
28
2020.11.09
【たび好きの本棚vol.8】読んでおいしい京料理♪ 京都が舞台の“おいしいもん”小説&漫画
旅の醍醐味のひとつは、おいしいものに出会うこと。食べたことのない料理を体験したいというのはもちろん、おいしかった思い出からその地を再訪することも、りっぱな旅の動機です。今回は、古く美しい文化を持つ京都の「食」をピックアップ。京野菜や季節の食材など、旅した気分で楽しめる本&漫画を3つご紹介します。
『鴨川食堂』シリーズ

京都・東本願寺の近くにある「鴨川食堂」は、料理人の鴨川流と娘のこいしが営む看板のない食堂。全国からやってくるお客さんは、思い出の料理を捜し求めながらも、それぞれ悩みを抱えた人々です。「鴨川探偵事務所」としてレシピの再現をする鴨川親子の、温かな接客と料理のおもてなしに、やさしい気持ちになれるシリーズです。

最新刊は2020年6月に出版された第七弾『鴨川食堂もてなし』
作者の柏井 壽(かしわい ひさし)さんは京都生まれの京都育ち。作中で鴨川親子が使う京都弁や旬の食材の描写は目の裏に場面が浮かび上がってきます。お客さんに出されるおまかせのおばんざいや、再現された思い出料理のおいしそうなこと!色合いや温度、匂いがこちらまで伝わってくるようです。こいしが給仕に使う清水焼の急須をはじめ、料理に合わせたうつわ使いもすてき。思い出が絡んだ料理の記憶は少し切なかったりしますが、鴨川親子のおもてなしと距離のよい優しさが心に染み入ります。
著者:柏井壽
出版社:小学館 小学館文庫
発売日:2015年5月8日(第一弾、以下続刊)
価格:570円(税抜)
『ながたんと青と-いちかの料理帖-』

昭和26年の京都を舞台に、歴史ある京の料亭の長女・いち日と大阪の有力者の家の三男・周の政略結婚をきっかけに物語が幕を開けます。夫を戦争で亡くし、ホテルで調理師として勤める34歳のいち日。15歳年下の婿である周と、経営破たん寸前の実家の料亭「桑乃木」を救うために再建へと乗り出しますがーーー。

おいしそう!と思ったら、作中に登場する料理のレシピも試してみて
洋食を学んだ主人公のいち日が作る料理が、戦後の京都で次第に受け入れられていくストーリーにワクワク!調理過程も丁寧に描かれ、いち日の料理への思いが伝わってきます。登場人物が料理を食べた後に見せる幸せそうな表情に、読んでいるこちらのお腹も鳴ってしまいそう。女性が手に職を持つことが難しかった時代、いち日と対等なパートナーとして料亭の経営を立て直す周さんも素敵。気持ちが通いそうですれ違う、年の差婚のゆくえも気になります。
著者:磯谷 友紀
出版社:講談社 KC KISS
発売日:2018年07月13日(1巻、以下続刊)
価格:429円(税抜)
『京都烏丸のいつもの焼き菓子 母に贈る酒粕フィナンシェ』

四条烏丸の路地を入ったところにある小さな焼き菓子屋「初(うい)」。無愛想な性格ながら菓子作りの腕前は一流のオーナーパティシエの店長と、笑顔がかわいらしい店員さんがひっそりと営んでいます。お店に並ぶのは、丁寧に作られたさまざまなお菓子。「初」のお菓子をめぐって人々が織りなす豊かな日常を綴る物語です。

写真かと思いきや実はイラストの表紙に、登場するお菓子が散りばめられている
焼き菓子店「初」をめぐる連作短編を4つ収録。どのお話も人生に迷い悩む登場人物にお菓子がそっと寄り添ってくれます。「七味唐辛子と林檎のケーキ」「飴さんのクッキー」といった和素材のものから、「ホワイトチョコと苺のブラウニー」など、甘党には気になるラインナップ。お客さんと店員さんのやり取りも楽し気で、読んでいるこちらも常連さんになりたいと思わせてくれます。心の小さなわだかまりを優しく包んでくれるような物語です。
著者:古池 ねじ
出版社: KADOKAWA 富士見L文庫
発売日:2020年9月15日
価格:660円(税抜)
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。
朝光洋理 写真:小林利穂



























