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2025.03.28
鳥取・倉吉に県立美術館がオープン♪芸術にときめいて、うつわに温泉に鳥取満喫トリップ
3月30日、鳥取のアートシーンに新たな風を吹き込む「鳥取県立美術館」が倉吉市にオープン。アンディ・ウォーホルの作品をはじめとする現代アートや、郷土にまつわる美術コレクションの数々が鑑賞できる鳥取芸術の新たな拠点が誕生しました。 今回はそんな注目の美術館と一緒にめぐりたいアートな鳥取旅をご紹介。城下町の風情が漂う倉吉の美しい町並みを散策したり、まるで絵画のような線路跡を訪れたり、観光スポットがもりだくさん。山陰の名湯・三朝温泉の宿に泊まって、鳥取市内にある民藝ゆかりの場所まで足を延ばしてうつわ探しなど、芸術でこころを満たす1泊2日の鳥取トリップにでかけませんか。

話題の「鳥取県立美術館」で世界のアートを鑑賞しましょう

(左)吹き抜けの「ひろま」(右上)3階の展望テラスからは大山(だいせん)が眺められる(右下)各階にテラスがある
「気軽に訪れることができる、開かれた場所であるように」と、「OPENNESS!」をコンセプトに掲げている鳥取県立美術館。開放感に満ちた館内には無料で利用できるエリアをたくさん設けたり、建築にも境界線をなくすためのさまざまな仕掛けを施したりして、その想いを体現しています。 たとえば3階までの吹き抜け空間「ひろま」は美術館では珍しいガラス張りで、開放感を感じながらくつろぐことができます。また、展示室以外にも入館無料エリアに作品を展示したり、鳥取ならではの漫画に関するトピックスをパネルで紹介したり。ぐるりと館内を回遊するだけで、自然とアートにふれられる工夫がちりばめられています。

(左上)国の史跡「大御堂廃寺跡」が目の前に広がるロケーション(右上)天井の木組みでは鳥取砂丘の風紋や倉吉絣の模様を表現(左下)約1000㎡の広さがある企画展示室(右下)ひろまにあるキッズスペース
美術館では、50年以上にわたって「鳥取県立博物館」が収集してきた約10000点の美術コレクションを引き継ぎながら、国内外の作家の優れたアートや若手アーティストの作品などを幅広く収蔵・展示します。3階建ての建物に、展示室は全部で6室。うち5室のコレクションギャラリーでは彫刻、洋画、日本画などジャンルにわけて作品を紹介。最も広い企画展示室では、全国をめぐる展覧会やオリジナルの企画展が開かれます。 3月のグランドオープンに合わせて開催されるのは、「リアル」をテーマにした企画展。江戸時代の絵画から現代美術まで、国内外の総勢100名以上の作家によって制作された約 180点の作品を「リアル」という視点で紐解きます。

【開館企画展】
『ART OF THE REALアート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-』
会期:2025/3/30(日)~6/15(日)
企画展鑑賞料:1600円(コレクションギャラリー鑑賞料も含む)
※会期中に展示替えあり
詳細はこちらから

鑑賞の余韻に浸るミュージアムのカフェ&ショップへ

(左)キューバサンド1100円(右上)キッシュサラダプレート1200円(右下)芝生広場を眺めるカフェ店内
アート鑑賞のあとは、ミュージアムカフェ「GARDEN By Sevendays café」へ。大山バターや野菜など鳥取県産の食材を中心に取り入れたモーニングやランチ、スイーツなどがそろいます。テイクアウトメニューも用意しているので、目の前の芝生広場でピクニックをしながら過ごすのもおすすめ。コレクションの作品に合わせた限定メニューも登場予定で、食とアートを掛け合わせたカフェタイムが楽しめます。

(左上)ブリロ・ボックス キャンディ缶1個1200円(右上)シンボルマークの「T」をモチーフにした竹とんぼ(左下)オリジナルデザインの手ぬぐい(右下)鳥取県内の国造焼、浦富焼、福光焼とコラボしたオリジナルマグカップ
ミュージアムショップでの買いものも美術館でのお楽しみ。アンディ・ウォーホルの作品『ブリロ・ボックス』をモチーフにしたコレクション関連アイテムをはじめとするオリジナル商品が充実しています。 たとえば、山陰の民工芸品をそろえる倉吉市内の人気セレクトショップ「COCOROSTORE」の監修で制作したのは、鳥取県内の3つの窯元とコラボレーションしたオリジナルマグカップ。ほかにも、シンボルマークの「T」の形を生かした竹とんぼや手ぬぐいなど、遊び心にあふれたアイテムがそろいます。 鑑賞の余韻に浸りながらカフェで過ごしたり、アートなおみやげを探したり。館内を回遊すれば、お気に入りのくつろぎ空間が見つかるかもしれません。誰しもに開かれた美術館で芸術にふれる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
鳥取県立美術館
トットリケンリツビジュツカン

