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2017.06.01
パン屋の新しい形!ビストロでもありパン屋でもある。吉祥寺「EPEE」|by PARIS mag
毎日の暮らしのなかで少しだけ心が弾むような豊かさをお届けするWEBマガジンPARIS mag(パリマグ)から、吉祥寺にあるフォトジェニックな、ビストロ&パン屋「EPEE(エぺ)」をご紹介します。

吉祥寺駅から徒歩10分ほど。メインストリートから1本入った路地にある「Boulangerie Bistro EPEE(ブーランジュリー・ビストロ・エペ)」。
パン屋さんの次のステップとしてのビストロ

店長の吉澤さん(左)、パン職人の神林さん(右)
もともと八王子の有名パン屋「カロン」のオーナーだった神林さん。パン屋さんとして、おいしいパンを作ることができた次のステップとして、飲食店と一緒にやってみたらどうだろうというところがこのお店のスタート。

「尖ったパン屋をやろうよ」という思いから、お店は剣を表す「エペ」と名付けたのだそう。単純なパン屋さんではないし、ビストロでもない。両方のプロフェッショナルがいるからこそできることを挑戦し、模索しているお店なのです。 「このお店でパンを作るときは、料理と一緒に食べておいしいということを意識しています。究極はビストロで提供しているメニューに対してだけのパンを作りたいという思いもあったりするんですが(笑)。今日の夜ごはんはステーキだから、スープだからというのに対して、『このパン』というものを提供できるようになるのが理想です。そこまでは、まだなかなかできていないんですけど…。 でも、僕たちの目指しているイメージはフランスのパン屋さん。フランスのパン屋って、日常生活の中にありますよね。ここは日本なので、日本の人たちが毎日求めるパンを作るのがパン屋としての仕事。だからお客さんが毎日気軽に来てくれるように、食パンや甘いパンなどのメニューも揃えます。そこからいろいろなパンを食べてもらって、食事に合わせる楽しみも知ってもらえたらいいですね」とパン職人の神林さん。
職人たちが切磋琢磨し、生まれるマリアージュ

ソムリエでもある店長の吉澤さんが食事とのマリアージュを考えているとのことで、「こういうパンを作って」という依頼には突拍子のないものもあるのだとか。 「でも、作ってみるとやっぱり流石だなって思います。ずっとレストランをやってきた方なので、いろんなものを食べて味覚の引き出しがいっぱいあるので。僕自身も知らなかったようなパンの味を引き出してもらうこともあり、そういうときの喜びはすごくありますよね」とは神林さんの言葉。

吉澤さんも「最近はパンを焼いているレストランも増えてきましたが、料理人やパティシエとブーランジェが焼いているパンは全然違うものなんですよね。でも、うちには両方がいる。 それぞれの職人がそれぞれの仕事に専念するという発想はフランスっぽいですよね。だからこそできる挑戦がたくさんある気がします。新しい味が生まれたり、使えなかった食材を使えたり、パン屋さんだけで販売するにはなかなか作れないパンもビストロに出せばいいのでどんどん作れますから。 料理もおいしいし、パンもおいしいし、一緒にやっていいことの方が多いんですけど…ただ、どっちも職人同士で高め合っていくからゴールが見えないことも(笑)」と、互いにリスペクトしあっていることがよくわかるお話も。

ビストロで使用しているパンチェッタを使用した「大葉とパンチェッタ」
また、パン屋さんとビストロが一緒になっていることで、両方の“いい素材”を使用できるメリットもあるのだそう。パン屋さんがスモークサーモンを使いたいとき、業者から仕入れることがほとんど。 しかし、『エペ』ならば、それを隣のキッチンで好みの味で作ってもらうことができます。パンでは使わないようなビストロの食材からメニューを作ることもできますし、パン屋さんが持っているさまざまな種類の粉やバターを料理に使っておいしい料理が誕生することも。 互いに高め合いながら生まれたパンのメニューは本当に個性豊か!その一部を紹介したいと思います。
食事とマリアージュして楽しむパン

