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2025.04.08
江戸時代から今も引き継がれる職人技――「すみだ江戸切子館」で切子細工の体験を
江戸時代後期に始まった江戸切子の技術を継承し、さまざまな切子細工の展示、販売を担う「すみだ江戸切子館」。店内には美しい江戸切子の器などが並んでいます。さらに、職人さんが制作する様子の見学や、自分で実際に切子細工を施す体験も可能。伝統工芸の江戸切子の魅力をご紹介します。
職人のまち・墨田区にある江戸切子の工房ショップ
江戸時代に始まり、今も大切に技術継承される江戸切子
実際に切子細工の体験に挑戦
器以外の用途にも、切子細工のガラスで華やかさアップ

職人のまち・墨田区にある江戸切子の工房ショップ

錦糸町駅から徒歩7分。蔵前橋通り沿いにある
江戸時代から続く伝統工芸に始まり、現代もものづくりのまちとして知られる東京都・墨田区。「すみだ江戸切子館」は、100年以上続く老舗ガラスメーカーの廣田硝子から2004(平成16)年に分離、独立した江戸切子専門の工房ショップで、JRや半蔵門線が通る錦糸町駅から徒歩7分という便利な場所にあります。

鮮やかな紋様の江戸切子が並ぶ店内

すみだマイスターの川井更造さんをはじめ、江戸切子の職人さんたちによる高度な手作業
店内では、切子作家の作品や日常使いできる器など、さまざまな江戸切子の展示、販売がされています。同時に、江戸切子の継承と次世代の切子職人の育成も行われていて、窓越しに職人さんの制作風景を見学することも可能です。

江戸時代に始まり、今も大切に技術継承される江戸切子

左は二重矢来(やらい)、右は市松の「蓋ちょこ」。各3万800円
江戸切子は、江戸時代後期に、大伝馬町でビードロ問屋を営む加賀屋久兵衛たちが、南蛮渡来のガラス製品に、切子細工を施したのが始まりだそう。 江戸から東京へ時代が変わっても引き継がれ、今も生産されている伝統工芸品です。

朝顔をあしらった涼し気な「しょう油差し」は1点4950円
現在の工程は、まず、ポカンという手法でもとになる色被せガラス生地のグラスを作るところから。そのグラスに削り出す紋様の線をマーカーなどで描いていく「割り出し」という作業を施します。昔は墨を使っていたので、「墨付け」とも呼ばれていました。 次は、ダイヤモンドホイールで行う 「荒削り」「二番掛け」「石掛け」という作業で、緻密な紋様にだんだんと仕上げていきます。 昔は金剛砂と水を使って、鉄製の円盤で削っていたそうです。 最後は、削り出した面につやが出るように繊細な仕上げを。「すみだ江戸切子館」では、薬品を使った研磨加工はせず、回転する桐製の木盤やゴム製の円盤などに磨き粉を付けて、ていねいに手磨きをしています。

紋様や形によって違う表情が楽しめる
矢来紋、市松紋、菊繋ぎ紋など――店内に並ぶ、さまざまな美しい紋様が施された江戸切子を見ていると、この伝統工芸を支えている職人さんの技術の素晴らしさを感じます。

実際に切子細工の体験に挑戦

削る線に合わせてグラスを持つ向きを調整
「すみだ江戸切子館」では、実際に自分で切子細工を施して、オリジナルのグラスを制作する体験ができます。 一連の流れや注意事項を聞いて、練習用のグラスを使って削っていく感覚をつかんでから本番へ。まずは、仕上がりのデザインをイメージして、マーカーで紋様の線をグラスの外側に入れていきます。 グラスを両手で持って、内側から線を確認しながら、ダイヤモンドホイールに当てて削っていきます。手前から奥に少しずつずらしながら削るのですが、ゆっくりとずらすと、その分、太い線に仕上がります。 最初はグラスが割れてしまわないか力加減がわからなくて、線がフラフラしたり細すぎたりしがちなのですが、かなり頑丈なガラスなので、しっかりと力強く押し付けるのが安定したきれいな線を削るコツです。

底に細工をすると、飲む時に紋様が見えておすすめ

試行錯誤して仕上がったグラスには愛着が湧く
削った後、除光液でマーカーの線を消すと、切子細工の状態が確認できるので、線を書いて削って…を、少しずつ段階を踏んで作業するのがおすすめ。 自分の思い描くデザインを目指して、一点もののグラスを仕上げていくのはとても楽しい貴重な体験です。

器以外の用途にも、切子細工のガラスで華やかさアップ

八角籠目紋のシェード。魔除けに使われた紋様
店内を見回すと、入口の扉の一部や、照明のシェードなどにも、江戸切子のガラスが使われていることに気づきます。繊細で美しい切子細工は、器として使われるだけでなく、装飾にも活用され、彩りを添えるのがうなずけますね。

入口の扉のガラスに使われていた七宝紋。円を1/4ずつ重ねていて「円満」を表す
両国の「両国湯屋 江戸遊」のフロントグラスパネル、日本橋の「コレド室町」のエレベーターホール、押上の「東京ソラマチ」のショップサイン行灯など、さまざまな施設や店舗でも取り入れられているそうです。 江戸時代に生まれ、今も引き継がれ、この先もずっと伝えていきたい伝統工芸・江戸切子。「すみだ江戸切子館」で実際に見て、触れて、制作体験してみませんか。
すみだ江戸切子館
スミダエドキリコカン
https://www.edokiriko.net/
※切子体験は10:30~12:00、13:00~14:30、15:00~16:30(予約制、各時間4名まで)、4950円(小学4~6年生は2530円、小学3年生以下は体験不可)
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いちきドーナツ 市来恭子 撮影:依田佳子
Writer
いちきドーナツ 市来恭子

東京在住のフリー編集兼ライター。尾道観光大使・群馬県文化審議会委員。すてきな情報をお届け♪
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