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2023.06.23
牧野博士のように緑の世界をめぐる♪ “歩ける植物図鑑” 高知で1泊2日のリトリート
約3000種類もの植物が生育し「歩ける植物図鑑」ともよばれる高知県。そんな高知の草花に魅せられ、植物の研究に生涯を捧げたのが高知県出身の植物分類学者・牧野富太郎博士です。今年の4月にスタートしたNHKの連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルにもなり注目を集めています。 牧野博士が植物採集を行ったスポットや博士が発見・命名したゆかりの植物に出合える高知県へ。博士もめぐった緑に満ちる場所で高知の豊かな自然を感じるリトリートへと出かけましょう。
【高知タウン】 牧野博士を深く知るなら「高知県立牧野植物園」へ
(左)温室のジャングルゾーン(右上)芸術性も兼ね備える牧野博士の植物図(複製)(右下)内藤廣氏が手がけた建築と調和する中庭
まず牧野博士のことを知るために訪れたいのが、博士の業績を伝える植物園。まるで自生するかのように植栽された3000種類以上もの植物が8haの広大な敷地を彩ります。 牧野博士は新種や新品種など1500種類以上もの植物を命名し、40万枚の標本を収集。精巧に描かれた植物図により、正しくその知識を広めることに生涯を費やしました。植物園では「牧野富太郎記念館 展示館」で博士の業績や生涯を紹介。博士ゆかりの植物が約250種類植栽された中庭も散策すると、さらに牧野博士への親しみが感じられますよ。
(左上)研究員の松野倫代さん(右上・下)レストランやショップが入る植物研究交流センター「ラボテラス」 ※右下・左下は高知県立牧野植物園提供
博士の飽くなき探求心を受け継ぐ世界的な研究機関としても知られる牧野植物園。園内にある研究施設では植物の新たな効用の調査や、栽培実験などが行われています。 「未来を担う子どもたちに、植物を使った科学の魅力を伝えたいのです」と話すのは研究員の松野倫代さん。2023年5月には植物研究をより身近に感じてもらうため植物研究交流センター「ラボテラス」がオープンし、ワークショップやオープンラボを通して植物の“科学”としてのおもしろさが体感できるようになりました。レストランやショップも併設され、新しい楽しみも充実。牧野博士の想いを未来へとつなぐ新しい取り組みに期待が高まります。
高知県立牧野植物園
コウチケンリツマキノショクブツエン
【高知タウン】 緑のある暮らしを教わりにハーブ農園「まるふく農園」へ
(左)ハーブブーケ3300円~は前日までの予約制。もしくはオンラインショップで購入(右上)ハーブの苗を育てる楠瀬健太さん(右下)ハーブ苗の購入は10月中旬~6月
高知県立牧野植物園から車で約25分、高知市内の住宅街の一角にハーブの専門農園「まるふく農園」があります。営むのは楠瀬さん一家。30年以上前に父の康博さんが農薬や肥料を使わない炭素循環農法で食用ハーブの栽培をスタートし、息子の健太さんが花材や家庭用の苗づくりを手がけながら、ブーケやコーディアルといった新しいハーブの楽しみ方を提案しています。
(左上)お花畑クッキー2枚入り400円(右上)自家製ジャムは1個500円(左下)フレッシュハーブで作るハーブコーディアルは現在オンラインショップでのみ販売(右下)レモングラス&緑茶ハーブティー300円など
「暮らしのなかにハーブを取り入れるなら、まずは自分で育ててみるのがいいですよ」と健太さん。香りや味、花の姿も異なるハーブは、それぞれの季節や成長段階に楽しみがあります。苗から栽培して、数あるハーブのなかからお気に入りを探してみましょう。 農園では100種類以上ものハーブを栽培し、10月中旬~6月には苗も販売。ハウスに併設するショップではお花畑クッキーやジャム、毎週金曜日には天然酵母のパンも並びます。牧野博士のように探求心をもち続け、農家の枠にとどまらず軽やかに挑戦を続けるハーブ農園に訪れてみてくださいね。
まるふく農園
マルフクノウエン
【安芸市】牧野博士も採集に訪れた「伊尾木洞」で神秘的な風景に出合う
多数種のシダが同じ場所に自生するのは珍しく、天然記念物に指定されている
高知市から車で約1時間15分、安芸市へと移動し40種類以上ものシダ植物が群生する海食洞「伊尾木洞」へ。さまざまな化石がみられる洞窟を抜けると、シダ植物が茂る緑の世界が広がります。牧野博士ゆかりの場所としても知られ、1892(明治25)年に伊尾木洞で3種類のシダ植物を採集。一面に茂るシダ植物からは、博士も夢中になった植物の力強さと神秘が感じられます。
牧野博士が採集したホウライシダ。洞窟の入り口近くに群生地がある
洞の入り口から歩いて15分ほどの最深部には落差約5mの小さな滝が流れ、より一層幻想的な雰囲気に。ガイドツアーでは、牧野博士が採集した草花をはじめ伊尾木洞ならではの植物をわかりやすく解説してくれる草花ガイドに特化したコースも用意。観光案内所では長靴の無料レンタルもできるので安心して洞内の散策が楽しめます。
伊尾木洞
イオキドウ
【香美市】湖畔にたたずむ隠れ家宿「湖畔遊」でリラックスステイ
(左)新緑に染まる庭を散策(右上)すべての客室にヴィンテージオーディオを設置(右下)ウッドデッキのテラス席