カンパーニュ生地を使った商品
同じ生地を使ったメニューでも、大きさだけでなく、形、具材など種類が豊富!カンパーニュってこんなにいろいろな形があるものだっけ?と、思い質問してみたところ 「同じ生地でも焼く形で食感や味わいが全く変わるんです。もちろん切るときの厚みを変えるだけでも全然違います。料理の具材の硬さと合わせたり、ぶつからないパンの硬さを選ぶのが大切ですね。その組み合わせを探すのは無限なので、いろいろ試してもらえたらと思います」と吉澤さん。

こちらはちょっと珍しい「白桃のカンパーニュ」と「キウイのカンパーニュ」。国産のドライフルーツを使用した、贅沢なメニューです。

フランス料理では、お肉料理にフルーツを添えることがありますが、そのイメージで豚肉のお料理やパテドカンパーニュと相性がよいとのことでした。小麦の本当のおいしさを引き出すためにしっかりと寝かせているというだけあって、小麦の味わいと香りを楽しめます。そこにドライフルーツの酸味と甘味、お肉の味が絶妙にマッチし、とてもおいしかったです。

全粒粉だけを使用した「コンプレ」というパン。石臼ですごく細かく挽き、お水をいっぱい入れることで無理やりまとめてパンにして作るのだそう。 「周りが硬いのに中がスカスカなパンなので、食感が難しいんですが、サラダと合わせるとおいしいです。甘みのあるドレッシングに抜群に合うんですよ!」と教えて下さいました。

これはそば粉とライ麦とポピーシードで作った「グリニー」というパンで、キャビアを使ったメニューのために開発したパンなのだそう。

「柑橘と鴨は相性がいいよね」というイメージから生まれた「伊予柑の食パン」はフォアグラ料理と◎。料理に合わせていろいろとチョイスできる楽しみがあります。 「マリアージュを見つけたときの喜びは、感動ですよ。こちらから提案するだけじゃなくて、お客さんご自身が買ってこれと合わせたらおいしかったよ!なんて声もききますし。そういうときに、パンとお客さんと自分たちが一緒になれた気がして楽しいですね」とは神林さんの言葉。 正解がないマリアージュだからこそ、お客さんともコミュニケーションが生まれる楽しみがあるようです。

パンと料理のマリアージュを楽しみたいけど、夕食のメニューがまだ決まっていないのでどうしよう…という方は、まずバゲットを購入してみては? 「結局どんな料理にも対応できるパンはバゲットなんだなと最近思います。そう思うと、フランス人が食事のときにバゲットを選ぶのも納得できますよね。あらためてバゲットってすごいなって。でも、せっかくならいろいろと試してみてからバゲットのすごさを感じてもらいたいですね」と吉澤さんからのアドバイスもいただきました。 『エペ』のバゲットは「バゲットブラン」という北海道産小麦を使ったものと、フランス産小麦を使った「バゲットトラディショナル」の2種類。湿気の多い時期は日替わりで焼いているとのこと。
パンの新しい楽しみ方

「ここで働いていると、パンを買いに来るお客さんたちとの会話がすごくあるんです。『今日、これ食べるから〜』とか。みなさんパンを買う過程を楽しんでくれているんです。 それがまるで、ソムリエと話をしてワインを決めるその過程を楽しんでいる姿にも似ていて。最近では会話をしないとどんなパンかわからないように、プライスカードの情報量を減らして、会話を楽しむようにしていたりもしています」と吉澤さんがおっしゃるように、食事に合わせてパンを選ぶという感覚はすでに『エペ』のファンの間では広がってきているようです。 食卓にパンがあるという風景は日本でも定着してきました。『エペ』が目指しているのはその先。職人たちが切磋琢磨し、新しい味を提供し、料理とパンをどうやって一緒に楽しんでもらうのかということ。『エペ』は、パンとの関わり方や食事の楽しみ方の価値観を変えてくれるパン屋さんです。

Boulangerie Bistro EPEE
ブーランジュリー・ビストロ・エペ
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PARISmag 編集部
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