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2020.07.25
【京都よりみちこみち】千鳥の提灯ゆらめく路地を、舞妓さんが行き交う先斗町通:後半
日が暮れると軒先の提灯がともり、ひときわ風情が増す先斗町。通りにあるカフェや食事処など飲食店の数は100軒ほどあり、元お茶屋の建物を生かしたお店が多さも京都ならでは。毎年5月から9月末までの夏の間は、川岸に設えた納涼床が日暮れとともに浮かび上がる様子も風情たっぷりです。 川面に吹き渡る風を感じる、夏の納涼さんぽを楽しみませんか。
花街情緒と鴨川の景観を楽しめる先斗町通
先斗町には、毎年5月に開かれる舞踊公演「鴨川をどり」の会場となる先斗町歌舞練場を中心に、通りには花街の空気がいまも色濃く残っています。歩いていると、三味線のお稽古をする音色が聞こえてきたり、いそいそとお稽古に向かう可憐な舞妓さんの姿を見かけたりすることも。 ちょっと休憩したいときには先斗町通に面した先斗町公園へ。園内は10年ほど前に日本庭園風へと改修され、芝生の小さな丘の向こうに石のベンチが置かれています。のんびりと鴨川ビューを満喫しましょう。
建築デザインに注目したい先斗町のシンボル「先斗町歌舞練場」
通常は非公開。建物のデザインを外から楽しんで
毎年5月に開かれる舞踊公演「鴨川をどり」の会場として知られている「先斗町歌舞練場」。1927(昭和2)年の建築で、当時流行していたアール・デコや近代建築の巨匠とされるフランク・ロイド・ライトを思わせるスクラッチタイルや幾何学形の窓を見ることができます。かまぼこ状に隆起した、なまこ壁風の造りや瓦屋根といった日本の伝統技法など、細部まで施された和洋の意匠の融合が見事です。
写真提供:先斗町歌舞練場
「鴨川をどりは、京都の五花街で開催される、芸舞妓による”をどり”公演の中でも、最も多くの上演回数と、歴史の古さで知られています。普段はお座敷でしか目にすることができない芸妓さんや舞妓さんの華やかな演舞を観劇することができる、貴重な機会。国内のみならず、海外から訪れるお客さんもいるそうですよ。
先斗町歌舞練場
ポントチョウカブレンジョウ
おかわりしながら楽しむ「水餃子 しゃんたん」
水餃子2個(319円)
「水餃子 しゃんたん」は、女将の野田かおりさんが子どもの頃から親しんだ「おばあちゃんの味」を伝えたいと2019年11月にオープンした水餃子専門店。大鍋からすくい上げてくれる水餃子は、もちっ、ぷりっとした皮にジューシーな餡がはじけて喉をつるりとすべります。
なんと42個完食した方もいるそう。カウンターに器をおけばお代わりを入れてくれる
水餃子は、京丹波高原豚に京の九条ネギ、タケノコなどこだわりの食材を包み込んだやさしい味わい。2個ずつ注文するスタイルなので、おなかと相談しながら楽しめるのがいいですね。おつまみには「奈良漬クリームチーズ」(598円)や、シメに水餃子のだしが出たスープでラーメンや稲庭うどんもおすすめです。
水餃子 しゃんたん
スイギョウザシャンタン
鴨川納涼床で味わう串とお酒「串かつ&ワイン侘家洛中亭」
洛中亭コース(12本4730円~、床料金は代金の10%)
伝統的な京町屋をスタイリッシュに改装した「串かつ&ワイン侘家洛中亭」。京丹波産の京都ポークや天使の海老といった定番のほか、独創的な串までバラエティ豊か。オリジナルの串は、うどんをお揚げさんで巻き、おだしやネギ、七味をからめた「きつねうどん」をはじめユニークなラインナップで心弾みます。
床席はテーブルスタイル。みそそぎ川には、水鳥が羽を休めにくることもある
串の具材にまとわせた衣は、メレンゲを織り交ぜ空気をたっぷり含ませているからサクッと軽やかな口当たり。隠し味の白ワインが素材の風味を一層豊かに引き立て、つい、もう一本とつぎの串に手が伸びます。食後のデザートには京都の地卵を使った「祇園アイスプリン」(275円)がおすすめです。
串かつ&ワイン侘家洛中亭
クシカツアンドワインワビヤラクチュウテイ
千鳥デザインのかわいい和菓子「先斗町駿河屋」
左:希少な和三盆を100%使った「和三盆ちどり」(5個入、530円)。右:たっぷりのつぶあんが入った「先斗町もなか」(6個入、1592円)は、丸い箱にも千鳥を発見
1898(明治31)年、この地に暖簾を掲げ、代々家族で受け継いできた京菓子店。看板商品はこしあんをなめらかな本わらび餅で包んだ「ひと口わらび」。生地が熱いうちにくるっとあんを包み込むのは職人だけがなせる技がおいしさのひみつです。
店頭に飾られていた昭和初期のころの菓子帳。今に活かせるデザインのヒントがちりばめられている
ほかにも干菓子やもなかなど、先斗町のシンボルである千鳥の意匠がお菓子のかたちや包装に取り入れられていて、思わず笑みがこぼれます。毎年4月半ばから9月の期間にのみお目見えする水羊羹「竹露」も、心待ちにする常連さんが多い和菓子。手みやげに探しに立ち寄ってみませんか。
先斗町駿河屋
ポントチョウスルガヤ
静かな時が過ごせる隠れ家カフェ「マグ」
ミルクの割合を多めにした、マイルドな味わいのカフェラテ(600円)は、ボウルでたっぷりと。定番メニューの濃厚チーズケーキ(500円)はレモンの酸味が爽やか
先斗町通から一本入った路地にある「mag(マグ)」は、祇園の老舗喫茶で働いたのをきっかけにコーヒーや喫茶文化の魅力に目覚めたという店主の真重さんがひとりで切り盛りするカフェ。豆は、京都のコーヒー好きに愛されるロースター「WEEKENDERS COFFEE」に焙煎してもらったもの。
木材の一枚板
カフェラテを注文すると、かわいいイラストにさらりと仕上げてくれます。カップ類は、店主が各地を探し歩いて出会ったという作家ものの陶器。釉薬が織りなす色やひとつひとつの表情が異なり、すっと手になじむのも嬉しい。
mag
マグ
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text:Rinako Sato(Rakutabi) Kyoko Kurita , photo:Yasutaka Ogawa 編集:ことりっぷ編集部
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