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2022.05.25
モーツァルトを聴きながら味わいたくなる喜多方の地酒♪「酒蔵くらしっく 小原酒造」
福島県喜多方市は、蔵造りの建物が点在する趣ある「蔵のまち」です。そんな蔵が建ち並ぶ風景のシンボル的存在でもある老舗酒蔵「酒蔵くらしっく 小原酒造」は、モーツァルトを聴かせてお酒を造る日本初の音楽酒の酒蔵として知られています。
老舗酒蔵の明治時代初期の蔵はフォトジェニック
のれんをくぐって店内へ。毎年5月に杉を山に取りに行き、手作業で杉玉を作って吊るす
喜多方駅から車で7分ぐらいの場所にある「おたづき蔵通り」は、古い蔵が建ち並び、「喜多方市小田付伝統的建造物群保存地区」に選定されています。江戸時代には味噌や醤油、お酒など醸造業が盛んになりました。蔵も建てられ、今も明治や大正時代のものが多く残っています。「酒蔵くらしっく 小原酒造」はそのおたづき蔵通りの中心地にあります。 小原酒造は1717(享保2)年に味噌や醤油、麹の製造で創業。明治時代初期にこの場所で伏流水が見つかったため、酒造業も始めたそうです。喜多方は飯豊山系の良質な伏流水が流れ込む恵まれた地域。今も敷地内のおいしい伏流水をお酒の仕込み水として使ってます。
蔵座敷はショップに。かつて蔵人が使っていた食台や古い徳利なども並ぶ
白壁の風格ある小原酒造の蔵は、酒造りが始まった明治時代初期に建てられたもので、蔵座敷として使われていました。のれんをくぐると土間の右手に座敷があり、よく見ると床の間もあります。今はお酒を並べて、ショップとして使われています。 蔵は震災で4棟壊れてしまったので、現在は5棟。店の向かいに母屋があり、蔵のひとつは味噌と醤油の店蔵として使われていたそうです。
モーツァルトで醸した音楽酒は10代目の発案
1878(明治11)年に建てられた仕込み蔵にスピーカーを設置し、モーツァルトをかける。特許も取得
現在は10代目の社長であり、杜氏の小原公助さんをはじめ5名で酒造りをしています。社長が1984(昭和59)年に新たに始めたのが音楽醸造。できるだけいいお酒を造りたいと、東京の滝野川醸造試験場に行っていたときに、図書館で音楽醸造の本や牛に音楽を聴かせると乳の出がいいというドイツのデータに出会ったそう。 どこもやっていなかったので、酵母を活性化させるために、もろみ造りの時に流行りの演歌、好きなジャズ、ベートーベンやバッハ、モーツァルトなどクラシックをかけながら仕込んでみました。すると鑑評会で必ず賞を受賞するのがモーツァルトだったことから、モーツァルトを聴かせるお酒が誕生したということです。
酒蔵の通路には平成時代からの歴代杉玉が飾られている。珍しい光景
特別に交響曲を流していただきましたが、蔵で聴くクラシックはとてもよい響きで、心地よい気分に。もろみが立っているときに聴かせるそうですが、仕込んでいる皆さんにもいい効果があるようです。優雅に醸されたお酒は、飲んだら音楽が聴こえてきそうですね。2009年にはすべて純米酒の蔵に切り替え、米のうまみも楽しめるお酒に仕上がっています。
歴史ある建物も見学しながらお酒造りを学ぶ
まずは釜場でお酒の造り方の基本的な説明を聞き、仕込み蔵などを見学する
約10分間の酒蔵見学(無料、予約不要)も行っています。今回は専務の小原富美子さんが案内してくださいました。天井が高く、梁も見える築100年以上の釜場は仕込みが終わって静かな空間に。 仕込み時期は11~2月。「ここで酒米を洗うのですが、天井から雪が舞い落ちて、ダイヤモンドダストのようできれいです」と小原さん。大吟醸は酒米をすべて手洗いするといい、寒い中、杜氏や蔵人がおいしいお酒のために、丁寧に仕込んでいる姿が目に浮かびます。
レンガ造りの麹室。蒸米に麹菌を繁殖させる麹造りは温度管理が大切という
麹室は珍しいレンガ造りで、喜多方の酒蔵でもここだけだそう。喜多方の三津谷の登り窯で造られたレンガを使用しています。火事の延焼を防ぐためですが、レトロな雰囲気が素敵です。明治時代に建てられた仕込み蔵や、できたお酒をタンクで半年間寝かせる貯蔵蔵を見学したあとは、ショップで利き酒もできますよ。なお、仕込み期間中は入り口からの見学になります。(感染症対策により、入り口からの見学の場合もあります)
モーツァルトの曲名がつけられた「蔵粋」
「純米大吟醸 管弦楽 蔵粋」720ml・2805円と「純米大吟醸 管弦楽 蔵粋 角200」200ml・1047円。スタイリッシュな角のボトルは10代目のオリジナルデザイン
モーツァルトを聴かせたお酒の銘柄は、“蔵のまち“の蔵に粋をあわせて「蔵粋」と書き、“くらしっく”と読みます。さらにユニークなのが、聴かせたモーツァルトの曲でお酒の名前を付けていること。例えば、人気No.1の大吟醸純米は、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」を聴かせるため、「大吟醸純米 交響曲 蔵粋」と付けられています。 おすすめの「純米大吟醸 管弦楽 蔵粋」は、管弦楽曲を聴かせたお酒。40%精米したうまみのある酒米・山田錦を使ったバランスのいい純米酒で、白ワインのような味わいです。
少量仕込みの「純米桃色にごり 桜」720ml・2250円。この桃色は光に弱く、箱のまま冷暗所に置くのがおすすめ
甘めが好きな方におすすめなのがきれいなピンク色の「純米桃色にごり 桜」。9号酵母の中に存在している、天然のピンクの色を持った「桃色酵母」を使って醸された、世界初のにごり酒だそう。甘酸っぱい味わいで、とろりとした飲み口。開けるとシュワシュワと発泡しているので、食前にもよさそうです。度数は8度と低めなので飲みやすいお酒です。 年末ごろから出るしぼりたてのお酒なので、桜の名の通り、お花見でいただくのもおすすめです。180mlのカップ付きタイプはアウトドアにもぴったりですよ。
おみやげの日本酒選びは歴史を感じる蔵座敷で
ピアノコンチェルトを聴かせた人気の「純米協奏曲 蔵粋」などさまざまなお酒が並ぶ
蔵座敷を利用したショップではお酒の販売のほか、利き酒も行っています。10種類ぐらい無料で利き酒ができるので、いろいろ味わいながらお気に入りの1本を見つけてみてはいかがでしょう。
酒粕くるみ540円。おつまみやおやつにぴったり
おみやげにもいい酒粕くるみは、くるみに酒粕をコーティングした甘いお菓子。くるみの食感がよく、ついつい手が伸びてしまいます。純米の酒粕もおすすめですが、酒造りの12~3月ごろしか作られないもの。欲しい方はこの時期を中心にチェックしてみてくださいね。
酒蔵くらしっく 小原酒造
サカグラクラシックオハラシュゾウ
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細江まゆみ、写真:加藤熊三
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