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2026.04.06
玉川上水の遊歩道を抜けて。鷹の台の隠れ家カフェ「いずん堂」で出会う、旬野菜のキッシュと贅沢おやつ
西武国分寺線・鷹の台駅から、玉川上水沿いを歩くこと約15分。武蔵野美術大学のすぐそば、小平市の静かな住宅街の中に、そっと店を構える「いずん堂」。ここでいただけるのは、オーナー夫婦のこだわりと愛情がぎゅっと詰まったメニューたち。旬の地場野菜を主役にしたふっくらキッシュや、一つひとつ丁寧に焼き上げられた手作りおやつが楽しめます。
「好き」が凝縮された空間で、美術館のラウンジのような余韻を
静かな時間が流れる落ち着いた雰囲気の店内
「いずん堂」の扉を開けると、そこにはご夫婦の「好き」が凝縮された空間が広がっています。まず目を奪われるのは、店内に並ぶ家具や食器の美しさ。どれもがまるで一つのアートピースのようですが、決して気取った冷たさはありません。 お話を伺うと、椅子から小さなカップに至るまで、基本的にはすべて「作っている人の顔が分かる」作家さんのものを選び、大切に使い続けているのだそう。おふたりが「本当に良い」と心から惚れ込んだものだけを、長い時間をかけてコツコツと集めて出来上がった場所なんです。
「美術館に併設されているラウンジのような、余韻に浸れる場所にしたい」そんな想いから生まれた空間は、実際に近くの武蔵野美術大学の美術館帰りに立ち寄るお客さんも多いのだとか。静かに展示の感想を反芻したり、お気に入りの本を広げたり…。日常からふっと切り離されたような、贅沢な静寂がここには流れています。
地元の旬野菜をたっぷり使ったふんわり「キッシュ」
「ひき肉とほうれん草のミートキッシュ」(1,100円)
「いずん堂」を訪れたなら、まず味わってほしいのが、オープン以来ずっと愛され続けているシェフ自慢の「キッシュ」です。厚くふっくらと焼き上げられたキッシュの横には、近隣の小平や国分寺の畑で採れた、エネルギー溢れる旬野菜がたっぷりと添えられています。 実はこの一皿、主役はキッシュではなく「野菜」なのだそう。「地元の美味しい野菜をしっかり味わってほしくて」そんなシェフの想いから、野菜を引き立たせるために、キッシュそのものは驚くほど軽やかな仕上がり。卵液(アパレイユ)の配合にこだわり、ボリュームがあるのに重たさを感じさせない、絶妙なバランスを実現しています。
中にはひき肉とほうれん草がたっぷり
この日いただいたのは「ひき肉とほうれん草のミートキッシュ」。フォークを入れると、中から地元のほうれん草の鮮やかな緑が顔を出します。一口運べば、お肉の旨みがじゅわっと広がり、それを包み込むアパレイユのなめらかさに、思わずうっとり。主張しすぎない優しい卵の風味が、主役である地元のほうれん草の甘みを、そっと引き立てているんです。添えられたシャキシャキの生野菜や、程よい酸味のピクルスを合間に挟めば、最後の一口まで新鮮な驚きが続きます。
会話が弾む、フランスの伝統菓子「コンベルサシオン」
「コンベルサシオン」(1個 700円)
「いずん堂」では、季節の移ろいを感じさせてくれる手作りおやつも、メインディッシュに負けないほどの充実ぶりです。こちらはフランスの伝統菓子「コンベルサシオン」。フランス語で「会話」という名の、なんともロマンチックな響きを持つお菓子です。 その由来には諸説あるそうで、「表面に描かれた『×』の模様が会話を表しているから」とか、「あまりの美味しさに、思わず会話が弾んでしまうから」なんて説も。中でも一番素敵なのは、「口の中で響くバリバリ、サクサクという音が、まるでお喋りしているみたいだから」というお話。
口の中でサクサクと軽やかな音がします
一口食べると、その名の通り、驚くほど軽やかで小気味よい音が「サクッ、サクッ」と響きわたります。まさに、パイ生地が口の中で楽しくお喋りを始めているかのよう。香ばしく焼き上げられたパイの中には、しっとりと濃厚なアーモンドクリームと、甘酸っぱいアンズのジャムが隠れています。ひと口ごとに、バターの芳醇な香りとアンズの爽やかな風味が重なり合い、思わず目を閉じてじっくりと味わい尽くしたくなります。
小さな宝石箱のよう。ときめくお菓子「いとをかし」
「いとをかし」(900円)
思わず息を呑むほど愛らしい一皿の名前は、「いとをかし」。器の上に、小さなお菓子たちがまるで行進するように整然と並んでいます。この日は、濃厚なショコラマカロンに、ザクザクとした食感が楽しいパルミエシュガー、繊細なラングドシャ、お口の中でとろける生キャラメル、そして宝石のように煌めくパート・ド・フリュイの5種類。驚くことに、これらすべてが手作りなんです。
どれから食べようか迷う時間も楽しい
奥様いわく「私自身が食いしん坊で、自分が本当に美味しいと思うものを食べたいから作っているんです」とのこと。国産の発酵バターや厳選した小麦粉、旬のフルーツ。「自分が食べたいもの」を基準に、一切の妥協なく素材を選び抜き、日々コツコツと丁寧に仕立てられています。 普段ならパクッとすぐに食べてしまうような小さなお菓子を、ここまでじっくり、五感を研ぎ澄ませて味わうなんて、いつぶりでしょうか。「いと、をかし」。古の言葉が持つ「趣深い」という響きが、これほどしっくりくる一皿はありません。
芳醇なバターの香りに包まれる、季節限定の「ナポレオンパイ」
「ナポレオンパイ」(900円)
こちらは、寒さが本格的になる時期にだけ登場するという「ナポレオンパイ」。黄金色のパイ生地に、ぽってりと濃厚なカスタードクリーム、そして真っ赤な苺。フォークを立てると、「パリッ、サクッ」と小気味よい音が響きます。実はこれ、パイの内側を丁寧にキャラメリゼしているからなのだそう。そのひと手間が、クリームの水分に負けない驚きの食感を生み出しているんです。 お口へ運べば、芳醇なバターの香りが鼻を抜け、続いてカスタードの優しい甘みと苺のフレッシュな酸味が絶妙なハーモニーを奏でます。「一番美味しい瞬間の、この食感を楽しんでほしいんです」そう語る奥様の言葉通り、まさに“できたて”でしか味わえない贅沢な一品です。
素材の力を感じる一皿や丁寧に作られたお菓子を通して、「自分を大切にする時間」を思い出させてくれるひととき。季節が巡るたびに、旬の楽しみに会いに行きたくなるような温かな場所でした。時期によって変わるメニューのラインナップはお店のSNSで案内されているので、訪れる前にチェックしておくのがおすすめです。週末の小さなリフレッシュに、ぜひ、「いずん堂」を訪れてみてくださいね。
カフェ いずん堂
カフェ イズンドウ
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文:宇都宮薫 撮影:土方証子
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