美術館と合わせて訪れたい倉吉白壁土蔵群にある「土蔵そば」でお昼ごはん

(左)2段で一人前の土蔵そば870円 (右上)川沿いには、江戸・明治期を中心とした白壁土蔵の建物が並ぶ (右下)創業当時の雰囲気が残る
かつて城下町・商都として栄えた風情が漂い、赤い石州瓦と白い漆喰壁のコントラストが美しい倉吉白壁土蔵群。その一角に創業70年以上の老舗「土蔵そば」があります。大正時代に建てられた土蔵を活用した店内には、調度品や民藝のうつわがディスプレイされ、空間から民藝が感じられます。看板メニューは割子風の「土蔵そば」。地元産のそば粉を使用した二八そばは、ほどよいコシがあって風味豊か。特製のそばつゆを直接かけていただきます。

(左上)手ぬぐい各1430円 (右上)干支置物各1500円 (左下)左から国造焼のゆのみ3630円、タンブラー2970円、牛ノ戸焼のカップ&ソーサー4180円 (右下)店内には雑貨やうつわなどがずらりと並ぶ
1階には、民藝品や雑貨を扱う「民芸TAKAKI」があります。そばのうつわにも使われている倉吉の福光焼や国造焼などの作品をはじめ、手ぬぐいや郷土玩具など、鳥取県の窯元や作家さんの作品を中心に販売しています。素朴でかわいい手仕事の数々を、日常に取り入れてみませんか。
土蔵そば
ドゾウソバ

美術館からすぐのカフェ「sept」で味わう、まるでアート作品のようなパフェ

季節ごとに変わるパフェ1500~1700円
漆喰で装飾された土壁にすりガラスの窓など、洗練された雰囲気があふれるこちらのお店で注文したいのが月替わりのパフェ。まるで食べるアートのような装いで、県産のフルーツなどを主役にすべてのフィリングを手作りしています。2種類のジェラートに加え、ケーキやゼリー、アメ細工など、その時々で8~10種類が組み合わさり、さまざまな食感と味わいが口いっぱいに広がります。春には鳥取県立美術館のオープンを記念して、アートをテーマにしたパフェが登場予定です。

(左上)随所に店主のセンスが光る内装(右上)鳥取県の窯元のカップが中心にそろう(左下)ギャラリーの展示は2~4週間のペースで内容が変わる(右下)扉や窓などはオーダーメイドのしつらえ
古いものと新しいものが調和したインテリアは、どこを切り取っても絵になる空間。ギャラリースペースもあり、地元の作家さんの作品を中心に展示販売を行っています。料理に使用される食器にも、倉吉のガラス工房「saon」のグラスや「上神焼上神山窯」のカップなど、鳥取メイドが並びます。食事の際には、うつわにも注目してみてくださいね。
sept
セット

倉吉を訪れたら一度は足を運びたい。竹林に囲まれた「旧国鉄倉吉線廃線跡」

木漏れ日が差しこむ竹林と古びた線路が織り成す光景(写真はイメージ)
まるで絵画のような風景が見られる「旧国鉄倉吉線廃線跡」にも立ち寄りを。こちらは倉吉駅から関金町の山守駅までの約20kmを結んでいた国鉄倉吉線の廃線跡。1985(昭和60)年に廃線となりましたが現在もその姿をとどめています。 線路をたどって歩いていくと竹林にたどりつきます。沿線には線路だけでなく駅のホーム跡も残り、泰久寺駅には当時の駅名標のレプリカが設置されてレトロな雰囲気。竹林から1km東側、県道45号線沿いには駐車場と観光案内所があり、オリジナルのグッズ販売やギャラリーでの展示も。ガイドと一緒にめぐるトレッキングツアーも開催しています。のどかな田園風景と幻想的な竹林を眺めながら、「日本一美しい廃線跡」として話題になった線路をたどる散策はいかがでしょうか。
旧国鉄倉吉線廃線跡
キュウコクテツクラヨシセンハイセンアト

倉吉から車で10分。こころと体を癒やしてくれる美肌の湯「三朝温泉」にステイ

(左上)足湯やショップ、宿が集まる温泉街(左下)「三朝ヨーグルト」の飲むヨーグルト380円、ヨーグルトバターサンドクッキー330円(右)飲泉場・足湯がある「薬師の湯」
鳥取を代表する温泉地のひとつ「三朝(みささ)温泉」へ。高濃度のラドン含有量を誇り、「三たび朝を迎えると元気になる」とかつては湯治として親しまれてきた名湯です。三徳川沿いに広がる町並みには個性豊かな宿や飲食店、足湯や露天風呂、日帰り入浴施設が建ち並びぐるりとめぐれます。 なかでも湯上がりに訪れたいのが温泉街にある「三朝ヨーグルト」。入浴したあとにおいしく感じられるようにと、さっぱりとした甘さに作られたヨーグルトや自家製スイーツが味わえます。
三朝ヨーグルト
ミササヨーグルト

