日本食文化の一大潮流「アマゾンカカオ」。その仕掛け人のシェフが軽井沢にレストランを開くまで。[LA CASA DI Tetsuo Ota/長野県軽井沢町]  by ONESTORY
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日本食文化の一大潮流「アマゾンカカオ」。その仕掛け人のシェフが軽井沢にレストランを開くまで。[LA CASA DI Tetsuo Ota/長野県軽井沢町] by ONESTORY

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から長野県軽井沢の「LA CASA DI Tetsuo Ota」を紹介します。

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世界を知り広い視野を持っているからこそ、長期的な地元への貢献の道を見出せる

2019年6月、軽井沢の別荘地にある1軒の瀟洒(しょうしゃ)な建物で、とあるレストランの開店準備が進められていました。完成したばかりの看板には『LA CASA DI Tetsuo Ota』の文字。この「太田哲雄」という名に聞き覚えのある方も多いことでしょう。アマゾン産の高品質なカカオ「アマゾンカカオ」を世に送り出し、レストランの現場から少し離れた現在も日本の外食シーンに多大な影響を及ぼし続ける人物です。

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エディブルフラワーを挟んだ美しいパスタの下には蒸したアスパラガス。チーズのソースと合わせた

そんな太田氏が、満を持して作り上げたレストラン兼カカオラボこそ、この『LA CASA DI Tetsuo Ota』なのです。長野県白馬村で生まれ、自然に囲まれながら育った太田氏。海外の名だたる店で腕を磨き、料理人としてだけではない多彩な視点で食を見つめる太田氏が、新天地・軽井沢で刻む新たな一歩です。 一方で、「長野県人として、軽井沢だけにフォーカスしたくない」とも。長野県全域から食材を探し、更に自身のキャリアの中で出合った各国の食材も積極的に使用。もちろんアマゾンカカオも重要な食材として登場します。太田氏が標榜するのは食材の消費だけでなく、地域全体の食の底上げによる「地産地消の一歩先」。そんな言葉に込められた思いを紐解きます。

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地産地消の一歩先。地元だけに固執しない新たな考え方

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『LA CASA DI Tetsuo Ota』の意味は「太田哲雄の家」。カウンター6席のみの小さな店は「家ですから、可能な限り自分の手で仕上げたかった」と、内装や家具選びも全て太田氏自身が手がけました。オープン予定日は2019年8月。 講演やイベント、料理監修、そしてアマゾンカカオの販売と、日々大忙しの太田氏ですから、レストランのオープン日は不定期。それでもかねてより太田氏を知る食通たちは、この開店の報せを喜び、限られた席を押さえられる日を心待ちにしています。そんな店で2019年6月末、地元の生産者や建築関係の方を招き、プレオープンの食事会が開かれました。取材班も同席させて頂いたこの会の模様と、お待ちかねの料理の詳細をご紹介します。

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地元の食材だけに固執せずに地元に貢献するという、新たなステップの地産地消を目指す

イタリア、スペイン、そしてペルー。様々な国でキャリアを積み重ねた太田氏。しかしこの店で出す料理は、ひとつのジャンルに偏るのではなく、各国料理の混成になるといいます。店名どおり、自身の家に客人を招き、持てる技術を全て料理に込めておもてなしをするイメージです。 「軽井沢に料理を食べに来る人が、何を求めているのか。そこを大切にしなくてはいけません」と太田氏は話します。 太田氏が惚れ込んだ高原野菜は、もちろん料理の根幹をなします。海の魚よりも地元の川魚を中心にすることも決めています。しかし、ただ地元食材を使うだけではなく、料理の完成度、太田氏自身の哲学の表現のために海外から取り寄せる食材も使用します。もちろんアマゾンカカオも。 そんな在り方を太田氏は「地産地消の一歩先」と表現しました。地域の食材を軸にしつつ、都心と比肩するクオリティで地域全体の食の底上げを図る。やがて食の街としての名を馳せ、より地域の食材の生産が活性化する。そんな狙いが込められた言葉なのでしょう。

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野菜のポテンシャルに、生産者自身も驚愕

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大根のピクルスとイチゴをスープ仕立てで。太田氏は「初めて作る料理」と言うが、完成度は高い

