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2017.02.17
和歌と歴史に思いをはせて―阿倍仲麻呂“遣唐”1300年を迎える古都・奈良で訪れるべき4スポット
各地にさまざまな時代の史跡が残り、世界遺産が日本で一番多い奈良県。 なかでも「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されている8つの史跡は、奈良時代を代表するものばかりです。当時、遣唐使として唐へ渡った阿倍仲麻呂が詠んだ一つの有名な歌があります。 「天の原 ふりさけ見れば春日なる 三笠の山にいでし月かも」 一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 遥か唐から生まれ故郷の奈良・平城京を懐かしんで詠んだ、小倉百人一首にも集録されている一首です。 1000年以上の時を越えて、今なお人々の心を打つこの和歌とともに、今、注目の平城京への旅をご案内します。
遣唐1300年と阿倍仲麻呂
和歌に詠まれた三笠山(御蓋山)
都に仕える貴族の家に生まれ、秀才として知られた阿倍仲麻呂は、平城京へ遷都してから初めての遣唐使となる第9次遣唐使の留学生として、10代という若さで唐へ渡りました。 日本人ながら唐で最難関の国家公務員試験(科挙)に合格。皇帝に仕え、李白や王維など名立たる文人たちとも交流があったそうです。 その後、唐で30年以上を過ごした頃に日本へ帰ろうと船に乗りますが、出航した船は遭難して現在のベトナムに漂着。再び唐の都に戻り宮廷に仕えた阿倍仲麻呂は、日本を離れて約55年後、ついに帰国することなくその生涯を閉じました。
平城京から見る月へ思いを馳せた望郷の歌
「天の原 ふりさけ見れば春日なる 三笠の山にいでし月かも」 古今和歌集に集録されているこの一首は、阿倍仲麻呂が唐から日本へ帰ろうとした時に催された送別の宴で詠んだものといわれています。 「広い大空を仰いで遠くを眺めると、月が美しく輝いている。あの月はわが故郷、奈良の三笠山の上に出た月と同じ月なんだなあ」 航海技術の発達していなかった当時、海を渡り外国へ行くことは命がけでした。再び大和の地を踏めるかどうかという状況で、30年前に離れた遠い故郷の景色を思い詠んだ歌は、小倉百人一首にも集録され、現在まで多くの人に詠み継がれています。
出立の地・平城宮跡は見どころもいっぱい
阿倍仲麻呂が唐に出立して、今年で1300年を迎えます。 遣唐使出立の地である平城宮は、今でいう国会議事堂のような政治の中心地。 唐の長安をモデルに整えられ、広い敷地を持つ平城京のなかでも、ごく限られた人々しか入れないとても重要な場所でした。
ボランティアガイドの説明にも注目の「復原事業情報館」
今も遺構が残る平城宮跡には、第一次大極殿や朱雀門が復原され、訪れる人に奈良時代の歴史を伝えています。 第一次大極殿そばに建つ「復原事業情報館」では、第一次大極殿を中心とした復原工事について紹介されています。奈良時代と同じ技術と材料を用いる復原工事の資材や道具を展示し、直接ふれることもできるので、当時から伝わる歴史や文化を体験してみてくださいね。
復原事業情報館
フクゲンジギョウジョウホウカン
「平城宮跡資料館」では宮殿や役所の内部をジオラマで再現
「復原事業情報館」から歩いて約5分ほどの「平城宮跡資料館」は、平城宮跡について解説する施設です。 館内では平城宮跡から発掘された出土品を展示するほか、役所や宮殿の内部を実物大のジオラマで再現しています。 間近で見られる木簡や土器からは当時の人々のリアルな生活の様子が感じられますよ。
平城宮跡資料館
ヘイジョウキュウセキシリョウカン
奈良時代に一番近い寺院「海龍王寺」
平城宮跡のほかにも、当時の遣唐使にゆかりのあるお寺があります。 遣唐使ゆかりの史跡として知られる海龍王寺は、天平3(731)年、光明皇后が遣唐使の無事の航海を願い創建したお寺。現在も、旅行や留学で海を渡る多くの人々が航海の安全を願い参拝に訪れています。 境内では当時つくられたお堂の中で唯一現存している西金堂など、当時の建築様式を今に伝える貴重な建物を見ることができます。 (拝観料/500円、特別公開時は600円)
海龍王寺
カイリュウオウジ
かつての都としてクローズアップされる平城宮跡
平城宮の正門だった朱雀門や朝廷の正殿だった第一次大極殿など、敷地を含め広大な平城宮跡では、1300年の歴史をいたるところで感じられます。 2017年には、観光関連施設や平城宮跡展示館がオープン予定で、平城宮跡全体が歴史公園として注目されています。 広大な平城宮跡を歩きながら、古の都に思いを馳せて、奈良トリップしてみませんか?
国営平城宮跡歴史公園
コクエイヘイジョウキュウセキレキシコウエン
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安原 成美・岩永 茜
奈良県・阿倍仲麻呂遣唐1300年
阿倍仲麻呂が遣唐使として平城京を出立し、今年で1300年。盛り上がりを見せる奈良・平城宮跡周辺は、遣唐使にまつわる史跡からおしゃれなカフェまで、注目スポットがたくさん。 今年は、歴史とロマンを感じる奈良へおでかけしませんか?
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