![山・棚田・海のつながりを生かした、豊島の歴史に根差した連なりを堪能。[ウミトタ/香川県豊島] by ONESTORY](https://image.co-trip.jp/content/14renewal_images_l/496900/main_image_20201118191914466.jpg)
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2020.11.27
山・棚田・海のつながりを生かした、豊島の歴史に根差した連なりを堪能。[ウミトタ/香川県豊島] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から香川県豊島の「ウミトタ」を紹介します。

棚田側から見たウミトタの外観。季節ごとに違った表情を見せる
2010年から、3年に1度開催されている「瀬戸内国際芸術祭」。2019年11月初旬に4回目が終了し、会期中に100万人以上の方が訪れる大きなアートトリエンナーレになりました。 瀬戸内国際芸術祭の展示が行われるたくさんの島の中で、最も有名で、来場者数の多い直島(なおしま)は、安藤忠雄氏の設計による「地中美術館」や、草間彌生氏の「赤カボチャ」、「南瓜」で知られていますが、その東に位置する豊島(てしま)は、地名度では、一歩譲るかもしれません。 ですが、豊島はとても魅力に溢れた島です。降水量が少ないがゆえにお米が育たず、小麦文化が発展した「うどん県」香川にあって、豊富に水が湧く豊島は、狭い島内にも棚田が開拓され、米文化が育ったという、「豊かな島」なのです。

瀬戸内海の朝日・夕日を受けて建物の印象も季節ごとに千変万化する
豊島には建築物としても日本建築学会賞を受賞し、アート作品としても唯一無二の価値がある「豊島美術館」があります。その存在から、多くのアートラバーが訪れるようになっているのです。 そんな豊島に、新しい魅力が加わったのは2018年4月のこと。 それが一棟貸しの宿「ウミトタ」です。そのディレクションを手がけるのは、東京都現代美術館で行われた展覧会「ミナ ペルホネン / 皆川 明 つづく」(2020年2月16日にて会期終了)でも話題を呼んだminä perhonen(ミナ ペルホネン)のデザイナー・皆川明氏です。 船でしかアクセスできず、決して便利とはいえないこの宿は、皆川 明氏のデザインが大好きという人だけでなく、今多くの人が注目している存在です。その成り立ちと、魅力を知りたいと思い、冬の豊島を訪れました。
海と田の連続性を楽しむ宿

玄関からリビングと棚田を眺める。海への連続性を大切に設計された
高松港から高速船に35分ほど揺られると、豊島の家浦港に到着します。そこから徒歩で20分ほどの場所に立つ1軒の日本家屋。 それが、今回の目的地である「ウミトタ」です。そのネーミングの由来は「海と田」。 豊島は、瀬戸内海に数多くある島の中でも珍しい、豊富に水が湧くという特徴を持っています。それゆえ稲作が盛んで、島を回っていると、棚田が広がる光景が見られます。そして、その後ろには瀬戸内の海。その2つをつなぐ存在となるのが「ウミトタ」というわけです。

ロフトから見た瀬戸内の風景は、海と山、空だけを眺められるよう緻密な設計がなされている
この宿のディレクションを手がけたのが、ファッションブランドminä perhonen(ミナ ペルホネン) を設立した皆川明氏。設計は皆川氏と以前から親交があったというSIMPLICITYの緒方慎一郎氏が担当しました。 この建物の南側には棚田が、北側にはウッドデッキを介して、瀬戸内海へと続いています。山側から海側へと段々畑のように連続して下がって行くことを意識した作りになっています。

夕方から夜になるにつれ、モリソン小林氏の手によるシャンデリアの照明の生み出す光と影の変化を楽しめる
1974年に建てられたこの家は、2013年の瀬戸内国際芸術祭の後、常設展を観にくる観光客の増加を受け、母体である会社が宿の必要性を感じたことをきっかけに、「ウミトタ」へと改築されました。宿泊客が夕食をとるのは、徒歩3分ほどのところにある「海のレストラン」です。2013年にオープンし、すでに芸術祭を訪れる人たちの胃袋を楽しませる存在になっていましたが、豊島でとれた四季折々の食材を使用した料理は、宿泊客からも好評です。
2人のデザイナーの対話から生まれた必然