(左)女性限定の「ばら妃乃湯」(右)約1000坪もの日本庭園を有する
宿泊は敷地内に3本の源泉をもち三朝温泉のなかでも随一の湯量を誇る宿「三朝館」へ。12種類もの個性豊かな湯処で三朝の名湯が楽しめます。毎日15~22時には、200輪のバラが湯船を彩る「ばら妃乃湯」が登場。バラの香りと湯の効能に癒やされて、特別なステイを叶えてくれそうです。
三朝館
ミササカン

ひと足のばして、山間の窯元「山根窯」でこだわりのうつわ探し

(左)手作りの看板に味わいがある (右上)登り窯の煙突 (右下)メキシコの椅子・エキパルチェアなど国内外から収集した民藝品が並ぶギャラリー
2日目は県東部の鳥取市へ。手仕事によって作られた日常使いの実用品に「用の美」を見出した「民藝運動」の精神が根差す鳥取県。「民藝のプロデューサー」として知られる吉田璋也の影響が色濃く残る窯元が点在し、それぞれが独自の作風で作品を生み出しています。自然豊かな里山・青谷町にある「山根窯」もそのひとつ。この地は因州和紙の産地でもあり、古くからものづくりが盛んな地域です。 立派な登り窯の煙突と大量の薪が迎えてくれるこちらの窯では、1985(昭和60)年に開窯して以来、春と秋の年2回焼成する昔と変わらない作り方を守っています。蹴りロクロで作陶するスタイルで、釉薬は灰や鉄などから作った自家製。同じデザインでも、それぞれに個性があるのが魅力です。

(左)ミルクピッチャー3850円~、カップ&ソーサー5500円~など(右上)多様な絵柄のスリップウエアのうつわ(右下)シュガーポットはサイズも柄も種類豊富
化粧土をスポイドで垂らして模様を描くスリップウエアの作品に定評があり、そのデザインは実に多彩。国内外の民藝品からインスピレーションを受けたという作風は、和とも北欧ともエスニックとも思える独特の雰囲気をまとっています。料理を盛るとさらに生き生きとして見えるうつわは、普段使いにぴったり。ご夫婦で切り盛りするため、訪れる際には事前連絡を忘れずに。
山根窯
ヤマネガマ

鳥取駅近くで民藝の魅力にふれるなら名割烹「たくみ割烹店」へ

(左)1階のテーブル席。2階には座敷も(右上)ピッチャーや醤油さしにも窯元の作品を使う(右下)左から「鳥取民藝美術館」「鳥取たくみ工芸店」「たくみ割烹店」
鳥取駅から徒歩5分ほどにある「たくみ割烹店」は、鳥取の民藝にたっぷりと浸れるランチスポット。「美術館に飾られたうつわを見るだけでなく、暮らしのなかで美しく用いることを伝えたい」という吉田璋也の想いから1962(昭和37)年に開店した割烹です。山根窯や延興寺窯といった鳥取の窯元をはじめ、島根や沖縄など各地から集めたうつわで料理を提供。店内では吉田璋也が考案した建築意匠や芹沢銈介の作品も見られ、随所に民藝の精神が宿ります。

鳥取和牛 すじ煮込み定食1400円
ランチで提供するのは、鳥取和牛を使った定食やカレーなど。鳥取和牛のすじ煮込みの定食は、肉本来の持ち味を生かした薄味仕立て。名物のカレーには味噌を加えてコクがプラスされ、上質な鳥取和牛のおいしさがルーに溶け込んだ上品な味わいが楽しめます。夜限定で味わえる、しゃぶしゃぶのルーツになった「すすぎ鍋」もおすすめ。割烹の隣には「鳥取民藝美術館」や「鳥取たくみ工芸店」も併設。素敵なうつわを見たり、使ったり。民藝にふれる時間を過ごしてくださいね。
たくみ割烹店
タクミカッポウテン
鳥取砂丘コナン空港から倉吉駅まで直行バスで約45分、倉吉駅でバスに乗り換えて美術館までは約10分です。開館に合わせて設置されたバス停「県立美術館前」をご利用くださいね。 今年は3年に一度、瀬戸内海の島々を舞台に開かれる「瀬戸内国際芸術祭2025」も開催されます。鳥取県から瀬戸内海エリアまでは車で約2時間30分。アートで盛り上がる中四国エリアをめぐってみてはいかがでしょうか。
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橘春花、西村恵美(フォレスト) 写真:森昌史(フォレスト)
鳥取県立美術館

50年にわたる鳥取県立博物館美術部門のコレクションと活動を引き継ぎながら、『とっとりの未来を”つくる”美術館』が誕生しました! 人々が集い、楽しみ、交流や活動し、とっとりのアートを発信する拠点として、居心地の良いおおらかな空間でお待ちしています。 ウェブサイトでは今後の企画展や、イベントの情報など発信中!ぜひご覧ください。
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