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2020.01.26
無声映画は開けて楽しい宝箱。活動弁士・片岡一郎さんインタビュー
映画初期の無声映画時代、観客の前で映画の説明をした活動弁士の存在をご存知ですか? 実は日本の話芸の文化を背景に生まれた、世界でも珍しい仕事です。 周防正行監督の新作映画『カツベン!』が公開中で注目が集まる無声映画と活動弁士。今回は活動弁士の片岡一郎さんに、無声映画の楽しみ方や活動弁士の仕事の面白さ、そして『カツベン!』の見どころなどについてお話を伺いました。
プロフィール
片岡一郎 (かたおか いちろう)/活動弁士。東京都出身。高校時代に活動弁士の第一人者澤登翠氏の公演に出会い、無声映画 に興味を持つ。大学卒業後の2002年に澤登氏に入門。幅広いジャンルの弁士として 数々の上映会や映画祭など国内外で活躍している。
日本で独自の発展をとげた活動弁士という仕事

エジソンが映写機のキネトスコープを発明したのが1890年代。初期の映画は音声をつける技術がなく、ほとんどの国で音のない映画に生の演奏をつけていました。 一方で日本では演奏に加えて語り手がつき、この語り手がナレーターのように映像で何が行なわれているかを説明したり、声優のように登場人物の代わりに演技をしたりと、一人で何役もこなしていました。 これが活動弁士という仕事です。 外国にも近い存在はいましたが、根付くことはありませんでした。
無声映画は映画の青春時代。今でも気軽に楽しめます

1931(昭和6)年製作・公開のサ イレント映画「御誂治郎吉格子」 にて弁士を務める片岡さん
実は現代でも無声映画を観ることは難しくありません。 常設の劇場こそありませんが、少しネットで探せば、東京なら週に1回はどこかで上映しています。ミニシアターでやることもありますし、白い壁があればそこにビデオプロジェクターで映せるので、カフェでやることもあります。
初心者の方には、まず1920年代後半の作品を観ていただくのがおすすめです。 そのころになると映画的な表現方法が成熟して、観ていてわかりやすいものが多く、ドラマ性も高いので楽しみやすいからです。構える必要はありませんが、ちょっとあらすじぐらいは下調べしてから観ると、ぐっと楽しめるのではないかと思います。
『カツベン!』を入り口に無声映画の宝箱を開けて

©2019「カツベン!」製作委員会
今回周防正行監督が活動弁士を題材に映画『カツベン!』を撮ると聞いて、まずは誤報だと思いました(笑)。活動弁士の実技指導や時代考証、そして活動弁士役での出演を正式にご依頼いただいてからも夢ではないかと、撮影初日のオープンセットを見るまで信じられませんでした。

©2019「カツベン!」製作委員会
『カツベン!』は、活動弁士のことを何も知らない方が観てもちゃんと楽しめる娯楽映画になっています。時代背景を支える小道具をよく作り込んでいて、ちらっとしか映らないチラシまで当時のものを再現しています。女優さんの着物やモダンガール的な服装など、衣装にも大正モダンな空気が出ていて、時代トリップ感を楽しんでいただけるのではないでしょうか。

僕は、映画を観る選択肢の中に、無声映画というジャンルが入ることが理想だと思っています。優れた作品がたくさんあって、楽しみ方さえわかればこんなに開けてみて楽しい宝箱 はない。 まずは『カツベン!』を観ていただいて、これを入り口に無声映画もご覧いただきたいですね。
『カツベン!』の公式サイトはこちらから
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