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2020.12.22
【京都よりみちこみち】ゆるやかな一本道で世界遺産を結ぶ、きぬかけの路とその周辺:前編
室町幕府3代将軍・足利義満によって建てられた金閣寺を起点に、見事な石庭が印象的な龍安寺、天皇ゆかりの高い格式を誇る仁和寺と、3つの世界遺産をつなぐ「きぬかけの路」。 古きも新しきも、各スポットが醸し出す風情に存分にひたれるのがこのエリアの魅力。きぬかけの路とその周辺をゆったりと歩き、先人たちの過ごした時代に思いをめぐらせてみませんか。
3つの世界遺産を結ぶ歴史と個性に満ちたさんぽ道
かつて宇多天皇が暑い夏に「雪景色を見たい」と願った際に、家臣らが白い絹を山にかけて雪山に見立てたという逸話があります。この山を「衣掛山」、転じて「衣笠山」と呼び、その麓を通る道にも「きぬかけの路」と名が付けられました。 室町幕府ゆかりの寺院が多く残る一方で、美術館やギャラリーなどアートに関わる施設も充実。さらに周辺には各寺院御用達を務める老舗和菓子店や、店主のこだわりが詰まったカフェなど、地域に根付いた個性豊かな店が点在しています。
画家の感性が凝縮された「京都府立堂本印象美術館」
「蒐核(しゅうかく)」と名付けられたロビーのガラス装飾。百貨店の包装紙など身近な素材も使って制作したものなのだとか
大正から昭和にかけて活躍した日本画家・堂本印象によって建てられた美術館。ヨーロッパの邸宅を活用した美術館を参考にしたという外観から、ロビーを彩るガラス装飾、ドアノブや案内板などの内装まで、美術館全体を自らがデザイン。印象の世界観にたっぷりとひたることができます。
フロアに設置されている木彫の椅子も印象の作品。すべてデザインが異なり、実際に座ることができる
年4回ほど実施する展覧会では、印象の画業を紹介するほか、京都や日本画に関連した展示も楽しめます。緑が美しい庭園は自由に散策できるほか、野外の展覧会を行うこともあります。
京都府立堂本印象美術館
キョウトフリツドウモトインショウビジュツカン
京町家での文化体験「茶道体験カメリアガーデン」
茶道の歴史などを教わったあとは、講師によるお点前を見学。流れるように美しいお点前に魅了される
バス停竜安寺前からすぐの場所にある一軒家で、茶道体験を楽しめる「茶道体験カメリアガーデン」。もとは通訳の仕事をしていた店主の森あつ子さんが、語学と茶道の特技を生かし、海外からの観光客に向けて文化体験を行ったのがはじまりです。ていねいに教えてもらえるので、初心者でも気軽に参加できます。
お点前見学後は、実際にお茶を点てる体験を。最後はいただき方を教わりながら、自分で点てたお茶をゆっくりと召し上がれ
清水寺にほど近い二寧坂の店に次いで、2号店をオープンする際に「とっておきの場所で特別な体験をしてもらいたい」との思いから選んだのがこの場所だったのだそう。建物は築98年ほどの京町家です。さりげなく粋が凝らされた建具など、意外な発見があるので細部まで注目を。茶道体験で日常から気持ちを切り離し、ほっとひと息ついてみませんか。
茶道体験カメリアガーデン
サドウタイケンカメリアガーデン
世界遺産の境内で滋味に富んだ湯豆腐を「西源院」
精進料理七草湯豆腐付3300円。大根おろしやねぎ、ごまなど、たっぷりの薬味とともに味わう
石庭で知られる龍安寺の境内にある塔頭「西源院」の名物は、七草湯豆腐と精進料理。七草湯豆腐は、白菜や椎茸、人参、ピーマンなどの季節の野菜と、お麩で彩った目にも美しいお鍋です。豆腐は、なめらかでありながらも食べ応えのある特注品。散策で冷え切ったからだもほっこりとあたたまります。
お寺ならではの緊張感もここでしか味わえないごちそう
胡麻豆腐や焚き物、和え物などの精進料理はお膳で運ばれ、背筋がしゃんと伸びそうな低めのちゃぶ台でいただきます。四季それぞれの美しさを映す庭園に季節を見て取ったり、耳を澄まして静寂の中にししおどしの音を聞いたり、五感でじっくり味わいましょう。
西源院
セイゲンイン
ウィーンのお菓子と日本茶で安らぐ「御室さのわ」
シナモンやナツメグがアクセントになったウィーン風の焼菓子・さのわと、日本茶のセット880円
仁和寺前の交差点からほど近くにある「御室さのわ」は、ウィーンの焼菓子と、お菓子に合うようセレクトされた日本茶を味わえるカフェ。店長の井上和子さんによると、ウィーンには日本の「おもてなし」と同じ意味をもつ言葉があるそう。「たくさんの共通点があるウィーンと日本は合うと思うんです」といいます。
茶葉はおみやげとして購入できる
店名は「茶の和」を意味し、「一服のお茶でほっとする時間がもてるように」との思いが込められているます。和紙作家・堀木エリ子氏が手がけた内装や、京都の陶芸家・村田森氏作の急須でお茶を入れるなど、店内のさりげなく美しいこだわりが心地よく過ごせます。
御室さのわ
オムロサノワ
御室御所と親しまれる皇室ゆかりの門跡寺院「仁和寺」
京都御所の紫宸殿を移築した金堂は、国宝に指定。本尊である阿弥陀三尊を安置する
真言宗御室派の総本山で、世界遺産にも登録されている「仁和寺」。888(仁和4)年に、宇多天皇が父・光孝天皇の遺志を継いで創建されました。歴代天皇や皇族が住職を務めた、格式高い門跡寺院です。
御影堂は、京都御所・清涼殿で使われていた古材を使用
このあたりの地名となっている「御室」は、宇多天皇が出家し建てた僧坊を、尊敬を込めて御室と呼んだことに由来するのだそう。長かった冬を越える頃には境内の「御室桜」が咲き誇り、訪れる人々を春の彩りで迎えてくれます。
仁和寺
ニンナジ
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text:Rei Tanaka、(Rakutabi )、photo:Yasutaka Ogawa 編集:ことりっぷ編集部
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