この日のディナーは、太田氏がスペインでの修業時代に食べていた「パン・コン・トマテ」で幕を開けました。東京・小伝馬町(こでんまちょう)のベーカリー『ビーバーブレッド』に特別に注文し、水分を少なめにして焼き上げてもらったバゲットに、トマトをこすりつけるカタルーニャの郷土料理。シンプルでありながら後を引く美味しさに、次の料理への期待が高まります。 そして料理は地元食材を主役に据えた「大根とイチゴ」「新タマネギのグラタン」「カブの低温調理」と続きます。大根のピクルスとイチゴの未知なる相性、4時間ローストすることで甘みを引き出した新タマネギ、「お風呂につけてあげるようなイメージ」という丁寧な火入れで滑らかな食感を実現したカブなど、太田氏の技で地元食材の魅力を引き出す料理の連続。

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4時間ローストした新タマネギ。くり抜いた部分は炒めてから詰め、トリュフとチーズを合わせた

とりわけ訪れたゲストを驚かせたのは、新タマネギの甘み。そう、数ある軽井沢の野菜の中でも、最初に太田氏を魅了した食材です。自身が得た感動を、料理で表現する。料理人にとっての矜持が、このグラタンには込められていたのかもしれません。 そして地道な土づくりの末に、「高原では不可能」といわれていたタマネギの生産を実現した生産者・依田義雄氏にとっても、その感慨はひとしおだったことでしょう。 「自分が一番知っている食材のはずなのに、未知の味。『こんな世界があるのか!』と驚いています」と、噛みしめるように味わう姿が印象的でした。

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赤ワインのように使用するカカオの奥深い存在感

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ロメインレタスで巻いたウサギとオマール海老。海老の出汁とレタスの食感が絶妙

続いては「ウサギとオマール海老」。絶妙な火入れで食感を残したロメインレタスでウサギのミンチを包み、オマール海老の出汁と身を合わせます。アクセントに魚粉を加えたのは「スープの丸みの中に魚介の強めのニュアンスを残すため」と話す太田氏。大胆な発想の中に緻密な計算が潜む、太田氏らしい一ひと皿です。更に白馬の大イワナはコンフィにして地元の野菜とともに。チーズのソースが淡白な身を引き立てます。

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メインディッシュは「信州牛ホホ肉」。そして合わせるのは、太田氏がアマゾンで見出し、生産を支え、そして日本での流通を手がけるあのアマゾンカカオです。「カカオにはポリフェノールをはじめ赤ワインと同様の成分が含まれているため、煮込み料理にも非常に好相性です」と太田氏。更にソースにはカカオの果肉も使用。カカオの酸味と苦味がソースのコクを支え、奥深い味わいを演出。チョコレートだけではないカカオの有用性を、太田氏自身が証明してみせたのです。 更にコースには太田氏の大好物という山葡萄の新芽の天ぷら、薄く打ったパスタでエディブルフラワーを挟んだ美しいパスタ料理が登場。その引きだしの多さを遺憾なく発揮します。

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カカオと水で作るデザートも、このレストランの看板

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カカオと軟水で仕立てたジェラート。カカオのイメージを覆す爽やかな味わいで驚かせた

コースの仕上げは、2種類のカカオのデザート。ここで決め手となるのが、軽井沢で湧く2種の水でした。 1品目は、カカオの薄皮を16時間かけて水出しして仕立てたジェラート。乳脂肪分を入れず、水とカカオだけで作り上げたこのジェラートには、軟水が使用されています。 「アマゾンではカカオティーとして飲まれる水出しの美味しさは、すっきりした軟水でこそ引き出されます。あえて乳脂肪分を入れないことで、そのすっきりとした味を引き立てました」と太田氏。 対照的に2品目の「フォンダンショコラ」は硬水がポイント。カカオと水、バター少々に卵、砂糖で仕立てるこのケーキは、粉を使用しないため硬水でないと固まらないのだといいます。「同じレシピでも都内で作るよりもクリアな味になっています。これは水の良さのためです」と太田氏が話すように、ここでも水が重要な役割を果たしています。 カカオを知り尽くし、その持ち味を引き出す技も持つ太田氏だからこそできた2種のデザート。オープンしたあかつきには、このデザートもまた店のアイコンとなるに違いありません。

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特大のイワナは大皿から太田氏自らが取り分け。故郷・白馬を象徴する食材だ

この日のコースを彩ったのは、様々な国の技術とアイデアを、太田氏自身のフィルターを通して再構築し、そこに軽井沢の食材やアマゾンカカオが加わって生まれる唯一無二の料理たち。 思いだけではなく技術も持つ。 地域だけではなく世界も見る。 そんなバランス感覚こそが、ここ『LA CASA DI Tetsuo Ota』の何よりの魅力なのかもしれません。

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