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2021.06.26
奥ゆかしい日本の風情に触れる由緒ある茶室♪鎌倉・浄妙寺「喜泉庵」
鎌倉の古刹・浄妙寺の境内にある茶室「喜泉庵」。枯山水の庭園を眺めながらお茶と老舗和菓子店のお菓子がいただけるうえ、床の間の掛け軸やお花を拝見し、広い縁側で涼しげな音のする水琴窟に耳を傾けるなど、日本の情緒を感じながら心も落ち着くひと時が過ごせます。今回はそんな緑に囲まれた美しい書院造りの喜泉庵を紹介します。
鎌倉から室町、そして現代…時代と共にある浄明寺
木立の向こうに見え隠れする大きな屋根の喜泉庵
稲荷山と称する浄妙寺は鎌倉五山第五位の由緒ある禅宗のお寺で、源頼朝の忠臣・足利義兼が1188年に創建し、室町時代にはお寺の主要な7つの建物といわれる七堂伽藍(しちどうがらん)があり庵や小院などの塔頭(たっちゅう)も23院を数えるほどの大きな古刹でした。今は総門と本堂、客殿、庫裡が残っていて、天正年間(1500年代)に五山の僧が一堂に茶を喫したといわれている茶室・喜泉庵は平成3年に復元されました。
浄明寺へは鎌倉駅から23・24番系統のバスで約10分(入山には拝観料100円が必要)
小鳥のさえずりだけが響く静かな茶室・喜泉庵
広々とした和室を太い柱が支える
苔むした石畳を進んで玄関から入るとすぐに32畳の大広間が目に入ります。広間の中心を支える太い柱や頭上の梁に組まれた巨木など、大きな書院造りをどっしりと支える建築は見事です。
和室を囲むように広縁がとってあり開放感もある
畳敷きの席の横には椅子席も設けられ好きな場所に座ります。作法を気にすることなく、のんびりと思い思いの過ごし方ができるのも魅力です。 靴を脱いで上がる場所には、江戸時代にこのお寺の住職が幕府に参賀する時に使ったといわれている籠も修復されたものがかかり、籠の大きさや籠を担ぐ棹の長さを目の当たりにすると当時の様子をより身近に感じられますよ。
掛け軸と一緒に季節の花と香炉が添えられた床の間
床の間を挟んで “悟りの窓”と呼ばれる円形の窓と “迷いの窓”といわれる角形の窓が、左右にしつらわれています。この静かな和室なら、自分の心と深く向きあう時間がすごせそうです。
手入れの行き届いた枯山水の庭園
(左上)静まり返った枯山水の庭 (右上)水の音を楽しむ水琴窟 (左下)趣のある蹲(つくばい) (右下)石畳を進んだ先が喜泉庵の入り口
水流を表す砂紋を白砂に描いた枯山水の庭園は杉苔の描く曲線も美しく、5月にはサツキの刈込が美しい花を咲かせます。左奥には水琴窟があり、縁側から竹筒に耳を当てて、水滴が落ちるのを待ちわびながら聞く音色の風情もぜひ楽しんで。
心穏やかに鎌倉の歴史に思いを馳せる
「抹茶と干菓子」(660円)抹茶の銘は「萬世の白」
静かな雰囲気の中でいただく薄茶は、お菓子に干菓子か生菓子を選びます。干菓子はあん入りの落雁で、このお寺にゆかりのある足利家の家紋「丸の二引両」をあしらっています。この家紋は浄妙寺山門の瓦にも入っていて、わかりやすいので帰りにぜひ確かめてみて。
季節感も一緒に愛でたい老舗のお菓子
美鈴の和菓子(左)「あじさい」(右)「渦潮」
生菓子は鎌倉の老舗「美鈴」のお菓子がいただけます。季節のお菓子が数種類用意され練り切りやきんとんのほか、夏場の錦玉羹は見ているだけでも涼しさを感じます。 おいしいお菓子とお茶をいただきながら、のんびりとした鎌倉を楽しんでくださいね。
「抹茶と美鈴の季節の生菓子」(1100円)
喜泉庵
キセンアン
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高橋茉弓
Writer
高橋茉弓
おやつの時間を何よりも大切にするライター&カメラマン。波の音とカフェがあればそれで幸せ。
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