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2020.09.17
ふんわり軽くて、あったかな桐生「OLN」のすてきな布小物
金襴緞子(きんらんどんす)の帯や着物など、美しい織物の産地として知られる群馬県桐生市。その歴史は奈良時代にまでさかのぼり、江戸時代には「西の西陣、東の桐生」といわれるほど栄えたそう。そんな桐生では今、織どころならではの新たなブランドが生まれ、注目を集めています。その一軒、井清織物が手がける「OLN」の工房を訪ねてみました。

伝統のノコギリ屋根の工房から生まれた桐生発のブランド

緑が美しい敷地内に工房や古い建物を生かしたギャラリーショップが並ぶ
高崎駅からJR両毛線で約45分。両毛の山々に囲まれ、渡良瀬川がゆったりと流れる群馬県桐生市。国内屈指の歴史をもつ織物のまちとして知られています。 このまちの伝統を受け継ぐ織物工房の一軒から誕生したのが「OLN」。手がけているのは、60年以上の歴史をもつ井清織物の4代目・井上義浩さんと、妻でアパレルデザイナー出身の忍さんです。桐生らしい伝統のノコギリ屋根の建物に、工房とギャラリーショップをかまえています。

帯を織る技術でつくるやさしい色彩と風合いの“巻きもの”たち

秋冬に向かって約10色が登場するネックウォーマー「フエルト」8800円。冒頭の写真も同じシリーズ
ギャラリーショップで最初に目を引いたのが、ふんわりと軽くて温かなネックウォーマー「フエルト」。たて糸に肌ざわりのいいコットン、よこ糸にウールとアクリルの混紡糸を使っていて、伝統の織機でしか織ることのできないものだそう。 「ジャガード式シャトル織機」と呼ばれるこの織機は、井上さん夫妻が修理を重ねながら大切に使っているもの。同業者からも驚かれるほど古い型の織機もあり、感触を確かめながらゆっくりと時間をかけて織り進めるため、独特のやわらかな風合いが生まれるのだそうです。 アクセントカラーとなっている端の部分は、最新の加工技術を使ってもこもことしたフエルトに。本体部分は、たて糸の色を中央で変えることで色彩が微妙に変化しているなど、1枚の布のなかにさまざまな表情が詰まった個性あるネックウォーマーです。

表と裏で表情の異なる、アートのように繊細なストール

「テアーストール」シングル11000円、ダブル19800円。各6色ほどの展開
刺し子をイメージしたという「テアーストール」も「OLN」らしい繊細なこだわりが詰まった一枚。細番手の生糸(シルク)とコットン、太いウール系の3種の糸を使って織り上げられています。 糸の一部がぴょこぴょこと飛び出しているように見えますが、こちらはカットジャガードと呼ばれるとても手のかかる技法を大胆に用いたもの。「二重織りの一部を織り込まずに仕上げ、最後によこ糸を部分的にカットしていくことで大小のひし形を表現しています」とのことですが、その複雑な工程は織機を前に説明を受けてもなかなか想像がつかないほどです。 裏面は少しシャリ感のあるシルクコットンのフラットな質感。季節を問わず、リバーシブルで使えるのもすてきですね。

新作のネックウォーマー「ループ」各8800円。穴になった部分に端を通すデザインでスタイリングが楽ちん

「織物で日々の暮らしを彩りたい」という思い

北側につくられたノコギリ屋根の窓からやわらかな日差しが入る工房。新旧7~8種類の織機を使っている
美しくて豊かな織物で日々の暮らしを彩りたいという井上さん夫妻の願いから、2014年にスタートした「OLN」。ネーミングは桐生の方言「織るん?」からつけたそうで、図案づくりを義浩さん、色使いや商品のアイデアを忍さんが担当し、家族4人で織り上げています。 桐生の多くの機屋さんが昔からそうであるように、井上さんたちの技術の軸となっているのはやはり着物の帯だといいます。和装文化が日常から非日常のものとなっていくなかで、ジャンルを問わず新たな織物に挑戦することで、このまちに1300年受け継がれた技術を磨き、つないでいきたいという思いがあるのだとか。

「OLN」の代表作である帯「grain」(77000円)。特殊なシルク糸を使い10年の試行錯誤の末に完成させたもの
そんな「OLN」のモットーは、「要領のよさよりも丁寧さを」。製糸や染色など、桐生で高い技術を受け継ぐ職人さんたちといっしょに日々新たなものづくりに取り組んでいます。 和装に興味がある人は、はっとするほど美しい色彩の八寸帯や、かわいらしい兵児帯など、和の品々にも注目してみてはいかがでしょうか。WEBショップも展開していますよ。

兵児帯や季節の和装小物も並ぶ

夫妻がセレクトした浴衣や着物の反物、雑貨などもそろうギャラリーショップ

OLN
オルン
「ことりっぷマガジン秋号 Vol.26」では、桐生で出会うすてきな布ものを紹介しています。桐生では織物を中心に刺繍や縫製など、繊維産業全体であらたなものづくりが進んできました。今回ご紹介した「OLN」以外にもブランドを立ち上げている工房をご紹介しています。ぜひご覧ください。
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