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2020.09.28
茶の湯の文化が息づく島根・松江で抹茶と和菓子を楽しめるスポット3選
江戸時代を代表する茶人、松江藩七代目の藩主・松平治郷は不昧公(ふまいこう)の名で知られ、松江の茶の湯の文化の礎を築いた人物です。その不昧公の茶会に献上するために和菓子職人の技術も上がったとされ、数々の銘菓も生み出されてきました。 その松江で、美しい庭園が見渡せる喫茶室をはじめ、不昧公ゆかりの寺や茶室など、香り高い抹茶と見た目にも美しい和菓子を美しい景色を眺めながら、じっくり味わうひとときを過ごしてみませんか。
現代の名工・伊丹二夫氏の和菓子が味わえる松江歴史館内の「喫茶きはる」
季節の和菓子と抹茶のセット(820円)。和菓子は約7種類から選べる
不昧公が茶の湯文化を広めたころから、和菓子作りの技も発展した松江。なかでも上生菓子は職人の技と美意識が注ぎ込まれた芸術品です。そんな匠の技能を伝承するお菓子を堪能できる喫茶室へ。 「喫茶きはる」は松江歴史館内の入場無料スペースにあり、畳敷きで日本庭園を望める和の空間では、松江の和菓子研究家・伊丹二夫氏が作る創作上生菓子を味わうことができます。名工の手から美しい和菓子が作り出されるところも見学できるほか、抹茶を自分で点てられる抹茶体験セットもありますよ。
松江の四季を表現したカラフルな和菓子が勢ぞろい。各370円
松江城天守を借景とした約百坪の枯山水庭園を眺めながらゆったり過ごせる
喫茶きはる
キッサキハル
松平藩松平家の菩提寺「月照寺」では、白ごま入りの求肥が香ばしい和菓子を味わいましょう
上/ 書院では緑の美しさが際立つ庭を眺めながら、不昧公が愛した茶を味わえる 左下/抹茶と白ごま入りの求肥が香ばしい路芝(450円) 右下・右上/松江藩主を務めた松平家の廟が納められている古刹
月照寺は松平藩主・松平家の菩提寺で、境内には九代までの廟所が厳かに立ち並んでいます。茶の湯を愛し、松江にその文化を広めた不昧公の廟もそのひとつ。山陰のあじさい寺としても知られ、6月中旬~7月上旬にかけて約3万本のあじわいが咲き誇る名所としても有名です(拝観料500円)。 幽玄な日本庭園が見渡せる書院・高真殿では抹茶と松江三大銘菓のひとつ・風流堂の「路芝」が味わえます。「路芝」は白ごま入りの求肥と白あんを重ね、短冊に切ってひとひねりした素朴な姿のお菓子。路芝とは道ばたの草という意味で、春先に草の上に積もった雪が溶けていく様子を表したお菓子と伝えられています。不昧公が愛飲した名水で点てる一服の抹茶とともに、控えめな甘さとともに奥深いごまの味と香りが楽しめますよ。
月照寺
ゲッショウジ
松江城を望む高台に建つ、不昧公好みの茶室「明々庵」で可憐な銘菓を召し上がれ
上/鳥のさえずりを聞きながら抹茶と和菓子を味わえる「百草亭」 左下/抹茶には「若草」と「菜種の里」の2種類が付く(410円) 右下/茶室・明々庵は茅葺きの入母屋造り。随所に定石に頓着しない不昧公好みが現れている(外観のみ見学可)
不昧公の好みが現れている茶室として知られる「明々庵」は1979(安永8)年に松江藩家老の有澤家本邸に建てられていたもので、不昧公もしばしば臨まれた茶席です。東京に移されたこともありましたが、1966年(昭和41)年に現在の場所に移築。武家屋敷が立ち並ぶ塩見縄手から北側に入った、松江城を望む高台に建っています(観覧料410円)。 抹茶と和菓子がいただけるのは敷地内にある百草亭。緑と飛び石のコントラストが美しい枯山水庭園が眺められる茶室にて、松江三大銘菓の「若草」と「菜種の里」の2種類を味わえます。彩雲堂の「若草」はふっくらとした求肥に薄緑の寒梅粉をつけたもので、萌ゆる緑が印象的なお菓子。三英堂の「菜種の里」は菜の花色の愛らしい落雁で、寒梅粉と砂糖を使ってしっとりと仕上げられています。どちらも不昧公の歌から命名された、春を感じるお菓子です。
明々庵
メイメイアン
【ことりっぷ 出雲・松江 石見銀山】
まずは良縁にご利益があるという出雲大社へお参りを。良縁祈願と一緒に行きたい門前の素敵なカフェや、出雲そばやぜんざい店へも立ち寄って。松江では松江城のお堀を小舟でめぐったら、名工の和菓子をいただきましょう。ひと足のばして、美肌の湯として知られる玉造温泉、温泉津温泉、世界遺産・石見銀山、境港のほかに、民藝のながれをくむ日常使いできる器を探しに、窯元めぐりもおすすめです。
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