minä perhonen(ミナ ペルホネン)のファブリックで彩られたリビング空間。フローリングには床暖房も備えつけられている
ディレクションの皆川氏と、設計の緒方氏は、「一棟貸しの宿」というコンセプトや使い方について対話を重ねました。 そうして出来上がったのが、全ての部屋に窓が設置され、豊島の自然を感じながら過ごせる宿でした。 例えば、エントランスから続くリビングスペースは、ソファが、床のレベルよりも低く掘り下げられています。そこに座ると、左右に棚田と海を見渡すことができます。 ダイニングスペースでは、大きなテーブルで食事をしながら楽しむこともできますし、モリソン小林氏の製作したシャンデリアの陰影の変化を感じながら、夜通しお喋りを続ける、なんてこともできるでしょう。

1階の寝室。足元に設置された窓から、寝転がった状態で瀬戸内海を眺められる
その横には、ライブラリーが設けられています。読書の際にふと窓側に目を移すと、冬の間は暖炉の火がチロチロと燃えている、というような演出がなされています。 1階の寝室や浴室からは寝転がって、遠く岡山方面を見渡せる海岸線を楽しむことができますし、ロフトスペースには、minä perhonen(ミナ ペルホネン)オリジナルデザインのふかふかのカーペットが敷かれ、壁際に背中をつけて座ると、1階とはまた違う瀬戸内海を望むことができるのです。堤防や、テトラポッドを切り取る角度で窓枠が設定されているので、海と山、空だけを堪能できるのです。

朝食はデリバリーされ、部屋で頂く。宿泊客だけで気兼ねなく過ごせるような工夫だ
どんな場所にいても、窓から切り抜かれた景色が千変万化するのが「ウミトタ」なのです。 他にも、朝食は古い冷蔵庫の扉を転用したスペースに届けられ、それを自分たちのペースで頂くようになっています。 チェックインを終えてからチェックアウトまで、スタッフと顔を合わせずに過ごせるようよう配慮されています。
豊島に住む人たちにとっても、大切な場所にしたいという思い

島の人々と一緒に、アワビの貝殻を貼り付けた外壁
「建物の外壁は、アワビの貝殻を貼っています。島の方々に参加してもらい、『このあたりは波のように』など、皆川さんから頂くイメージを膨らませながら貼りました。この壁に夕日が差すと、キラキラしてとても美しいんです。他にも、棚田の田植え、稲刈りなどにも参加してもらいました。宿は宿泊のお客様が利用されるものですが、この島の皆さんにとっても、大切な場所になってほしいという願いを込めて、稲作体験のお声がけをしています」 ウミトタ広報の菊地優里氏は、そう教えてくれました。

1974年に建てられた日本家屋を改装して生まれた
「豊島で暮らしているように、のんびりと滞在して頂いています。島内を巡って頂いた折に、野に咲く花を活けられるように花瓶を置くなど、能動的に過ごせるようにしています。この島にいらっしゃるお客様はアートに関心がある方も多いので、たくさんのスポットを巡りたいという方も多く、宿での滞在時間が短い方もいらっしゃいます。でも、この宿で過ごしながら、少しでも時の移ろいを感じてもらえると嬉しいですね」 と菊地氏。

水回りにはあまり使われないという、貴重な豊島石を使った浴室
「豊島には、スーパーやコンビニがなく、今も残る手つかずの自然とともに暮らしがあることが島の財産であると感じる方もいらっしゃいます。私自身も、東京から移住してきましたが、この島では自然とともに生きているという感じがします。個人的には、5月のお花が一斉に咲き誇る季節が1番好きです。自転車で走ると、お花の香りがそこら中から飛び込んでくるのでその時期を楽しみにしています。豊島の変化に富んだ四季の移ろいに魅せられています。そんな豊島の魅力を伝えていきたいです」 と、菊地氏は締めくくりました。

ウミトタの隣に2019年にオープンしたショップ「ナミノミ」
また、2019年の秋には、「ウミトタ」に隣接したショップ「ナミノミ(波の実)」がオープンしました。minä perhonen(ミナ ペルホネン)の大ファンという方でしたら、ぜひ一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。皆川氏によるウミトタオリジナルデザインの商品に出会うことができます。

ウミトタから海のレストランまでの敷地をかたどったピンバッジはお土産で人気
ナミノミ
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