースの壁には、フランス人アーティストによる壁画も　（右下）佐島港から徒歩5分ほど場所に建つ

山之内彩美さんと信介さん夫妻が営むレトロかわいいブックカフェ。建物は約70年前に建てられた保育園だったもので、どこか懐かしい下駄箱、細長い廊下、取っ手の位置が低い引き戸など、当時の面影を残しつつセルフリノベーション。店名のとおり、小説から絵本まで多彩なジャンルの本が店内のいたるところに並び、本を読みながらくつろぐことができます。

（左）スパイスチキンカレー（ミニコーヒーゼリー付き）1200円　（右）ほっくりと炊いた小豆、金柑のシロップ漬け、黒糖ウーロン茶ゼリーなどをトッピングした豆花500円。はっさくの自家製シロップドリンク500円。

こちらでいただけるランチは、飴色になるまでタマネギを炒めたスパイスチキンカレーと、手ごね生地が自慢の4種のピザ。柑橘シロップのドリンク、甘酒とはれひめのシャーベットといったスイーツやドリンクもそろい、そのほとんどが手作りです。ご夫婦の人柄を現したような力強くもやさしい味わいの一皿を、のどかな島の空気とともに味わって。

【生名島】　「ゆめしま珈琲焙煎所 －侘数寄－」で景色とスペシャルティコーヒーでひと息

（上）センスのよさが漂う店内　（左下）窓の外には刻々と変化する瀬戸内海の景色が広がる　（右下）豆の購入もできる

生名港務所2階に2024年7月に誕生した、上島町初の自家焙煎珈琲専門店。国も時代もさまざまなインテリアに彩られた空間に満ちるのは、焙煎されたコーヒーのよい香り。ロケーションも素晴らしく、弓削島と佐島、弓削瀬戸の瀬戸内らしい風景が、まるで絵画のように見渡せます。

ドリップコーヒー500円、自家製プリン300円

中米グアテマラを中心に厳選した生豆を、コク深い中深煎りや爽やかな中浅煎りなど、豆の個性を引き出すように店主・尼子司さんが焙煎。豆の果実味を感じられるよう、シングルオリジンで提供しています。豆は常時4種類ほどそろい、ペーパードリップで淹れるドリップコーヒーのほか、カフェオレ、エスプレッソなどでいただけます。コーヒーのお供に味わいたいスイーツは、自家製プリンやマスカルポーネのチーズケーキなど約3種類がスタンバイ。穏やかな瀬戸内海を眺めながら、スペシャルティコーヒーと非日常のひと時をゆっくりと堪能してくださいね。

【岩城島】「リモーネ・プラザ」で島みやげをお買い物

ミニレモンケーキ1個216円

旅の最後は、岩城港の目の前に立つ「リモーネ・プラザ」へ。ゆめしま海道のおみやげが一堂に集まる物産館で、なかでも「青いレモンの島」と称される岩城島特産の柑橘みやげが充実しています。特に人気なのが、自社工房で作るレモンケーキ。生地にたっぷりのレモン果汁を練り込み、しっとりとした口当たりに仕上げています。

（左上）いわぎレモン果汁630円、いわぎ姫レモン果汁980円　（左下）弓削塩は各640円。あまも塩、ひじき塩など4種類ある　（右上）レモンリキュールのリモンチェッロ2530円　（右下）いわぎの島ジャム1個800円、レモンカード980円

ほかにもレモンカードやレモンマーマレードといったジャム、100％ストレートの無添加レモン果汁、レモンの爽やかな香りに癒されるエッセンシャルオイル、レモンを使ったリキュールのレモンチェッロなど、そのバリエーションは実にさまざま。かつて京都東寺の「塩の荘園」だった弓削島特産の塩、瀬戸内の豊かな海が育む海苔など、島みやげは旅の最後にまとめて購入しましょう。

いかがでしたか？　船と橋で自由にめぐることのできるゆめしま海道で、非日常の瀬戸内トリップへとでかけてみませんか。

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たまみジュース&はれひめジュース

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