![ハム、ハム、ハム、ハム…。これでもかと自家製ハムで攻め立てる。不器用シェフの特化型イタリアン。[IL COTECHINO/山形県山形市] by ONESTORY](https://image.co-trip.jp/content/14renewal_images_l/516943/main_image_20210331125346988.jpg)
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2021.04.01
ハム、ハム、ハム、ハム…。これでもかと自家製ハムで攻め立てる。不器用シェフの特化型イタリアン。[IL COTECHINO/山形県山形市] by ONESTORY
「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに47都道府県に潜む「ONE=1ヵ所」の 「ジャパン クリエイティヴ」を特集するメディア「ONESTORY」から山形県山形市の「IL COTECHINO」を紹介します。
「山形にウチのハムのお師匠がいる。絶対に行った方がいい」。そんなあるシェフの推薦から、取材のためにアプローチを開始したのが、今回ご紹介する『IL COTECHINO』です。 ちなみにご推薦頂いたシェフとは、山田宏巳氏です。そうです、'90年代イタ飯ブームを巻き起こし、冷たいトマトのカッペリーニや4代目徳次郎天然氷のかき氷など、型にはまらないスタイルで、今なお日本イタリア料理界を牽引(けんいん)する重鎮です。 『リストランテ ヒロ』や『ヒロソフィー』など、数々の名店を生み出してきた山田氏が2018年4月、自身の集大成という位置づけでオープンしたのが南青山にある『テストキッチンH』。連日連夜、盛況を極める同店にあってひとつの象徴的なメニューこそが、自家製のハムなのです。
『ONESTORY』編集部が同店でハムを味わい、感動し、話をうかがい、行きついたのが今回のお話。イタリア料理の巨匠がスタッフを弟子入りさせてまで扱いたかったハムの源へ。それこそが6年にも及ぶイタリア修業で独自のスタイルを開花させた『IL COTECHINO』の佐竹大志氏なのです。 今回はハム尽くし。ハムを味わうためだけに、訪れてほしい山形の1軒です。
タイプ違いのハムを豪快な一皿で提供
元は居酒屋だったという店は、カウンター席とテーブル席で構成され20席ほどの小体な空間
OVERVIEWでも書きましたが、今回の取材はハム! あのイタリアンの巨匠・山田宏巳氏をして、「習いたい」とまで言わしめた自家製ハムです! そのような予備知識を持って取材に臨んだ『ONESTORY』編集部ですが、先制パンチとばかりに取材前夜、シェフ・佐竹大志氏の料理に触れ、その予備知識を軽々と飛び越えられてしまうのです。 明日からの密着取材に備え、山形入りした取材班。まずは明日のための挨拶も兼ねて店でディナーを味わうことに。店にうかがい、佐竹氏への挨拶もそこそこにカウンター席に陣取れたのはいいのですが、この日は予想どおりの満席。厨房をひとりで切り盛りする佐竹氏はすでに戦闘状態だったのです。
「とりあえず、おまかせで」とお願いし、しばし待つことに。 まずは野菜中心の前菜盛り合わせが運ばれてきましたが、こちらはもちろんなんなくぺろり。次に運ばれてきた二皿目が、待ちに待ったハムの盛り合わせでした。他のテーブルからも豪快なハムの盛り合わせに驚嘆の声が次々と上がります。 するとテーブルごとにサービス担当の浦上亜子氏が、「こちらはイカ墨の生地で練り込んだトントロのモルタデッラですね。次は香辛料をたっぷり使い、羊の肉で作ったアラブ風。豚のモモ肉を細かくカットして整形し、プレスしたタイプ、豚の丸ごと香草ロースト、羊の香草ロースト・ポルケッラタイプ、プロシュートコット……」と、丁寧にハムの解説をしてくれるのです。 10種以上のハムについて流れるように説明してもらい、取材班は「うん、うん」ともっともな顔で頷いているのですが、すでに切りたての薫り高いハムに心を奪われているのです。説明後、待ってましたとばかりに1枚1枚、豪快に頬張り、ワインと合わせ、味の違い、香りの複雑さ、食感の楽しさを満喫。ハム尽くしのイタリアンの醍醐味を堪能しました。
