
172
2016.04.25
映画「アメリ」の舞台、フランス・モンマルトルにたたずむ、ルノワールが住んでいた美術館へ
映画「アメリ」や「ムーラン・ルージュ」の舞台にもなったモンマルトルは、その昔、ピカソやゴッホ、ルノワール、ドガなど偉大な芸術家がアトリエを構えた場所でもあります。 19世紀から20世紀にかけ近代アートの発信地だったモンマルトルで、多くの芸術家が実際に滞在していた秘密の美術館へご案内しましょう。
モンマルトルの路地裏にある美術館

パリの中でも、ひときわたくさんの観光客でにぎわうモンマルトルの丘。白亜の聖堂・サクレクール寺院や、観光客の似顔絵を描くアーティストで賑わうテアトル広場があることでも知られます。 それらの喧騒を抜けて、一歩路地裏に入ると、そこはノスタルジーあふれる風景が広がります。石畳の路地、蔦に覆われた家々、そしてぶどう畑がひろがる静かな一角に、モンマルトル美術館はあります。 モンマルトル美術館へは、地下鉄2番線のアベス駅で下車後、ルイーズミッシェル広場発のケーブルカーに乗車し、終点で下車。駅から徒歩15分です。

ミュゼ・ドゥ・モンマルトルと書かれた看板が目印
芸術家たちの息づかいを感じるアトリエへ

美術館の建物は、もともとモンマルトルの中で最も古い17世紀の邸宅でした。当時は、ルノワールやユトリロなど様々な芸術家が住み、数々の名作が誕生しました。 館内では、画家たちが活躍した18世紀から19世紀当時の家具や調度品などを取り揃え、再現されたアトリエも見学することができます。1912年から1926年まで長くこの場所で暮らしたシュザンヌ・ヴァラドンとその息子ユトリロのアトリエに一歩入ると、まさにアーティストが今なお、キャンパスに向かっているような錯覚を覚えます。 木枠の窓からやさしい光が差し込むアトリエから、モンマルトルを愛し、その風景を描き続けた芸術家たちの息づかいが聞こえてくるようです。

アトリエには、制作活動に欠かせない筆やキャンパス、絵具やデッサンなども飾られています
モンマルトルの歴史そのものが封じ込められた美術館
当時、パリの中心部に比べ家賃が安かったことから、芸術家たちはモンマルトルに移り住みました。モンマルトルも芸術家たちを懐深く包み込み、芸術の拠点として世界にその名を知らしめることになります。

美術館には、ピカソやモディリアーニといった一流の画家たちが飲んで歌ったシャンソニエ「オ・ラパン・アジル」のオリジナル看板、作家やアーティストが常連だったキャバレー「シャノワール」のちらし、ロートレックが手掛けたポスターなど、当時の貴重な作品の数々が展示されています。


Henri-Gabriel Ibels, Footit et Chocolat, vers 1895, Huile sur bois © Musée de Montmartre,
また9月25日までは、企画展と「1870年から1910年までのモンマルトル芸術家:スタンランからサティまで」が開催中。 19~20世紀にモンマルトルで活躍したピカソやロートレックなど20人を超える画家の作品にスポットを当てた展示です。
新しいパリと古き良きパリが、一望できる美術館

美術館から眺めるパリの風景
標高130メートルとパリで最も高い位置にあるモンマルトル。美術館からはパリの北側の風景がパノラマ状に広がり、その眺めは別格です。 また、美術館の美しい中庭の下には、ぶどう畑が横たわっています。毎年10月には収穫祭が開催され、小さなぶどう畑から収穫された「幻のワイン」として人気を博しています。

この畑から収穫されるぶどうで、およそ1000本前後のワインが限定生産されます ©Thomas Dupaigne
パリの人達の憩いの場「ルノワールの庭」でほっと一息

ルノワールの庭はだれでもくつろぐことができるフリースペース
1875年から1877年までこの場に滞在したルノアールへのオマージュを込めて館内に誕生したのが、「ルノワールの庭」です。庭の隣は、パリ市の環境保護地域に指定されたエリアになっており、カエデやマロニエの木陰がやさしく訪れる人たちを包んでくれます。 アーティストの足跡をたどりながら絵を眺め、のどかな風景の中で、ゆったりした気持ちを味わえるのが、モンマルトル美術館。 時間に追われることのない、味わい深いひとときを約束してくれる場所です。

MUSÉE DE MONTMARTRE
ミュゼ・ドゥ・モンマルトル
フランス 12, RUE CORTOT 75018 PARIS
※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
※画像・文章の無断転載、改変などはご遠慮ください。
髙野志津
アート・カルチャー
の人気記事
の人気記事

