こちらは物部川の自然に溶け込むように建ち、1日3組の宿泊客を迎える宿。音楽リトリートをコンセプトにすべての客室に高品質なオーディオが設置されています。湖畔の景色をひとり占めできる大きな窓と露天風呂で、音楽×自然との一体感を感じられる豊かなひと時が過ごせます。
(左)松花堂弁当2860円(右)オーガニックコーヒーが付くケーキセット1200円
湖畔遊のカフェや温泉は日帰り利用もできるので、立ち寄りにいかがでしょうか。メニューは土佐あかうしや季節の野菜など、地元の食材を使ったランチやスイーツなど。ウッドデッキのテラスには、テーブルやカウンター、デッキチェアなどさまざまな席を用意しています。庭には高知県内の森から採集した植物のみを植栽し、高知の生態系を維持しているそう。新緑に染まる庭を眺めながら食事や入浴を楽しんでくださいね。
湖畔遊
コハンユウ
【越知町】牧野博士の学びの場「横倉山」を博士気分でトレッキング
(左)地質学や歴史的にも見どころが多い山(右上)樹齢500年以上もの巨杉が林立する杉原神社(右下)「馬鹿だめし」と呼ばれる断崖絶壁のスポット
越知町のシンボルである横倉山は、かつて修験の場として信仰されていたことからアカガシの原生林といった手つかずの自然が残り、1300種類もの草花が自生する植物の宝庫。さらにおよそ4億年前のサンゴなどの化石が産出されたことから、日本有数の古い地層が見られる場所として地質学的に貴重な山としても知られています。
(左上)横倉山の代表的な植物、ヨコグラツクバネ(左下)博士が和名を発表したコオロギラン。夏に小さな花を咲かせる(右)ヨコグラノキは博士が日本で最初に発見・命名した基準木が残る
若き日の牧野博士も植物採集のため横倉山に足しげく訪れ、ヨコグラノキやヨコグラツクバネといった25種類の植物を発見。現在もその多くを横倉山で見ることができます。気ままにハイキングを楽しむのももちろん、横倉山をめぐるなら草花ガイドと散策するツアーもおすすめ。博士ゆかりの植物はもちろん、横倉山ならではの草花や山の歴史などを聞きながら散策すればより好奇心が刺激されそうです。
横倉山トレッキングツアー
ヨコグラヤマトレッキングツアー
0889-26-1004
越知町観光協会
https://ochi-kankou.jp/asobu/mtyoko/mtyoko.html
3時間コース1人3000円
【日高村】緑が心地よい「屋根の上のガチョウ」でひとやすみ
屋根の上に置かれたガチョウのオブジェがシンボル
ハイキングのあとは、日高村のカフェでひと息。ここはイギリスの湖水地方をイメージしたパティスリーカフェです。緑に囲まれた、まるで絵本の世界のような空間が魅力。離れのコテージも人気で、アンティーク調の家具が空間に調和し心地よい時間が過ごせます。
(左上)メルヘンな雰囲気の店内(左下)仁淀ブルーゼリー420円など(右)アフタヌーンティーセットは好きなケーキの料金+580円
メニューは、パンにサラダやドリンクが付いたブランチ、小夏やイチジクといった日高村のフルーツを使った手作りケーキ、好きなケーキが選べるアフタヌーンティーセットなど。約20種類のケーキのなかには春はイチゴ、夏はメロンといった旬の食材を使った季節限定も約5種類そろいます。敷地内にはご当地メニューが味わえる「レストラン高知」や雑貨店「めだか池ギャラリー」も併設するので立ち寄ってみてくださいね。
屋根の上のガチョウ
ヤネノウエノガチョウ
【仁淀川町ほか】博士の名を広めた原点の場所。奇跡のブルー「仁淀川」へ
中津渓谷の遊歩道を散策
最後は「仁淀ブルー」と称される奇跡の清流・仁淀川流域にも足をのばして。牧野博士は仁淀川の支流、中津川が流れる仁淀川町上名野川で新種を発見し、植物学者の大久保三郎とともに「ヤマトグサ」と命名。これは日本人による国内で初めての新種発表として知られ、日本の植物学に大きな足跡を残しました。 そんな博士にとって原点の場所である仁淀川流域には、仁淀ブルーを眺めるビュースポットが点在。2.3kmの遊歩道が整備される「中津渓谷」もそのひとつで、神秘のブルーと渓谷は間近に見学でき、落差20mの雨竜の滝はまさに圧巻の景色です。
安居渓谷の一番奥にある砂防ダム
仁淀川の支流、安居川が流れる渓谷「安居渓谷」では、砂防ダムや飛龍の滝など、数々のスポットでひときわ透明度が高い仁淀ブルーが見られます。安居渓谷のなかでも特に美しいと知られているのが水晶淵。季節や時間帯によって青や緑に色を変え、透き通るようなエメラルドグリーンの景色が広がります。
中津渓谷
ナカツケイコク
安居渓谷
ヤスイケイコク
豊かな自然と緑に囲まれたあの場所へ。牧野博士のように好奇心の赴くままに、県内各地をめぐる高知リトリートに出かけてみませんか。
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橘春花(フォレスト)写真:森昌史(フォレスト)
連続テレビ小説を生かした博覧会推進協議会(事務局:高知県庁観光政策課内)
令和5年4月から放送されているNHKの連続テレビ小説『らんまん』を県観光の振興に最大限に生かして、ひたすら草花を愛し続けた牧野博士の精神や功績を後世に引き継いでいく取り組みを実施。県、市町村、関係団体等により組織する推進協議会を設置し、官民協働により事業を推進しています。
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