怒濤(どとう)のハム尽くしは、いよいよ本格化
業務用の冷蔵庫の中には、様々なタイプのハムが格納され、出番を待っている
ハムの後、佐竹氏が差し出してくれたのは、てんこ盛りのサラダでした。 「ハムの合間に箸休めで、つまんでください! 自家菜園で採れたルッコラです」と佐竹氏。 ハムを大皿で平らげた直後に、佐竹氏が告げた「ハムの合間に」という言葉がとても引っかかります。説明の間違いかなと思っていると、ほどなくしてまたもやお皿から溢れんばかりのハムが運ばれてきたのです。 しかも二皿目のハムとは明らかに色も香りも違うタイプ。浦上氏は「裸のまま吊るす生ハム・プロシュートクルードに始まり、白カビを纏わせ熟成させたもの、大小様々なサラミに、スモークをかけたもの、牛モモ肉の生ハム・ブレザオラ……」と、先ほどと同様に丁寧に解説してくれます。浦上氏の解説によると、こちらの皿は非加熱タイプのハム尽くしということなのです。 またもや10種以上のハム。そして非加熱タイプは熟成香も加熱タイプに比べ一段と強くなり、更に食欲を刺激するのです。
黙々とハムを切り続ける佐竹氏
味わうたびに、ねっとりと脂が口に広がり、旨味が洪水のように押し寄せます。しかもそれぞれが個性的で、タイプの違いを楽しめるのですが、旨味が強い分、下手をすると食べ疲れしそうなこちらには心強いサポートがあったのです。そう、その名脇役こそが、佐竹氏が「合間」に食べてと勧めてくれたルッコラだったのです。 ルッコラは柔らかく芽が出たばかりの部分ではなく、あえて少しゴワゴワした野性味溢れる葉と茎をセレクトし、しっかりとした辛味、レモンの酸味を利かせるのがポイント。むしゃむしゃ、むしゃむしゃ咀嚼するうちに、ルッコラが口の中の油分をしっかり洗い流してくれるので、またハムへと手が伸びてしまうのです。
更にハム。そしていよいよ終盤戦に
正肉(しょうにく)にならない皮、頬肉、スネ肉をまとめた寄せ集めの腸詰めが、イルコテキーノ。この料理の旨さに衝撃を覚え、佐竹氏はハムにハマったという
二皿の大盛りのハムを味わい、ハムだけでお腹が膨れ始めると、次に運ばれてきたのは、またもやハム。 「最後は加熱したものをゼラチンで固めたタイプですね。溶けないうちに、どうぞ」と浦上氏。 豚の耳や頬肉、タンなどを煮こごりの要領で固めたものはコリコリとした食感が楽しく、牛のアキレス腱と頬肉で作るタイプは赤ワインが欲しくなる味わい。豚の皮を使い唐辛子を加えた冷製タイプもあり、そのどれもが個性豊かでした。 ハム、ハム、ルッコラ、ハム、ルッコラ。そしてまた、ハム、ハム。 取材前夜のハム尽くしはそうして過ぎていったのです。 更にお伝えするならば、その後にパスタが続き、店名にもかかげられている寄せ集め肉で作る腸詰めのイルコテキーノがメインとして登場。〆にもまたハム系がどどーんと登場したのです。
ワインは自然派中心で、グラス600円~、ボトルも4,000円台が中心で、お手頃
全ての料理を出し終えた佐竹氏は、「こんなところで大丈夫でしょうか?」と、ようやく戦闘モードから解放され、少し穏やかな表情になっていました。気が付けばお客さんは我々を残すのみ。 取材班は、ハムをなめていたこと、そしてハム尽くしという初めての体験の感動をお伝えし、明日の取材の時間を相談したところ、佐竹氏からは「明日も昼過ぎからの取材でいいでしょうか?」という答えが返ってきました。この時、 またもや衝撃の事実が発覚します。 営業後、佐竹氏は朝までハムの仕込みをするというのです。夜が明け、サラリーマンが出社する時間まで、店で仕込みをすることもざらにあるのだとか。 ハムだけで人を呼び、感動を与える。睡眠時間を削って生み出される佐竹氏の情熱のハム作りは次ページにて詳しくご紹介します!
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